もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

安倍総理と憲法改正

2020年08月30日 | 憲法

 安倍総理辞任に伴って、各国首脳や識者のコメントが報じられている。

 そのコメントを読むと、安倍総理の退陣理由は健康不安であるにもかかわらず、追悼文かと見間違うほどの賛辞に満ちているものが多い。特に印象的であるのは「日本を普通の大国に近付けた」というフレーズである。その理由は、「自由で開かれたインド・太平洋」という戦略を世界に発信して、日本の立位置を明確にしたことであるとされている。この戦略構想はトランプ大統領のアジア政策の基本となるとともに、ASEAN、オーストラリア、EU加盟国でも広く受け入れられている。歴代総理の中で国際的共通理念にまで発展し得た原則を主張した例は無く、安倍ドクトリンと呼ぶべき戦略構想が各国の日本に対する信頼感を高めたと分析されている。安倍政権以前の外交は、2国間条約が主であったために、世界2位(後に3位)の経済大国である日本が、どこに向かうのか・何をしようとしたいのかが理解されていなかったように思う。安倍ドクトリンによって漸く、日本の外交・安全保障の原則が理解されたために、集団的自衛権の容認・空母改装・武器輸出等の政策にも中韓以外は安心して容認することになったと観ている。また、「日本を普通の大国に近付けた」と受け取られているもう一つの理由は、憲法改正の議論が高まったことが挙げられている。西側諸国からは、保有や使用を憲法に規定しない国が世界のTOP10入りする軍事力を保有している現状を、私兵若しくは政府(国民)のポリティカルコントロールが機能しない無法者国家に近いものと観られていた。軍隊(自衛隊)を国家権力の執行機関と規定することは近代国家の必須事項であり、それ故に相互に礼砲を交歓しジュネーブ条約で保護するのである。残念ながら、外国の識者が「大国になった」とせずに「近付いた」としか認識しないのは、想像以上に憲法(改憲)論議が進展しないことに起因している。憲法審査会は時折開かれるものの時間はわずか10分足らずで議題は審査会人事のみ。国民の70%が憲法論議の深化を望んでいるにも拘らず、改正原案を提示できない与党、議論すら拒否する野党、残念ながら改憲論議が深化するためには政治とは何かを考えて行動する議員が多数を占めるまで待たなければならないようであるが、議員・政治家の多くが政党交付金の分捕り、新聞記事の読み合わせ、シュレッターの検分こそが政治家の本分と考えているらしい現状では、まだまだ時間がかかりそうに思う。

 辞任表明から1日経過して、あれほど喧しかった拉致と北方領土に進展が見られなかったのは安倍総理の怠慢とする意見は、幾分収まったように感じられる。拉致問題は、アメリカでさえ一人の米国人解放の対価として2億ドルの治療費を払ったとされることから見て、日本も世界中からの非難・絶縁を覚悟して北朝鮮が主張する数百兆円の戦後補償を行えば、ある程度進展するだろう。戦争せずに領土を回復できたのは、歴史上でも沖縄、香港、マカオくらいであることから、対ロ戦に勝てば一挙に解決するだろう。しかしながら、戦後補償や国難をかけて対ロ戦争を行うことは不可能であり、誰が総理になっても相手の軟化をひたすら待つことしか選択肢は無いように思うので、安倍政権の瑕疵とは言えないと思うものである。


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