もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

森田哲哉1等海佐の懲戒免職について

2020年03月11日 | 自衛隊

 森田哲哉1佐が懲戒免職されたことが報じられた。

 森田1佐の罪状は妻名義で営んでいた風俗店が兼業と認定されたことと、艦艇の行動情報を漏洩したこととされているが、いずれも軍人としてあるまじき所業である。森田1佐はイージス艦「こんごう」練習艦「かしま」等5隻の艦長を務めたとされているが、イージス艦の艦長としては高度の戦略・戦術が、練習艦の艦長としては洗練された挙措が要求されるので、これまでは文武両道を兼ね備えた指揮官に相応しい人物として評価・栄進を重ねたものと推測する。武人に求められる資質で最も重要であるのは国家に対する忠誠心であろうが、次いで守秘と破廉恥行為を自戒できる理性であると考える。各国の偵察衛星が飛び交う現代にあって艦艇の出入港情報は大したことはないと思われるかも知れないが、上級幹部は少なくとも向こう3か月程度の自艦・関連部隊のおおまかな行動(運用)予定は熟知しており、イージス艦の艦長であれば対北ミサイル監視のローテ-ションも把握している。もしそれらが北に渡った場合には監視・対処の抜け穴を与え利用される危険性が有る。公表されているのは艦艇の入出港のみと報じられているが、イージス艦の能力や戦術が漏らされていないとは断言できないのではないだろうか。一方破廉恥行為についてであるが、安倍譲二氏の「織の中の懲りない面々」では、受刑者の中でも破廉恥罪科は最下等の評価を受けるとされているが、艦艇と云う閉鎖空間でも同じであり人間失格の烙印を押されるものである。森田1佐は懲戒免職という行政処分を受けたが、効果としては退職金を棒に振ることと公務員への再就職の道が閉ざされる程度しか期待できない。刑法犯として収監されることはないだろうし、これまでの副業を本業とするならば生活に困ることもない。危惧されるのは、彼の知識が敵対勢力に利用される危険性である。軍刑法と軍事法廷があれば、彼の知識・情報が時代遅れとなって敵対勢力の利用価値がなくなるまでの期間、少なく見積もっても10年間くらいは外部と接触できない軍刑務所に収監(禁固)できるであろうが、寛大な日本では野放しにされるのだろう。

 河野太郎防衛大臣は綱紀粛正を指示したとされているが、教訓とすべきは上級幹部への登用に関する人事評価の見直しであると考える。帝国海軍にはハンモック№(兵学校の卒業成績序列)重視という慣例があったために、隊務遂行途次に示された企画力・判断力・決断力が昇任に反映されず、結果として戦時に弱い将官や高級幹部が存在したとされている。森田1佐の状況を観ると帝国海軍の残滓が現在の海上自衛隊にも受け継がれているように感じられる。高級幹部への選抜に当たっては、過去の人事評価の再点検に加えて警務隊による身辺調査を行う必要があるのではないだろうか。そうすれば森田1佐の1佐昇任は無かったかもしれないし、少なくとも高度な秘密にアクセスできる資格(職務)を与えることは防止できたのではないだろうか。


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2 コメント

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国が国防を軽んじています (初めまして)
2020-08-16 14:38:33
昔、自衛隊の高級幹部(上級幹部ではない)が仮想敵国の諜略にかかりスパイ活動をして摘発されました。
この退官幹部は、退官後に電気店を経営していたと耳にしましたが国は自衛隊幹部は退官後に幾ら金を積まれても靡かない程度の待遇をすべきであろうと考えています。私も娘が海上、息子が陸上におりますが仕事の話は親が聞いても一切話をしませんが当然のことと思います。
ご丁寧に (三郎)
2020-08-16 18:38:41
御子息はご立派です。退職後の守秘に関して言えば、金銭ではないと思います。自分ごときのランクでも知り得た知識を金銭に変えよとするならば幾許かになると思いますが、漏洩が現役の活動と国益を損なうという使命感・義務感から沈黙しています。要は、如何に守秘の意識を持つ・持たせるかにかかっています。

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