立読ブログ

立読師による一人語りのブログ 今後ともよろしう

読~いいね!いいね!いいーーね!~

2012-09-29 08:28:28 | 
スクロール版 オン・ザ・ロード ジャック・ケルアック(著) 青山南(訳)河出書房新社

最初にこの本のことを読みたいと思ったきっかけは
訳者の青山南氏のエッセイにこんな一節があったからだったと思う
まことに曖昧な記憶で書いているので
事実と違うかもしれないが たしか

登場人物の口癖に「Yes! Yes! Yes!」というのが多用されるんだけど、これをどういう言葉にしていいのか困った。
「はい!はい!はい!」じゃないし、そのまま「イエス!イエス!イエス!」というのもなんか感じが違う。
そう思っていたら、クレイジーケンバンドの横山剣さんの「いいね!いいね!いーーーね!」を知った。それをきっかけにクレイジーケンバンドのCDもたくさん聞くようになった……

まぁそんな話で
Yes! Yes! Yes! てのは いいね!いいね!いいね!っていう
そういう時の感じに似ているのかと
膝を打ったのを覚えている
しかし 私はすぐにはオン・ザ・ロードに行かず
先にクレイジーケンバンドに行って
最初のベストアルバムをiTunesに落としたりしていた
それでも青山南氏のエッセイにはこのケルアックや
オン・ザ・ロードの話が頻繁にでて
新装版で発売されることやこのスクロール版のことも
そこから知ってはいた
一部引用で「ひゃっほぅーーーーー」って訳にも
こんな言葉で訳してもアリなのか!って驚いてぶっとんで
気になっていた
ついに書店で新装版(スクロール版じゃない)の青い表紙を見たときには
興奮して そこで初めて読みたい!って思った
でもまぁけっこういいお値段もする本だから
いつかお金とココロにヨユーのあるときに…と
書店で見かけては よしよしあるな と安心していた本でもあった
しーかーしーである
図書館でいつものように本の雑誌を読んでいたら

なんだ 図書館にあればそれで読めればええじゃないか

という悪魔の囁きが聞こえて
あっさりそれに転んだ
もちろんあの青い表紙のテカテカの新装版であればまったく問題ない
が 唯一あったのは スクロール版 だった
これは読み比べするための資料としての本であって
つまりこれでケルアックのオン・ザ・ロードを最初に読むのは
なんか邪道というかハードルが高いというか
そんな気がしたが
読めりゃあええんじゃ の声に負けてこれを読んだ
ま そのことは後悔してはいないけど
(でも正直に言うと「解説」を真面目に読んでいたときは少し後悔した)
やっぱり違和感がある
まー…なんだ 例えばすっごく評判の映画の評判だけは聞いていたからって
実は原作とは内容が変わっている映画なのに
評判だからって 先に 原作買って読んじゃった気分に似てる
だから 刊行版のオン・ザ・ロードを正調に
それしか読んでいない人には
登場人物の名前とか「違うしそんな奴しらない」って
文句言われちゃいそうで少し怖い 少し


さて 前置きが長くなったけど感想はもっと短い(笑)
この本はまっとうに落ち着きたいのに落ち着けない業を持つ
哀しきクレイジーホースの話だ
この本に登場する人物を罵詈雑言で形容するのは簡単だ
イカれてる 不道徳 バカやってる若い時はいいけど真面目な彼氏としては絶対付き合いたくない クレイジーな みっともない……
人間の最低な業を体現したニール・キャサディ

しかし なぜかこの本に酔い惹かれてしまうのは
以前自分の周りにいた いや ひょっとして
今の自分の中にも ニール・キャサディ的なるものを
いいね!いいね!いいね!と夢中に熱を上げるハッピーな自分を
自覚しているからなんじゃないか?
独特の文体に馴染むほどに
人間の業を否定せずに進むニールがリアルに
自分の過去から今の随所に重なって見えてくる
そうだ 本人にとって人生は最高だが同時に傍からみればくだらなくみっともない

クリエイティブの必要条件がクレイジーであることは
すこしだけ賛成しているけど
真面目にやっていてはクリエイティブになれないとは思わない
でも真面目であることがクリエイティブの必要十分条件じゃない
別にアメリカで車を177km/hでぶっとばす必要もないけど
その速度感を気持ちよく思える感性はイケてる
マニュアル的に言えば
ジャックケルアックでいーい気持ちが解放されるのは 正解 だ

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。