もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

死刑囚の要求を学ぶ

2022年12月04日 | 社会・政治問題

 大阪拘置所に収容されている死刑囚3人が、「絞首による死刑執行は、残虐な刑罰を禁じる国際法や憲法に違反しており、絞首刑の執行差し止めと計3300万円の賠償を求める」訴えを大阪地裁に起こしたことが報じられた。提訴したのは、いずれも死刑確定から10年以上が経過し、うち2人は刑事裁判のやり直しを求める再審請求中であるとされる。なお、原告弁護人は「死刑制度を問うものではなく、死刑の執行方法を問うもの」としている。

 死刑囚からの慰謝料請求は、ネット上の記事を拾い読みするだけでも、
〇14年以上にわたりカメラ付きの部屋で監視されたのはプライバシー権の侵害だとして、1900万円の損害賠償を
〇死刑執行を当日に告知するのは違法だとして、事前告知と2200万円の慰謝料を求めて
〇再審請求のため弁護士との打ち合わせを制限されたとして1000万円の損害賠償を
 等があり、判決でも一部の過失を認めて国に賠償を命じた例もある。
 刑事訴訟法では「判決確定の日から6か月以内」に執行しなければならないとされているが、実際には執行までの平均期間は約7年4か月間となっている。この長期収監・刑執行の当日告知による精神的・肉体的な苦痛に対しては「死刑囚は多少の精神的・肉体的苦痛は甘受すべきで憲法に違反しない」と最高裁も判断している。
 現在日本には100名超の死刑囚が収監されているとされるので、100通りの要求があるのは当然であるが、死刑と執行方法が憲法に違反した非人道的行為とする主張には釈然としない。非人道的に他人の命を奪った死刑囚が自分の死には人道的な手段と処遇を求めることは果たしてどうであろうか。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルの統計では、2018年時点で正式に死刑を廃止した国は106カ国、事実上廃止した国を含めると142カ国で死刑が行われていないとされ、国連加盟193カ国の7割に及んでいるとされている。しかしながら、それらの国でも死刑に代わる終身刑があって、アメリカのような「仮釈放なしの終身刑」は「時間を掛けた死刑」と呼ばれているのが実情である。死刑囚の処遇と刑執行方法に対して、裁判所はどう判断するのだろうか。

 最後に下種の勘繰りを。日本の弁護士数は既に国内所要数を超えており、弁護士活動を続けるために不可欠の弁護士会々費に苦慮するケースも有るとされるので、これまでは訴訟の対象とは思われなかった事案を弁護士の勧誘で訴訟に持ち込むことが増えることが懸念されている。アメリカを訴訟社会に育てたのは、余剰弁護士の食わんがための要因も大きいとされる。果たして今回の裏事情や如何に。


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