最近NISA(個人投資家への税制優遇策)なるものが盛んに宣伝されるようになって来て、テレビ番組や他のマスメディアでも盛んに「個人投資家への挑戦」が勧められているようだ。気が付くと、いつの間にか「日本には莫大な額の個人預金が眠っている」という決まり文句が大手を振って歩いている。
「日本では個人が銀行預金を貯め込んでいるので、その莫大なお金が経済活動への投資に廻らず眠っている」って説明され、一瞬「そうかも知れない」って納得してしまいそうになる。
でもまてよ?、と、学校で習った「銀行の役割」というのを思い出す。確か、銀行は人々からの預金を「貸出し」や「運用」に廻すことで利益を上げているのじゃ無かったか?。無邪気なのか馬鹿なのか、私は昔からてっきりそう思っていた。銀行預金をすれば、それが経済活動への投資に廻るって。
「日本には個人預金という莫大な資金が”塩漬け”になっていて投資に廻っていない」などと説明する方々は、銀行では預金を「ただただ金庫に保管し続けているだけ」と印象付けたいのだろうか。
実際の処、現在の日本の銀行が個人預金を本当に”塩漬け”状態で保管しているだけなのか、それとも「運用・投資」しているのかは知らない。銀行が預金者から集めたお金を第3者に「投資」するか「運用」するかして利益を得、それが預金利息の原資になるという考えは「単なる誤認識」なのか「時代遅れ」なのか。
テレビやラジオ番組でも、そんな疑問を口にする者は誰も出て来ない。まるで社会通念が全く異なる時代に取り残された浦島太郎の気分になる。この疑問の提起も、説明も無く、”塩漬け?”扱いの個人銀行預金を金融市場に取り込むためにあの手この手を繰出す今の社会には、どこか釈然としない気持ちを抱いてしまうのだ。