立読ブログ

立読師による一人語りのブログ 今後ともよろしう

読了報告 3冊

2011-06-19 21:57:08 | 
読了記録

ポグリ [コミック]  中川いさみ 角川書店

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か [ペーパーバック]  エリヤフ・ゴールドラッド(著), 三木本亮(翻訳)

博士の愛した数式[新潮文庫] 小川洋子 新潮社

前回の 木をみて森をみない は
めずらしく一つの本をじっくり語れたけど
今回は三冊同時にいつもの感じで
もうちょっと思考をまとめあげる体力があると
一冊一話で書けるような気がするんだけどねぇ
ま なんちゃって作家気取りだからその辺が甘い ということで(笑)


さて ポグリ
作者曰く「石鹸ぐらいの硬さの絵を描いてみたい」という
半ページ漫画
ナンセンスでシュールな話もあるが 
一方で地方新聞の四コマみたいなオチのものもあったりして
いまいちメジャーになりきれないくすぶり感がある
そこを まぁ良し とみるか ダメじゃん と切り捨てるかで
好き嫌いが分かれるような気もする
親戚の家へ行って気軽に
「あ?それ?いいよ 持ってっても」
とか言われちゃう本ってこういうのだよな と いや褒めてんですよ


お次は The Goal! 読了して
「ッゴーォォォオオオオッル!!!!!」と達成感を味わったのは
私だけじゃないはずだ 多分
前半2/3は傾いた工場の建て直しサクセスストーリーだけど
残りは工場も立て直せて昇進したら…その後どうしたらいいんだ?
という自問自答編
この本は主人公の思考の工程を理解の形で一緒に楽しめる本だが
このラスト近辺は少し抽象的でついていけない感がないでもない
が…結局ファイナルアンサーの台詞を読んでしまうと
それでなにかすっきり悟ったような気になれるので
後味は悪くない
この本はずいぶん昔に大流行した本らしいので
いまさらこの本に出てくるキーワードを賢しらに披露してやろうたくらむと
却って失笑されるかもしれないなー(苦笑)
しかしこの本の話を知っているといないとでは
生産ラインの配置や稼動スケジュールに大して思うところはずいぶん違う
あまりにルーチンな仕事や単純作業にばかり回されても
「おれいらない人?」と腐るより
「あ おれポジション的に非ボトルネック要員か?」
と思えば 次に回される仕事の先も読めるし
いちいち社長を無能呼ばわりしてふてくされるストレスを回避できる
そういう意味でおいらにはとても有意義な一冊であった


んで 会社で読んでた本
博士の愛した数式…
上品な 上品な物語ですなぁ(´-`)

ピュアなものを愛しむ話でした

ピュアなものをわかりやすく具現化したのが
記憶が80分で途切れてしまう老数学者なわけだけど
主人公の愛しむ対象は具現的な「博士」以上に
数字 の美しさにある
この美への焦点のあわせ方が小川洋子さん独特のセンスじゃないかなーと
文庫解説を小川さんに取材された数学者藤原正彦さんが書いておられる
取材された側という得意な立ち位置を上手く生かした
小川さんの人となりをうかがわせるエピソードや
もちろん物語世界の解説もまたきちっとしていて
まだ味読の方がおられたら是非にも文庫版で解説もお楽しみください

それにしても…80分間の記憶が81分目にはすっかり消去されて
記憶に障害を負った1975年までの記憶の自分になってしまう
というのはにわかに信じがたいですねぇ
なんか…最初の10分間くらいまったく記憶にないというのなら
私でもしばしば心当たりがないわけでもないんですが
そうなると 最後の79分目辺りからの1分くらい
記憶に残っていてもいいんじゃないか? とか思っちゃうんですけどね
記憶がだいたい5分のスパンでずれていく立読師です
つまり5分前に考えたことが5分後にはすっこり忘れているという…
いや 5分間は覚えていられるんですけどね
6分目には最初の一分のことを忘れているという…
ま 冗談ですが 

読了報告~青山南~

2011-06-12 06:52:44 | 
読了~

木をみて森をみない(ちくま文庫) 青山南 筑摩書房

ああなんてこった・・・
これを読んでいるとき
「ああ!つまりはそういうことか!」と
なにかの考察を思いついたんだけど
その なにか が何だったのか
脳の中ですっかり溶けて思い出せない
やっぱり 後で後で は記憶神経破壊の呪文ですな
めんどくさくても思いついた日のうちに書いておかないと と
痛恨の一撃orz

まぁ とりあえず読了しました
すげえ面白かったんですが
それが…どういうポイントでどう言えばいいのか…
あかん…溶けてる…orz


……あ! おーもいだしたあああ!!

機能的な文章とそうでない文章 それだ!

普段仕事なんかしていると
自分が書かなきゃいけない文章はもっぱら
「機能的な文章」が求められる

要点が簡潔にまとめられて
読み手が理解しやすい

そういう文章で モノによってはフォーマットまで決まっている
例えば 受験やレポートで求められるのは
そういう「機能的な文章」だ
山田ズーニー先生の説を言えば

「自分の根本思想を掘り起こし
(必ずそれはシンプルな一言だ というのが前提)
後はそれを平用でいて心にすとんと落ちる言葉で説明する」

そこまでいかなくても 
英語で言えば 構文的な訳
理系論文で言えば 論文フォーマット(アブスト→概要→実験手順→結果→考察→結論)
会社書類で言えば 書式

これらは まるで骨や工場の機械のように
正確さや機能が重視される
そこに見える美しさは「機能美」
理解という名の天使のハシゴが一条差込み
「解る」面白さに感動すら覚える

機能美 とは対極の美が 遊び
ああいや ゲームとかディズニーランドとかカラオケとか飲み会とか 
そういう遊びではない
簡単に言えば 機能とはまったく無縁なのにその余計な形があるからこそに愛おしい
そんな感じ?の 美

んで そういう美の文章が何か?っつうと
小説なんではないかなー と
そういうことに思い至った

平用な言葉 機能・構文にそった言葉を選んでいない
簡潔に要約する作業は読者に丸投げだ
しかし だからこそ著者の放つ放射能が解ったりするのだね
(すいません開高健を真似しました)
いわゆる 行間が読める楽しみがある

青山南のエッセイは そういう行間から匂い立つ
のほほんとした人柄ならぬ文柄(?)が楽しい
翻訳家らしい言葉のセンスに脱帽した
小さな説を書いて食べている人たちの構築した世界
遊び だからこそ見える 美

行間を読む ということの意味が
初めて解った
面白い小説とは つまるところ
その 立ち上る空気感 が小説の雰囲気を決定して
奇抜な設定とかストーリーの流れとかは枝葉末節なんだな と
例えば 情景が浮かぶ… とか ディティールがしっかりした…というのも
脳にイメージが 匂いが 流れ込みやすかった面白さなんではないかなーと

もちろん そういう楽しみ方の小説ではない小説もごまんとあるはずだ
しかし「あの小説すっげぇ面白かったー」と言えても
デハドコガドウオモシロカッタノカ?を
未読の人に言葉で説明するのが異様に難しかったりするのは
面白かったポイントが 
あのーそのー…の 雰囲気 にあったからかもしれない