中国貴州省で日本語教師

2007年春~2009年春、青年海外協力隊

一年の仕事の成果、第一位

2008年04月01日 | Weblog

青年海外協力隊員としての1年目の報告書をきまじめに書いている。
ボランティア活動の成果と後半の目標うんぬん。

ふりかえって考えてみると、一番の成果はやっぱり、
コピーおばさんを攻略したこと。

毎回の授業でプリントを使うのだが、印刷室のコピー専門事務職おばさん2人に、たとえば、「こっちは両面コピーでもいいけれど、こっちは解答とタスクシートだから別々にコピーしてほしい、2年生の2クラス分、合計60枚でお願いします」というような内容の意思疎通が困難を極めた。しかも彼女たちは他の大学職員たちと違い、なまりのきつい貴州弁で、ふつうに話していても早口で、濁音が多いせいか語気がきつい感じがする。

最初のころは、たどたどしい中国語標準語しか話せない私が行くと、二人にあからさまに顔をしかめられ、「また量が多いね、めんどうな外人教師だね!ったく!」的な事を吐き捨てるように言われる日々だった。「めんどうな」という単語だけは私も聴き取れた。コピーが曲がっていたり、汚れていたり、仕事ぶりもいいかげんだった。

しかし、ここで私まで対抗して声を荒げて命令したら、彼女たちもさらに気分が悪くなるだけだと思い、何も言わなかった。めんどうな外人教師であることに異論はないし。
威圧的に(と外国人にとっては感じやすい?)言われて耐えることは、我慢してなめられることとは違う。自分の希望は必ず伝える。たとえば、毎回、やってくれた仕事に対してはきっちり笑顔100%でお礼を言う、指示と違うことをされて、違うと指摘しても「いいでしょ!没関係!」など言われた場合も怒らないで、とにかく自分の指示通り出来上がらなかったという困惑と悲しみを相手の視線をとらえて最大限表現する、ということを繰り返した。週2回の攻防。

半年が過ぎたころには、私が行くと、満面の笑みで迎えてくれるようになった。
しかも、コピーが曲がっているようなことはおろか、特に言わなくても「これホチキスで閉じましょうか?」等々のプラスアルファの仕事を申し出て、私が「私も手伝う」と言っても「いいですよ」と固辞し、プロの技で実にてきぱきとこなしてくれる。どこから覚えてきたのか、私のことを日本語で「せんせい」と呼んだりして、時々「のり」「紙の断裁機」「紙詰まり」などの単語を教えてくれる。

そんなわけで、最初は鬼門だった印刷室が、今ではまるでいきつけの小料理屋のように、なじみのママたちに心癒される場所になったのだった。


こうして私は強力なボスキャラを攻略したわけだが、(中国では大学事務員のほうが教授よりも偉い)これは街に出てもまったく同じことかもしれないと最近よく思う。

店などで、「この国は店員がいい加減だ、サービスが悪い、厳しく言わないとだめだ」と先入観を持って接したり大声を上げたりすると、実際にその先入観通りの反応しか返ってこないと思う。

中国に来たら、自分の性格が多少きつくなるかもしれないと思っていたが、1年経過して、予想に反し、どうやら日本にいるときよりも人当たりが優しくなった気がする。
街の知らない人や、店員たちにも、日本にいるときよりも優しくされる割合が多いようにも思う。

日本語には「柔よく剛を制す」といういい言葉があるけれど、これは外国で気分よく生活するこつかもしれない。


そんなことをしみじみ考えるのだけど、まさか報告書に一年間の成果はコピーおばさん攻略法を体得したなんて書けないよなあ…

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