ちいチャン物語

きまぐれブログ。
絵のない絵本のような、小さい物語です。

ちいチャン物語(52)『建前(上棟式(じょうとうしき))』

2024年02月13日 20時06分46秒 | 日記
「今日は、建前があるよ。」
と、おばあちゃんが言いました。
新しい家を建てる時、柱の骨組みが完成すると、“建前”と言って、その家の主人や長男
が、骨組みのてっぺんから、紅白のモチや和紙にくるんだ小銭をまきます。
ちいチャンの町は小さいので、どこかの家で家を建て始めると、町中の人が“建前”の日
を楽しみにします。
“建前”は、特別に声をかけて招待する、とかというものでもなく、お祭りの時の様に、
自然に集まった人達に、モチや小銭が振る舞われます。
“建前”の日、男衆は骨組みの出来た家のてっぺんに登り、掛け声をかけながら紅白のモ
チをまきます。
賑やかさは、まるでお祭りの様です。
家の下に集まった大人や子供は、キャーキャー、ワーワー言いながら、モチがまかれた方
向へ走り、手でキャッチしたり、落ちたモチを拾ったりします。
次に、和紙にくるまれた小銭がまかれ、家の下に集まった大人や子供は、キャーキャー、
ワーワー言いながら、小銭がまかれた方向へ走ります。
中には、
「こっち!こっち!」
と、男衆に手を振って、催促をするオバちゃんもいます。
ちいチャンは小さくて、ちいチャンが伸ばす手の上には、大きなおとなの手が重なり合い
、まかれるモチも小銭も、ちいチャンはキャッチすることが出来ませんでした。
しかたがないので、落ちたモチと小銭を拾おうとしますが、動作のすばやい男の子達に取
られてしまいます。
おばあちゃんは、おばあちゃんなのに、なぜだか動きが若いです。
エプロンのポケットに、紅白のモチも小銭も入っていました。
“建前”が゛終わると、手に手にモチや小銭を持って、町の人は家に帰ります。
おばあちゃんは、エプロンのポケットに手を入れると、ちいチャンの手に、和紙でくるま
れた小銭をひとつ握らせてくれました。

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