もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

2023年度予讃編成の基本方針に思う

2022年12月03日 | 防衛

 経済再生を最優先課題とし、防衛力の抜本的強化や物価高対応などに注力するとした2023年度予算編成の基本方針が閣議決定された。

 これに伴って、8月末に提出された防衛省の概算要求5兆6千億円がどの程度予算案に盛り込まれるのかが注目されるとともに、今回の予算が2023年度からの5年間に必要と積算された総額48兆円の防衛費の行方にも影響すると思っている。
 次年度予算案はさて置いて、5年間48兆円とされる防衛費では研究開発費が増額されることと、公費による防衛産業育成が含まれているのが特色とされる。そのいずれもが従来の「武器は完成品を購入する」という予算措置では不十分若しくは認められなかったもので、大きな前進と思う。
 武器の開発については、長期の研究と多額の経費が必要で、関連企業にとっては「海のものとも山のものとも分からぬ研究開発」に投資することとなり、失敗すれば丸損、運良く装備品として制式採用されてもそれまでの研究開発費を製品(武器)に上乗せすることは許されず、更には防衛省の調達数は少ないうえに海外輸出も認められなかったので、近年には防衛関連企業の撤退が相次いでいた。自前で宇宙ステーションを建設した中国、東欧諸国に10月までで170億㌦(約2兆4千億円)の戦闘機や戦車を輸出した韓国に比べ、三菱のMRJさえ飛ばせなかった日本を見れば、軍需産業の育成と研究開発は不即不離の関係にあり、公費や施策の後押しが不可欠に思える。

 5年間48兆円とされる防衛費には、防衛省以外の所管事業で直接には防衛に寄与しない事業も含まれるという不透明な部分もあるとされる。国の総合力が国防であるという前提に立てば、アイドル育成すらも国防の一翼と強弁することもできるが、48兆円にはそれに類するものがタダ乗り的に紛れ込んでいるらしい。願わくば、在外公館の情報収集力強化のための予算が「酔わせて情報を採る為の高級ワイン購入」に充てられないことを祈るばかりである。
 縦割り行政機構が日本の弱点と云われるが、GoToトラベル事業に首をかしげるような使途があったことを思い出せば、従来の概念・理念と異なって前例の無い予算には各省庁が人脈を駆使してクロスドメイン的に群がるという特色も兼ね備えているらしい。
 これらの現状を見ると、もはや一部の政治家・高級官僚には、国の将来のために考え・働き・公費を支弁するという使命感は薄く、金銭・利得・利権の臭いには機敏に反応するという麻痺が起きつつあるようにも案じられる。


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2 コメント

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的確なご指摘 (onecat01)
2022-12-05 22:38:46
 管理人殿

 国防の大切さを知らない人間が、防衛費増額に悪ノリすることを許してはなりません。

 防衛産業育成についても、本気で考える時だと思います。熱物に懲りて膾を吹く愚行を、いつまで国民は許すのでしょうか。

 
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遅くなりました (管理人)
2022-12-06 10:01:04
onecat01様
コメントを有難うございます。
昨日、総理が防衛・財務大臣に対して、43兆円(48ー5兆円)の使途と財源確保の策定を指示したことが報じられ、待望久しい反撃能力の整備が緒に就いたと喜んでいます。
あとは、仰る通りの「悪ノリ排除」が排除されて、血税が正しく使用されることを見守りたいと思っています。
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