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ねがうこと、ゆだねること

茂木綾子/写真集『traveling tree』

2014-01-12 | photo
茂木綾子さんの新しい写真集『traveling tree』(赤々舎)
のこと。以前8月刊行が楽しみと書いたけど、10月発売と
なる。表紙からとても凝った素晴らしい写真集。

1997年よりミュンヘンに渡り、2009年より淡路島に移住
するまでのヨーロッパで撮りためたもの。その間に映像作
家のヴェルナー ・ペンツェルさんと結婚し、二人の女の子
が生まれる。



家族の写真もあるし、家の中の写真も。きっとヨーロッパ
のあちこちではなく、家の周辺の写真だと思う。静謐な写
真のなかに動きや火があるんだけど、それらも包み込んで
静かさがおおう。



無意識でいる自分の前で、ずっと当たり前だと思っていた
情景が、ある時全く違ったように見え、とても不思議に感
じ始めてるうちに、そこに大きな謎(不可解さ)が立ち上
がってくる。そんな不可解さを感じて撮った写真です。

一見しただけでは、彼女が感じてシャッターを切った「不
可解さ」は感じられない。



夫・ヴェルナー さんの写真は何枚もあるがいずれも物憂げ
だし、ベッドで寝ている写真もある。鏡に写ったセルフポ
ートレイトが一枚。無表情から何が読み取れるだろう。彼
女が妊婦(お腹に落書きがある)のセルフヌード撮影の写
真もあるが顔がカメラで隠れている。

外国暮らしの孤独な生活の中で、色々なものを見て、感じ、
驚き、考え、寂しさ、悲しさ、そして苦しさも、その先に
一体何があるのかを知りたくて、辛いながらも好奇心で自
分を観察していたような、そのおかげで、苦しい状況も辛
抱強く耐えてこられたのかもしれません。

traveling treeという不可思議なタイトルだけど、treeは
彼女自身のことかもしれない。苦しさの破片は見つけら
れても、「不可解さ」はどとかない。何度も見なおせば、
触れる日がくるのだろうか。彼女固有の無意識の発露な
んだろうか。



この写真集の発売記念の写真展は、淡路島で昨秋開かれ
ている。東京近辺で開かれることを期待して。

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