大好きな食べ物だけど、娘が嫌いなので一緒に食べるわけにはいかず、我慢しているも
のが二つある。
トウモロコシとスジ肉煮込み料理だ。
トウモロコシは、ガキの頃、田舎の畑にたくさん植えていて、収穫期にはもぎ立てのコ
ーンを炉端や台所で毎日焼いてもらって食べたものだ。
甘いお菓子などめったに口に入らない昔のド田舎、畑で獲れるトウモロコシは何よりの
ごちそう。
ほくほく焼きたてのトウモロコシを、ハフハフとかぶりつく。
もぎ立ての実を焼くと甘い独特の香りがして、トウモロコシの汁がにじみ出る・・・
歯ぐきに黄色いトウモロコシの食べかすが挟まってもなんのその。
今でもあの時を思い出すと、思わず唾を飲み込む、美味かったなあ。
そしてこれは少々品のない遊びだけど、トウモロコシの髭をズボンの前ボタンの間から
出して「チン毛だぞ~」とふざけ合って、ずっと先のオトナの気分を味わったものだ。
(下卑た思い出、おゆるしを!)
話が横道にそれたが・・・
でも、我が家ではまずトウモロコシを食べない。
何しろ娘は「人間の食べるものやない」というほどトウモロコシ嫌いで、ポテトサ
ラダなどにコーンが入っているものなら、箸で一粒残さず取り出して捨てるほどだ
から。
勿論コーンスープやソフトクリームの容器のコーンも、絶対に飲まない,食べない。
私は、たまたま北海道旅行に行ったときは、これ幸いと焼きトウモロコシを買って食
べ、帰って来て「デッカイドウのトウモロコシは旨かったド~」と嫌味を言ってやる。
大好きなスジ肉も食べられないから、困ったものだ。
スジこん(スジ肉とこんにゃくの煮物)が主なメニューで大好きなのだけど、娘と一
緒の夕食では絶対に食卓に上がらない。
たまたま娘が仕事で外食してくるときは、前もって分かっている場合は、いそいそと
「スジこん」を煮込んで一人で味わう。
ちょっと上等の黒毛和牛のスジ肉を買い込み、ちぎりこんにゃく、ゆで卵、絹ごし豆
腐を鍋にぶち込んでコトコト煮て・・・美味しく味わうのだ。
こんな夕餉の風景を密かに「鬼のいぬ間のスジこんこん」という。
<夏の風景>