愚ダメ記、真誤付き、思い津記

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黄金色の窓

2020-08-29 | 日記

夕方、散歩の時に、池の対岸の丘の上にある家の窓の一つが眩しいほどの黄金色に輝いていた。大人ならすぐに理由が分かるのだが、地平線寸前の夕陽が反射していたのだ。

 そして時々このような光景を見る度に、小学校の国語の教科書に載っていた話を思い出す。ある男の子が、毎日夕暮れになると遠くの丘の家の窓が金色に光るのを見て、金でできた窓だと思ってしまう。そして、その窓が光っているのを見るたびに、その窓がどんなに奇麗な金で出来ているのかを想像し、一度その窓を間近で見てみたいと憧れるようになる、という話である。その丘は遠くにあってなかなか行けないのだが、男の子は、ある休みの日にそこまで行ってみることを決断する。いくつも丘を越えてやっと辿り着いたその家には、当然、金で出来た窓も黄金色のガラスもなく、すべて普通のガラスの窓だと分かって男の子は落胆するのだが、その後はどうなったのか覚えていない。

 何となく教訓めいた一言でも出て来そうな話だが、その教科書にはそんなことは何も書かれていなかったと思う。ただ、遠くの黄金色に光る窓に心を動かされ、「そこへ行きたい、あるいは近くによってこの目で確かめたい」とひたすら憧れる男の子の気持ちだけが、自分の心に残って懐かしく、それは人間が心に抱くいろいろな想いの中でひときわ大切な宝物のように思える。夕方、外を歩いていて金色に光る窓を見るたびにその教科書の話を思い出し、胸の中からその "憧れの想い" を取り出して、色褪せてないことを確かめ、またそっと磨いて仕舞っておく。


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