もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

トップダウンの功罪ー3

2021年02月01日 | 社会・政治問題

 トップダウン型指揮官に避けて通れないのは、後世に「梟雄」と呼ばれる危険性が有ることである。

 「梟雄」の意味を訪ねると、広辞苑「残忍でたけだけしい人」、デジタル大辞泉「残忍で強く荒々しい人。悪者などの首領にいう」とされているが、別に「英雄としての力強さと、悪党としての狡猾さを兼ね備えた人」とも解説されている。何故、このような人物を形容するのに現在では知者のシンボルともされる「梟」の字が与えられているかについても諸説あり、「梟は親鳥を食い殺すという伝説」、「昼間は眠って夜の闇に紛れて不意打ち的に捕食する」等があるとされているが、羽音を立てない翼と夜間視力という現在のステルス戦闘機のような捕食動作から当てられたのではないだろうか。
 「梟雄」と呼ばれるのは誰かとネットを検索すると、北条早雲、斎藤道三、織田信長、宇喜多直家、松永久秀等の名前が見える。いずれも権謀術策で主家を滅ぼしたり主殺しの経歴を持つが、主家を乗っ取った上杉謙信や父を追放した武田信玄の名は見当たらず、歴史上最大級の主殺し犯である明智光秀については近年では名君との世評を得ているので、梟雄リスト自体は好事家の選択、殆どの戦国武将に見られる悪行判断の匙加減若しくは人気投票ランキングみたいなものかと思う。
 この中で松永久秀が来年のNHK大河ドラマの主人公(松本潤氏)であることを知った。松永久秀については、主家(三好)の有力後継者(複数)毒殺、室町幕府13代将軍足利義輝襲撃(追い落とし)、東大寺大仏殿焼き討の諸悪行に加え、度重なる謀反の帰結として信長が所望した名茶器「平蜘蛛」を道連れに爆死という戦国武将には希な最期を遂げた人物として知っていたが、大河ドラマの主人公として万民(多くの国民)からの共感を得られる事績・側面もあるのだろう。

 トップダウン考の最後に「梟雄」が出て来たかと云えば、集団で悪行をする場合には、善行集団を指揮する以上に指揮官のカリスマ性とリーダーシップが求められると考えたからである。いわば梟雄はトップダウンの極致・権化であり、後世には悪行とされる事績についても犯行当時の価値観で言えばさして指弾されるものでは無く、それ以上に多くの市民の共感すら得ていたのかも知れない。
 「勝てば官軍」又は「歴史は勝者の記録」という側面から考えると、同じ行為であっても勝者は名指揮官と称えられ、敗者は梟雄の汚名を着せられるのかも知れない。
 堪え性がない自分は大河ドラマを含む一切のドラマは見ないので松本潤氏演じる松永久秀を観ることも無いだろうが、機会が有ったら彼の指揮監督術(海軍流には統率)について勉強してみたいものである。


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