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西東京市・北海道富良野の森林を舞台にした遺伝,育種,生態などに関する研究ノートの一部を紹介します

地下の世界

2008-07-25 | フィールドから
・栃本宿舎は造りも新しく,実に快適。Oさん手作りという"栃餅汁”も香ばしくて美味であった。山里に抱かれていて縁側に座っていると、何ともいえず、落ち着いてくる。秩父版”三丁目の夕焼け”といったところか・・・。アブが多いのには閉口したが,たまにはこんな夜があってもよい。10時までここで待機ということもあって,のんびりと仕事。宿にこもって原稿を書く作家にでもなった気分。



・論文チェック2本を立て続けに行う。Hさんから頂いたシャクナゲ論文にコメントを書いて送信。他人の論文は不思議と見えるのだが,自分の論文になると,どうしてこう“見えなく”なるのだろうか・・・。ヒノキ論文の改訂作業で、ちょうど血縁度の話や二親性近交弱勢の議論もしていたので,タイムリーな論文チェックとなり,こちらも勉強になった。全体の文章の体裁,解析などがしっかりされていると,論文チェックも実に楽である。

・もう一つ,Uくんのウダイカンバ繁殖成功論文の改訂。審査者の指摘に答える形にで、同種個体密度だけでなく,全種個体密度が林分の繁殖成功度に及ぼす影響も調べてみようということになったわけだが,全種個体密度の影響についてはクリアーな関係が見つからないことを定量的に示すことができそうだ。

・10時過ぎにIくんとSさんと合流。と,ここで昼食を頼み忘れたことに気がつく。まだまだ秩父初心者の当方は、栃本から山に入る手前で,弁当が購入できるだろうとタカをくくっていたわけだが、それはとんでもない間違いであったことが発覚。慌てて宿舎に戻り,Oさんお手製の栃本の保存食“つとっこ”を分けていただく。昼食時にIくんとともに頂いたのだが、飽きのこない、いい味であった。



・久しぶりにフィールドに入る。相変わらずの急傾斜だが,林床にササがないので気持ちがいい。今日は蚊も少なく,天気も良好だったので,実に爽快である。Iくんの実生調査に付き合いつつ,森林浴。それにしても,なかなかイヌブナの実生が目に入ってこない。やはりフィールドボケしているな。むしろ,ヤチダモにそっくりな実生がやたらと出現している。カエデとは異なるようだが,尋常ではない密度である。後でSさんに聞くと,アオハダではないかという。やはりこうした実生を探す作業は楽しい!



・一通り,イヌブナ実生にタグを付け替える作業が終わり,移植実験の掘り取りを行う前の予備実験。林内(暗条件)と林外(明条件)からそれぞれ6個体ずつ実生を掘り取り、地上部、地下部の表面積と乾燥重量を測定しようという試み。林内では案外と根が小さく、こんなにも貧弱なものかという感じ。それに対して,林外では根がしっかりと張り、白い菌根も見られる。地上部以上に地下部の印象が違うことに驚かされた。