GREAT LOVE KINGDOM

山を楽しむために生きる。

ドグラ・マグラ

2006年05月10日 23時47分19秒 | 介護のお仕事

PAUL GAUGUIN(1897年)
『我々は何処から来たのか。我々は何者なのか。我々は何処へ行くのか。』


この究極の3つの質問の答えがゴーギャンの絵画の中にあると言われている。


介護の仕事を始めた当初、ボクが配属されたフロアには実に興味深い婆さんがいた。

昔の遊郭の様なところで女性の斡旋を仕事としていたらしい。
結婚はせず、商売絡みの付き合いが彼女の人間関係の大凡を占めていた。
(和菓子屋、洗濯屋、酒屋など。)
昔から不摂生をして来たのだろう。重い糖尿病を患っていた。
その為、ほぼ失明状態だった。

日中はガラス瓶の底のような眼鏡をかけ、一日中テレビを聴いている。
そして、人を物で釣る。悲しいがそうやって人生を送って来られたのでしょう。

そして夜。兎に角、幻覚が凄まじい。

夜中に何とも例えようの無い悲鳴が聞こえる。
『○○さん!大丈夫ですか!?』と訪室すると・・・

『助けて!顔が真っ黒に焼け焦げた男が3人来ているの!』
『隣の納家に連れて行かれる!殺される!』

毎晩、これの繰り返しである。

最初は怖くて仕方なかった。理解しようにも理解出来なかった。
そんな時に読んだのがこの本。



夢野久作著『ドグラ・マグラ』(昭和10年)


今まで曇っていた視界が清々しく澄んで行く感じ。

『我々は何処から来たのか。我々は何者なのか。我々は何処へ行くのか。』

この答えが分かってしまった。

人間てとても尊く、深く、強く、切ない・・・
そんな生き物なんだなぁと痛感。痛いほど感動しました。


『お前ら!呪い殺してやる!』

そんな言葉を残して婆さんは転居して行きました。
せめて終わりは穏やかであって欲しいと願わずにいられません。
コメント (3)
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