もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

恩赦に思う

2019年05月08日 | 与党

 今上陛下即位に際して恩赦が計画されていることが報じられた。

 某テレビ番組のコメンテーターが、「直近(1993年)の天皇陛下ご結婚の時に行われた恩赦が、救済対象1277件の4分の3近くが選挙違反者の公民権回復」だったことを踏まえて、「参院選を視野に入れた選挙対策」と断じるとともに「司法判断を行政府が変更することは疑問」としていたので、本日は「恩赦」について勉強した。恩赦は憲法73条の「内閣は、大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定する」を根拠とする恩赦法によって行われる。恩赦の種類は憲法に定める大赦、特赦、減刑、刑の執行免除、復権であり、実施の方法としては、「政令で要件を定めて一律に実施する政令恩赦」と「政令恩赦から漏れた人に対して内閣が基準を定めて個別に救済する特別基準恩赦」に区分されている。日本において恩赦は奈良時代以降から行われているとされ、国家的な慶弔に際して天皇を含む権力者が仁慈を示したり、生類憐みの令廃止に伴う同令違反者の赦免に代表されるように前権力者の悪政を実質的に正すためにも行われている。諸外国でも制度として恩赦を規定する国や特例的に恩赦を実施する国が多数存在するが、司法が下した判決を行政が覆すことは3権分立の原則に反しているのみならず、恩赦の対象選定が政治的になることは避けられないために、慎重に運用しているのが実情であるらしい。恩赦の代表的な事例を見ると、韓国では全斗煥元大統領(死刑→減刑→特赦)、大統領前の金大中氏(死刑→特赦)等々があり、中国では文化大革命時の被害者に対する復権(名誉回復)が行われ、アメリカでは大東亜戦争時に敵性外国人として強制収容所に収監させられた日系人の名誉回復等が行われている。韓国の積弊清算の道具として遡及的に使用されることには問題があるが、インドネシアのスカルノ元大統領やフィリピンのマルコス元大統領のように、国家的な功労者で国民からの支持も厚い人物に対して国外追放等で済ますことも恩赦の範疇と捉えれば、恩赦は国民のガス抜きのために必要な制度ではなかろうかと考えるものである。戦後日本の例では、公民権停止の解除、減刑や刑の執行免除によって直接的な利益を受ける人もいるが、恩赦を受ける者の大半が実利を受けることはないものの、皇室の慈悲を肌身に感じることができるということから恩赦の意味は大きいと思うものである。

 かく云う自分も昭和天皇崩御に伴う恩赦によって、19歳の若気の所産として受けた傷害罪(罰金刑)の前科を清算された者である。罰金と罰金刑に重複して科せられた行政処分による昇任・昇給遅れによって生涯賃金では恐らく数百万円の後れを取ったと思うが、再就職先に提出する履歴書に天下晴れて「賞罰なし」と書けた時の気持ちは格別であった。司法権と行政権の確執判断は識者に譲るとして、市井底辺の意見として恩赦の存続を願うものである。

 


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