澤田瞳子さん、直木賞受賞おめでとうございます。
澤田さんの歴史・時代小説を愛読してきたファンにとって、この上ない喜びです。
受賞作の「星落ちて、なお」(文藝春秋)は、まだ単行本のため、文庫本愛好者にとって
手に取るのは先になるだろうけど、2,3年先の文庫本化を今から楽しみにして待ちます。
「星落ちんて、なお」は、明治時代を舞台に画家・河鍋暁斎を父に持った娘・暁翠の数奇
な人生を描いた、と受賞作紹介の記事にありますが、「若冲」に次ぐ画家の世界を描いて
いるのですね。
選考委員の林真理子さんは「熟練の技が光った文章力も素晴らしい」と澤田さんの作品を
評しています。
昨日アマゾンから澤田さんの「泣くな、道真-大宰府の詩(うた)」(集英社文庫)を取
り寄せたましたが、カバーの短評では「日本史上最も有名な左遷された男の活躍をユーモ
アのなかに描く歴史小説」とあり、ページを開くのが楽しみです。
澤田さんは「京都鷹ケ峰御薬園日録シリーズ」から「腐れ梅」のようなピカレスク(悪漢)
歴史小説まで、幅広く執筆活動を続けている40代後半の期待の作家。
受賞を機にこれからも奈良・平安の舞台中心に、名作をたくさん紡ぎ出してくれるでしょう。
何度もこの日記に書いているように、直木賞は本屋大賞とともに一番面白い作品がそろっ
ているように思い、楽しく読んできました。
これも何回か書いたけど、愛読している宇江佐真理さんはその直木賞に6度もノミネート
されながら念願果たせず、乳癌で亡くなっています。66歳でした。
未だに「直木賞を取らせてあげたたかったなあ」と、悔やんでいるファンが多い。
宇佐江さんはこのエッセーを2015年夏に出版した後、同年11月に死去しました。
エッセーあとがきに、書き遺ています。
近所に不安神経症を患う息子の同級生の母親がいる。あなたは元気そうで羨ま
しいと私に言った。
「何言ってるの、私は乳癌なのよ」
そう応えると、彼女はコウヘイ(私の息子の名前)のお母さんがいなくなるのは
いやだ、と泣いてハグしてくれた。
そうだね、悲しむ人がいるだろうから、私はまだ死にません。死にません。
(宇江佐真理エッセー「見上げた空の色」あとがき、文春文庫文庫)
<見上げた夏の空、15日写す>