立読ブログ

立読師による一人語りのブログ 今後ともよろしう

読了記録~文庫二冊~

2013-07-04 20:47:45 | 
探偵はバーにいる (ハヤカワ文庫JA) 東直己 早川書房

失われた町(集英社文庫) 三崎亜記 集英社


探偵は~ はご存知映画化されたものの原作
読むきっかけもミーハーに映画の原作だったから
個人的には少々読みにくかったと思っている
ハードボイルドを読み慣れていないことと
時代背景の風俗に疎かったからね
素人探偵の「オレ」がススキノの街を舞台に
酒と女と男 そして殺人事件に包まれている
面白かったのは北海道弁を知らなくても
なんとなくリズムがわかって読めてしまうところ
うまいなぁ と思ったよ
言葉ってリズムとメロディーで覚えるものだけど
文字だけで頭の中にそれを刻まれたときは
おおぅ! ってね驚いた


さて もう一冊
失われた町
舞台はいつもの三崎ワールド
この小説は 絶望に立ち向かう人たちを描いた群像劇だ
「町」の意思によって何万という町民が「消滅」してしまう
という現象がお話の軸なわけだが
読むと「消滅」とはとりもなおさず
唐突 理不尽にやってくる「死」のメタファーだと気づく
失われる者 残される者 託される想い
死とはなんだろう?
生物学的 物理的 宗教的 哲学的 宗派に属さぬ個人の意思 思想 それぞれに定義は違う
その上で残された者はどう行動すべきだろう?
あなたならどうする?
登場人物の誰かに読み手は「自分」を映し見ずにはいられない
共感であっても憧憬であっても

この本を 自分の意志で歩みだそうとしている人に
私は読んで欲しいと思った
歩もうと思い始めた人もすでに歩みを進めている人にも
読みながら「オレはどう動く?」と考えて欲しいからだ

読後自分への問いと答えが沁みいる本だった