もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

河井克行被告とルドルフ・ヘス

2021年06月19日 | 社会・政治問題

 元法相の河井克行被告に対する地裁判決が出された。

 判決は懲役3年、追徴金130万円であったが、被告側は即日抗告したと報じられている。
 河井被告の選挙違反(買収容疑)については、資金の流れまでは解明されなかったものの広範囲かつ徹底的な買収であることは明らかとされたと思っている。振り返れば、昭和40年代頃までは立候補者、有権者の双方ともに票を売買することにさほどの罪悪感を持たなかったために買収は半ば常態化し、国政選挙はもとより地方議員の選挙に至るまで買収の選挙違反は引きも切らない状態であったように思う。その後公職選挙法の改正や、有権者の意識が高まったこともあって買収事案は激減したが、河井被告と広島選挙区民にあってはあれほどの買収が、さしたる隠蔽行為もなく半ば公然と行われることを見逃す、受け入れる土壌が残されていたのであろうか。
 河井被告が受けた懲役刑と禁固刑について考えてみた。自分は、刑事犯は懲役刑に、国事犯や思想犯は禁固刑にと大雑把に思い込んでいたが、懲役刑と禁固刑は単に罪状・罪科の軽重だけによるものであるらしい。そう聞けば、罰金刑を超えるがそれほど重大ではない交通違反者には禁固刑が適用され、武力による政権奪取を標榜する共産党や党員は破防法の監視範囲とはされているものの、国事犯や思想犯として裁かれることもない。第一、戦前の治安維持法に類する法律を含め、反逆罪が無い現在の日本では、過去に国事犯・思想犯として裁かれた北一輝、大川周明、大杉栄と同等の主張をしても訴追されることは無いであろうことから、思想犯、国事犯は今後とも存在し得ないように思える。
 懲役と禁固の違いは、拘留中に作業(役務)を強制されるか否かのみであり、法曹関係者の解説でも、刑罰の重い順に死刑、懲役、禁固、罰金・・とされているが、作業を強制されない禁固受刑者も暇を持て余して作業に志願するようである。

 国事犯に対する禁固刑では、東京裁判やニュルンベルク裁判での受刑者の例が思い起こされる。特に、ニュルンベルク裁判で終身禁固の判決を受け1947年7月に他の受刑者と共にシュパンダウ刑務所に収監されたルドルフ・ヘスは、他の受刑者が1966年9月までに順次釈放された後も、各界からの相次ぐ釈放請願をソ連が拒否し続けたために、1987年8月に93歳となったヘスが自殺するまでただ一人収監され続けた。そのために、同刑務所はヘス一人のために維持され続け米英仏ソの4か国は交代で看守を派出していた。
 ヘスの禁固が40年にも及んだことを考えると、列国の国事犯に対する重大視と怨念が改めて浮き彫りにされるように思える。


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