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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

埋土種子調査

2008-09-10 | フィールドから
・当試験地内の埋土種子調査ということで、久しぶりにみんなと一緒に共同作業。4つの林分から土壌を採取し,試験地内の埋土種子相を調べる。試験地内の埋土種子については,一度調べてみたかったのだが,来年の研修のテーマとしてもいけるだろうということで,みんなでやってみることになった。



・各林分から20×20cm×6cmの土壌を6箇所から採取。まっすぐに土壌を掘り取るのは案外難しい。当方がやるよりも、むしろ技術スタッフに任せた方がきれいにできるということが分かり、こちらはGPSの位置測定と写真撮影、植生調査に専念。



・2箇所からは2つの土壌サンプルを採取し、一つはハンドソーティング、もう一つは発芽調査を行う。それにしても、林内で採取していると、量がちょっと少なすぎるかと心配になる。果たして、この中に種子は含まれているのだろうか・・・。



・ヒノキ林分では,想像以上にシラカシ,アオキ,シュロなどの実生が定着している。ヒノキ林というと下層の木本はほとんどない印象なのだが,林分が小さいためだろうか。それにしても,常緑広葉樹の実生を見分けるのは難しい。その後,シラカシモデル林分,スギ人工林からそれぞれ土壌を採取したところで昼食となった。



・2mmのふるいで根やごみなどを取り除く。卒論のころが思い起こされる。2mmでも平べったい種子がやたらと発見される。これだけメジャーな種子だと同定しないわけにはいかないのだが、全く想像もつかない。LTERプロット内の一部ではかなりの種子が既に発見された。思ったよりも埋土種子相は豊かなのかも・・・。今後が楽しみである。

Final manuscript

2008-09-09 | 研究ノート
・午前中は職場に復帰。ドタバタと連絡調整に追われる。午後からの弥生での会議に向かう電車の中で、町田英夫著の「接ぎ木のすべて」を読む。接ぎ木・挿し木のマニュアル本は数あれど、このように基礎から応用まで体系だって書かれている本は貴重。10月の樹木医学研修でも教科書として使えそうである。

・アカエゾマツのデジタルロガーの整理。日平均気温と湿度をとりまとめたものがようやく作成できた。これをさらに月平均でまとめてみると、当然ながら標高が高い方が寒いことが分かる。

・会議終了後、Yさんとアオキ人工授粉論文の最終(?)打合せ。先日より、原稿の最終(?)ファイルが何度かやりとりされている。最終とか、最終2とか、最終finalとか、投稿版とか、投稿間近になると、色んなファイル名が付いていくのはおなじみの光景である。最後まで粘って、いい論文にしたいところだ。

・Springerからのメール。Uくんのウダイカンバ繁殖成功論文がOnLineで見られるようになったらしい。この論文もアクセプトまではなぜか苦労したわけだが、こうして形になるとやっぱり嬉しいものである。この論文は個体密度が繁殖成功に及ぼす影響を遺伝解析と生態調査の両方で評価したもので、今後の引用はしやすい論文になりそうである。

アカエゾ・プロジェクト

2008-09-08 | 研究ノート
・北海道での打合せで、急に盛り上がった科研のアカエゾ・プロジェクト。忘れないうちに、新しい4集団の針葉形態をSHAPEで解析。nefファイルを前のファイルにくっつけて、前山中央を除く9集団で解析をしてみると、対称成分では厚み成分がやはり85%を超える寄与度を持っている。こちらは前山の上と下の湿地を含めても見事に標高のクラインが検出できそう。SLAの方は下湿地が足を引っ張っていて、あまりきれいな関係がない。やはり、SHAPEの形態検出は強力である。

・後は、毎木データの入力と温湿度ロガーのデータ整理。ようやく一つのゴールが見えてきた感じがする。全データが揃うのが楽しみである。アカエゾ用のWEBページにデータをアップして共同研究者であるIくん、Kさんに連絡。Wikiページは便利である。

ニホンカナヘビ

2008-09-06 | その他あれこれ
・東伏見方面の公園へ行く。沼では釣りをしている人たち。浮きが動くのを見ていると、久しぶりにやりたくなった。東伏見ではいかにも美味そうなそば屋とか、焼きたてのナンが食べられるインド料理とか、お洒落なカフェとか、気になる店がいくつもあった。改めてゆっくり行ってみたいところである。



・子どもと虫捕りに行くと、カナヘビの子どもがいたのでうちでしばらく飼うことに。一体全体どうやって飼えばいいのかと思ったら、真面目にカナヘビの飼い方を書いているHPがあった。小さな生きている虫を餌としてあげる必要があるらしいのだが、これは容易ではない。しかし、ずっとカナヘビを観察しているとつぶらな瞳がかわいい。


「ふーん」と「へえ!」

2008-09-04 | フィールドから
・朝から晴天。生産掛に手伝ってもらって,90林班の樹幹幅,樹高の測定。大変な測定だったのだが、若者たちが軽々と動いてくれてサクサク進んだ。毎木プロットを2箇所設定し,こちらは測量から調査までをスタッフにお願いし,我々は大麓山頂へと行く。12時すぎに山頂到着。やはり周囲の山々がきれいに見える。KさんのEOS kissを借りてファインダーをのぞいてみると,思いのほか軽くて実にきれいだ。デジカメ一眼も一台欲しいところである。



・山頂のアカエゾマツは既に来るべき冬の準備をしている。改めてみると、針葉の形態の違いは顕著である。山頂では温湿度ロガーをもう一台設置。今度こそ厳冬期のデータを取りたいのだが,雪に埋もれるかどうかは微妙な高さかも。Oくんが追いかけている”ナキウサギ”を思われる鳴き声を聞いたように思ったが,残念ながら鳥の声だったようだ。登山道には既に真っ赤になったナナカマドの実生も見られて,もうすぐ紅葉シーズンであることを思い起こさせてくれる。



・今回のディスカッションで,急に実施することになった標高別試験地のアカエゾマツの調査。まずは4区に行って,20個体を選ぶ。ここは日当たりのよい個体を選ぶには苦労しない。ピンクテープとNoテープをつけて,後は10月にサンプリングを行う予定。次いで3区,ここは林道からのアクセスが楽勝ですいすいと終了。ところが2区,1区になると周囲の個体が死亡していないので,被圧されていない個体を20個体選ぶのが大変。1区はついに17個体であきらめることに。

・こうして標高別試験地がさっそく活かされるというのは嬉しい話だ。Kさんから指摘されるまで気がつかなかったのだが,標高に対するクラインを軸にすると,この試験地のデータを入れると急にアトラクティブになることが想定できる。論文を読んだとき,「ふーん」という感想で終わるか,「へえー!」という感動があるかの違いに相当するのだろうと思うけれど、この違いは大きい。

UVデー

2008-09-03 | フィールドから
・天気が悪く、3時までは何とか持つか?・・・という天気予報。山頂の毎木調査はあきらめて、一日かけてUV測定をすることになる。低標高のUVとして27林班,25林班で測定し,事業区界を通って13林班湿地へ。ここでUVを測定した後,水位計ロガーのデータ回収も行うと,無事にデータが取れた。50cmくらいの水位の上下動が見られて興味深い。雪解け時期が一番水位が高いと想定していたが,8月中旬から再び水位が高くなっているようである。



・再び90林班のUV測定へ。途中で雨が降り出してきて,今日の調査はついに終わったか!?と思ったが,走っているうちに奇跡的に雨は止んだ。なんとか90林班でもUVを取れたので,ぐるっと回って25と27林班に戻って再測定。気がつくと2日間の走行距離が200kmを超えている。久しぶりの激走である(現在我が家には車がないので・・・)。



・前山の下湿地に水位計ロガーのデータ回収に行く。ここで,水位計ロガーからデータを回収しようとしたところ,反応がない。おかしいと思ってデータミニなるものを外すと,”コミュニケーションエラー”という標示。焦って”設定ボタン”を押したのが実は運の付きで、強制再スタートボタンを押していたことに気がついたのは,前山上湿地で同じ過ちを繰り返した後である。

・5秒間隔でロギングさせて,データ回収を手順どおりにやってみると今度は大丈夫。強制再スタートとデータ回収のボタンが同じ色で並んであるというところが,なんとも”あなどれない”機器である。そんなこんなで水位計ロガーについてはがっくしの結果だったが、UVが思った以上にデータが取れたのは運がよかった。

・夜はIくんのイヌブナ論文について二人から重要なコメントを頂いたり,KさんのIUFROプレゼンの練習を見せていただいて逆にコメントしたり,アカエゾプロジェクトの方向性についてさらに議論したり・・・と盛りだくさん。強化合宿みたいで楽しい!

富良野初日

2008-09-02 | フィールドから
・朝一番の飛行機で旭川へ。機内でIくんのイヌブナ実生定着論文の原稿を読む。時間が経過すると、色々と見えてくるものがあるもので・・・。いくつか検討事項を確認しているうちに旭川着。気温は27度程度だが湿度が低いせいか、体感気温は涼しい(といいつつ、富良野人にとっては暑いらしい)。



・富良野駅でKさんにピックアップしてもらって、山部へ。Iくんと合流して、久しぶりに揃ったチーム”アカエゾ”。車を乗り換えて、さっそく90林班へ。雨が降る前に土壌サンプルを採取しようという魂胆である。



・90林班はかなり砂質の強い土壌。10cmほど掘ってから土壌サンプルを採取。作業開始時点では、久しぶりの作業は段取りが悪いが、徐々にスムーズにいくようになる。前山2箇所からも土壌を採取、続いて、25林班へ。さくさく掘って、完了。温湿度ロガーも無事にデータ回収できた。




・25林班ではフキを何者かが食い荒らした跡が・・・。久しぶりに、「ほー、ほー」と叫んでみたり。食後に3人でディスカッション。やればやるほど、混迷の度合いが強まる本プロジェクトをどうするかについて、だいぶ整理されてきた。やっぱりディスカッションは大事だ。というか、こういうディスカッションにいかに飢えていたのか、よく分かった。

交雑論文、投稿

2008-09-01 | 研究ノート
・明日からの富良野行きを前に、各種打ち合わせ、準備など。午前中で一区切りしたところで、トドマツ交雑論文の投稿にかかる。Reviewerを4名も指定しないといけない上に、推薦理由が必要!、ということで思いのほか時間がかかる。毎度のことだが、雑誌によって微妙に投稿プロセスが違うのがややこしい。2時過ぎ、どうにかこうにか投稿完了。自分としてはかなりポジティブな印象に変わったと信じているのだが・・・。今度こそ、いい知らせが届いてほしいものである。

・午後から業者との打ち合わせ。最近、何だか妙にバタバタしている。アオキ第二弾の原稿チェック。引用文献として新たに加えられたJohnson and Galloway(2008)Plant Ecolをダウンロードしてみる。これは園芸植物ベニバナサワギキョウの植栽が野生集団に及ぼす影響を、花粉による遺伝子交流を通じて評価するという論文。

・試験設計が複雑で意外と理解しにくい論文である。面白いのは、自生個体の花粉と非自生個体の花粉の混合花粉を割合を75%、50%、25%という3段階に分けて設定し、遺伝マーカーを用いて、自生花粉と非自生花粉のどちらが強いか(選択受精の有無)を調べているところだ。

・1000km以上離れた2つの集団の非自生花粉はほぼ混合割合程度の結実率を示し、自生花粉と非自生花粉のパワーに差がないという結果だった(これはこれで驚きだが・・・)。一方、32km離れた集団の花粉は混合割合よりもむしろ高い結実率を示した(雑種強勢?)。しかし、園芸品種の花粉はいずれの混合割合でもほとんど結実させることができず、自生集団の花粉に負けるという結果となった。

・全体としては、非自生花粉と自生花粉の間で受精パワーに大きな違いはなく、非自生遺伝子が自生集団に交雑を通じて入っていく可能性は十分にあるが、個体によって影響は異なるだろうというのが結論。参考にはなったが、引用の仕方が難しそうだ。