立読ブログ

立読師による一人語りのブログ 今後ともよろしう

読了記録

2012-08-29 21:31:22 | 
とりあえず読了

人間の建設(新潮文庫) 小林秀雄 岡潔 新潮社

岡潔と小林秀雄の対談
けして聞き上手とは言えない二人による会話は
「僕はこう思っている」
という確固たる思想の投げ合いに読めました
偉い先生のお言葉だからなにかを学び取ろうというより
私はこれを ふぅんそんなもんかねぇ と
聞き流すスタイルで読み通しました
こういう本は なにかを得よう得ようと求めるより
言葉の端々に時々ハッとしながら
自分の内にある答えを本の中にさがす本だと思います
多分 読み返すほどに気楽に読めるようになり
そして読むたびに違う箇所で はっ とするんだろうなぁ

山田洋次監督の映画で不器用で純情な田舎文学青年とかが
必ずもっていそうな感じはしますね
私が監督だったら そんな学生の部屋のシーンには
本棚にこれは入れる(笑)

読了記録~トルコから腰痛まで探検もの二発(笑)~

2012-08-15 15:52:02 | 
トルコのもう一つの顔 (中公新書)  小島剛一 中央公論社

腰痛探検家(集英社文庫) 高野秀行 集英社


夏休み皆様如何お過ごしでしょうか?
立読師は なるべくお金をかけないニッポンの夏 と題して
休暇初日に一泊旦那のところへ行ったきり
あとは家にこもって本読んでます
まぁ 出費するときはするんですけどね(苦笑)

さて そんななか家で読了したのが トルコの~
1970年代のトルコという国は
観光化がぼちぼち加速し始めた頃で
特に目玉のない辺鄙な田舎じゃあ 
それはそれは人情味豊かで旅人に優しい
バックパッカーにとって天国のような国だったらしい
著者はそんなトルコにぞっこん惚れて
博士論文をトルコの辺境方言として以降17年近く
トルコのあらゆる地域を歩き回って調査(貧乏旅行)してまわる
しかし調査のうちに見えてくるトルコのもうひとつの顔は…
という内容
なにしろトルコという国は 公には
「トルコにはトルコ人しか住んでいないから、言葉もトルコ語しかない」
という建前があり それを政府が教育強制布教しているから
「昔々、あるところに、オスマン・トルコ帝国という、広い大きな国がありました。不思議なことに、公用語がありませんでした・・・・・」
という前提を知っている著者は
トルコ政府が存在を否定する少数民族や言語を調べて回った危険人物
だんだん剣呑な思いをしながら研究調査を進めていく
この感じが実にスリリングで
「ど、どうなっちゃうんだろう?」と
ドキドキしながらページをめくることになり
むつかしくお堅い学術書というより
ちょっとした東西スパイ小説のようで楽しい
一方で 誤解や偏見なく事実が伝えられる自由って?
自分もまた誤解なく他人にトルコを伝えられるだろうか?
と著者は思考の穴に入っていき
文化・宗教・教育…それが「違う」というだけで
なんでこんなに人が傷つけ合えるんだろう・・・
読者に正論や善と悪の道徳観 主義主張の押し付け合いから
もう一段上のモラル
みんなが幸せになる方法を探そうとする 思考レベルまで
押し上げてくれるような気がする



さて オチをつけずに次に行くぞ(笑)
腰痛探検家…
人の行かないところへ出かけていき 人のやらないことをやる を信条とする
自称 辺境作家 高野秀行さんの腰痛記
腰痛を発症し治そうと四苦八苦する過程が
まるで辺境・魔境の探検記のような比喩で語られる
書いてる本人はどうかしちゃっているが
読む方はおもしろい記録だ
この本で目ウロコな点は

病は気から 

まぁ 古からの一言で言えばそうなんだけど
この言葉を知っていても 意外と
自分は違うと これは気のせいなんかじゃないと
思いがちなんだな ってことで
それは傍から見ている人にしかわからないんだよとか
そういうわかったようなことを言いたいんではなくて
病になった自分の病に意識が集中してしまうことで
かえって症状が長引いたりひどくなったりするもんだな
そう思った
本書で著者の腰痛は治らないが
かといってそれで今も何にも手がつけられないほど
弱ってはいない
砂漠のマラソン大会にでたり
あいかわらず辺境作家っぷりを発揮して活動している
病は気から というのは実は
病にとらわれる気持ちを切り離しなさい という意味なのかもしれない

読了記録~銃・・・本棚~

2012-08-05 10:10:38 | 
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎
文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎
(草思社文庫)ジャレッド・ダイヤモンド、倉骨彰 草思社

作家の本棚 (アスペクト文庫) ヒヨコ舎(編集) アスペクト


サクサクっと二タイトルの感想

まずは銃・~(上下)
ひさしぶりのボンドステーキ本
この手のカッタイ学術考察本を読んでいて気がついたのだが
面白いことは面白いんだけど
読んだ端からローラーで潰すように理解していかないと
何書いてあんだかわかんなくなっちゃうなーってこと
つまり エンターテイメントなら
読んだ端の詳細を忘れてもわからなくても
読み進めるうちに わかる ような構成になっている
例えば推理小説で「犯人は○○だ。なぜなら~」なんてぇ
論文みたいな文章はないでしょう?
読み進めていけばいつかわかる
これが学術考察本の場合だと
読んだその場で理解記憶していかないと
読むリズムが狂うんですよね サクサクいかない
論文なんかはまぁそういう文章が文法作法だよなぁ と
今さらになって思い知ったわけです
んで 銃・~ですが この点に関しては 
ワタクシこれを密かに
「ラジオのDJは番組途中で何度も番組名や曲名・アーティスト名をおり挟む」現象
と名付けました(笑)
つまり読者が忘れちゃった頃に繰り返し論点の肝を挟み込むことで
読後かろうじて本書の主張する論点を要約して覚えておいてもらおう という
おかげでいく度となく睡魔に襲われ
睡眠導入本化していた本書を読み終えても
こうして感想が書けるわけです(笑)
じゃ その要点をここに書こうか というと
それをやっちゃうのはどうかなー
実際おもしろい本だし読みながらなんども膝を打つことしばしばで
ネタバレして読んだ気になられてしまうのは悔し…もとい
もったいない(笑)
みんなにもウトウト呆然フムフムほほぅという読書体験を
オススメしたいわけです

日本史の歴史解釈などには正直首をかしげるところもありましたが
まぁ外人さんがお勉強した歴史解釈なんて
この国で生まれて皮膚感覚で歴史文化を身に付けてきた人からすれば
すこしズレていると感じるのは当たり前だのクラッカー
そのへんは目をつぶって
人間の社会形成に必要な条件や野生動物と家畜 野草と野菜の境界線
文化の伝播要因 なんてところの考察は実に腑に落ちておもしろい本でした


さて お次はかる~~い本
作家の本棚
本好きなら作家の人たちの本棚というのは
気になるもので
こちらはスルスル読み進められました
本との付き合い方ひとつとっても
個人個人まったく違うもので
格好つけて「見せるため」に手元に置く本をチョイスする人もいれば
気がついたらこんなになっちゃったんだよねぇ(苦笑)
とか
捨てられないんですよ…(苦笑) とか
なるべくこうしようとは思っています と法則を持っている人とかとかとか
自分とはまた違ったまたは共感できる本との付き合い方は
読んでいて面白いですねぇ
個人的にぶっ飛んでるなぁとおもったのは みうらじゅん
「買った時点で読まなくても勝ち いつか何かの拍子にその本に興味を一瞬でも持った俺エライ!って思うから」
本代にどれだけ生活費を充てているのか気が遠くなる変人(褒めてます)ぶりでした

自分の好きなものとどう付き合っていくのか
節目節目に考えてみるのはいいことだと思います

大人か子供か

2012-08-04 10:44:44 | 
マンガで分かる心療内科6 ゆうきゆう(原作), ソウ(作画)YOUNGKINGCMICS 少年画報社

より
今回取り上げたい話は「心理学的に大人と子供の差は何か?」
という話
漫画では ハインツのジレンマ から
年齢とは関係なくモラルがどれだけ成熟しているかを
判断する指標を紹介しています
これが他の内面的成長過程の指標にも応用できそうで面白い

ハインツのジレンマ というのは
ハインツという男には病気の妻がいて、病気は重くこのままだと死んでしまう。唯一の治療法である薬は街の薬局にしかない。しかし薬は1000万もして、ハインツは必死にお金をかき集めたけどどうしても足りない。少し安くしてくれないか?もしくは後払いにしてもらえないか?と頼むが店主は首を横に降るばかり。妻は体が弱り残された時間がない。ハインツは薬局に忍び込みその薬を盗んでしまう。
さて、ここであなたはハインツの行動をどう思うか?
理由と共に答えよう。

という問題
解説すると「妻の命を助けたい…しかし薬を買えない…というじれんまから盗みを行なったハインツをどう考えるか?
そこであなたの「モラルのレベル」がわかるというテスト
ここでいうモラルとは=道徳心のことで
年齢とは関係なくモラルが子供っぽい人もいれば成熟した人もいる
という考えが前提です
ざっくり分けると3つのモラルに分けられます

もっとも子供っぽいモラルこそがレベル1
「個人の損得しか考えない」
すなわち
「盗むなんてバカだなぁ。警察に捕まったら困るじゃん」とか
「まぁ、バレなきゃいいんじゃないの?」
というように個人の損得だけで答えを出した人は、最も幼いモラルにあたります
自分が気持ちよければいいよね! とか バレなきゃいいよね!! みたいな(苦笑)
次に一つ上、青年レベルのモラルこそが
「法律や社会を重視する」という考え方
「気持ちはわかるけど、法的に盗みはダメだよ。社会秩序がなくなるでしょ」とか
「あんな事情なのにお金をまけない薬屋がサイテー! そんな店からなら、盗んでもみんなが許してくれるよ」
というように、法律などのルールや社会全体などによって判断するというモラル。
ただし、これは「正論」で間違った考えではないが、多数決のように一部の意見を封じ込める危険性もあり、また、「正論」どうしでは永遠に決着が付きません。
つまり、「周囲や社会の意見」なんてものは切り出し方によって何とでもなる。「正論」というのは実は曖昧で内容が薄いこともある。
ではよりベストなモラルとは?
レベル3「自分の信念」
個人の損得や社会のルール…これらをすべて理解した上で
「自分自身の信念や良心」によって何かを判断できる。
「確かに盗みは悪いことだ。しかし僕が同じ立場で、愛する人間を見殺しにしたら、一生後悔するだろう。だから僕は、今回の盗みには賛成する。」とか
「愛する気持ちはすごく分かる。でも、盗みを行なったことが妻にバレてしまったら、ハインツが自分のために犯罪者になったことで、彼女が何より苦しんでしまうと思う。だから私は、反対する。」
というように「いろいろな考えを知った上で、自分なりの信念や良心、そして人生観を確立し、それによって善悪を判断する」というモラル。
しかし、信念や両親に従えばなにをしてもいいか?といえば問題もあり得ます。
んで、この三つよりさらに優れたモラルとして「ケアの理論」があります。
それは「みんながみんな幸せになる方法を探ること」です
ハインツのジレンマにたいして「いい」「わるい」という思考を超えて
「妻の病気が治ったあとで、必死に働いてお金を稼いで、薬の代金以上のお金を返しに行くのは…?」とか
「とりあえず盗んだものは返し、薬を使わせてもらうかわりに、薬をたくさん売ってくると取引を持ちかけるというのは…?」
というように、ハインツと妻はもちろん薬屋もふくめて
つまり利害が衝突する関係間において
みんなが幸せになれる方法を探ろうとする…こういう思考こそが、さきほどの「信念」よりずっと優れたモラルである。ということです。

ああ長い…とはいえここ抜粋しないと話が展開できないんで すいません

さて これを読んで立読師 ピィン! と思いつきました
これ 会社における人間関係のモラルの成熟度でもつくれるんじゃね?

まずレベル1 「直感的・感覚的な好き嫌いで付き合う」
なんとなく馬が合う とか 生理的にダメ とか
格好つけてはいますが 結局は本能的な嗜好で人間関係を構築する
子供のお友達レベルだったらいいですが会社ではそうもいきませんよね

次のレベルが 個人の損得で付き合いを決める
自分の得になるからいやいやでも付き合う 
というのが最たるものです
高校生くらいのアルバイト期といったらいいでしょうか

次のレベルが「社会的・文化的背景から他人を評価し、付き合いを決める」
いいことを言う人だから とか えらい人だから とか 学歴や資格をもっているから…とか
周りの評価や道徳観に沿っているから正解という判断で
お付き合いを決めます
成人レベルのお付き合いですが
しかしこれは突き詰めると「理想の友人」を他人に強いることにもなりますし
ハインツ~でもありましたが「正論」は時に薄っぺらいものです

さて 次が組織としてもう少し成熟したモラル
「個人の特性を受け入れ どうすれば皆が円滑に関係を築けるかを考える」
組織の中堅どこな思考ですね
だれでもいいことをしながらミスもするのがあたりまえなんですから
そこをどう引き出したりフォローするか考えるわけです

そしてさらに上のレベル 壮年期 とでもいいましょうか
「個人の特性をどうやって集団で気持ちよく引き出して生かすことで会社が気持ちよく機能するか考える」
もうこれ社長です(笑)
ほぼ日の糸井さんとかが考えていそうだ…


…なんてぇことを思いつきまして
そうやって会社の人間を観察してみると
いい年をしてモラルが子供っぽい人もいれば
バカ社長とか影で言っていても やっぱり社長は考えるとこは考えてるな
とか見直したりもするわけです

こうした 成熟度 で俯瞰的に組織を見直せた点でいい話を読んだなぁ と
万年パートですが内面だけはえらく(苦笑)なりたいものです
これ 会社組織の…だけでなく 農家における…とか
応用のしようはいくらでもありそうなので
それぞれの職種に合わせて考えてみるのも面白そうです