もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

応召に思う

2018年11月27日 | 社会・政治問題

 厚労省が医師の診療義務の見直しを行うことが報じられた。

 記事中、医師の”応召”義務との表現があった。応召と聞くと徴兵制度があった戦前、召集令状を受け取った徴兵検査合格者が兵隊として入営する場合に使用した程度の認識であったが、医師法19条『診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。』との規定が医師の応召義務とされて今も使用・膾炙されていることを初めて知った。他の法律でも、「正当な理由が無い限り〇〇しなければならない」との規定を多く見かけるために、立法界・法曹界では死語でないのだろう。戦前の徴兵逃れ(応召義務違反)に対しては重い罰則(1年以内の重禁錮)に加えて釈放後には即日召集+最前線送りという処置が執られたらしいが、諸説あり確定不能。戦後になって、兵役不適格とされる丙種合格を勝ち取った良心的兵役拒否者を名乗る者が各地に出現し脚光を浴びたらしいが、国のお役にも立てない軟弱者との世評の中で生きた半生は誇れるものではなかっただろう。閑話休題。医師法の改正に当たっては、医師個人に課せられている現行の応召義務を廃して同様の義務を医師の所属機関に求めるという方向であるらしい。改正の根底には、病院等が医師の応召義務を盾に医師に対して過重労働を強いる現実があるらしいが、医師に対する応召義務をなくすことは、病院が受け入れた患者に対して医師が診療拒否するような場面は起こらないのだろうか。出血熱やエイズのような感染症によるパンデミック(爆発的な大流行)が起こった場合、病院は応召義務から受け入れるが治療に当たるべき所属医師が診療・治療を拒否するというような事態は想定すべきであり、医師の応召義務を残しつつ同義務を所属機関にも拡大する方が適当ではないだろうかと考えるものである。医師と言えば病院に勤務しているという意識が働くが、過疎地にあっては開業医が地域の医療を担っていることが多く、医師の応召義務を撤廃することは過疎地域の医療態勢を破壊する結果をも招きかねないと思う。さらには、現在でも医師の応召義務には罰則がないことから医師の倫理観の低下が囁かれているが、この現状をも更に悪化させることに繋がり兼ねないとも思う。

 地方創生が一向に進まないのは、デザイナーである官僚の多くが都市圏出身者または都市圏の大学で学んだ人間が多いために、地方の状況に暗いことが原因の一つであるとする主張を読んだことがある。地方の医療態勢にも配慮しつつ、更には『医は仁術』との倫理観をも持続させ得る法改正を目指して欲しいと願うものである。


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