ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「禁断の魔術 ガリレオ8」

2012年10月27日 | 書籍関連

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第1章「透視す(みとおす)」

トリックは、単純な程騙さ易い科学の世界でも同じだ。

 

第2章「曲球る(まがる)」

貴方が言う抵抗は、立派な努力に見えます。努力する事に無駄は無い。

 

第3章「念波る(おくる)」

運命なんて物は信じない。サンタクロース以上に。

 

第4章「猛射つ(うつ)」

私は君に、そんな事をさせたくて科学を教えたんじゃない。

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東野圭吾氏の「禁断の魔術 ガリレオ8」は「ガリレオ・シリーズ」の第8弾に当たり冒頭で紹介した4つの短編小説から構成されている。今夏刊行された第7弾「虚像の道化師 ガリレオ7」で東野氏は「此の作品を書き終えた時点で、今後ガリレオの短編を書く事は無いだろう。」と思っていたが、「小説の神様という奴の気紛れをたっぷり思い知らされた。」との事で、「禁断の魔術 ガリレオ8」を書下ろしたと言う。「今後ガリレオの短編を書く事は無いだろう。」という思いを覆す程、渾身の力を振り絞って書き下ろした作品なのだろうし、そういった意味で「ガリレオ・シリーズ」の短編集は、少なくとも暫く刊行されないのではないかという気がする。

 

何度も書いている事だが、自分が「東野圭吾」という作家をデビュー時から応援しているのは、理系作家で在る彼の作品には、文系人間で在る自分を魅了して離さない「理系テースト」が漂っているから。特に「ガリレオ・シリーズ」は、其の傾向が強いので好き。

 

唯、好きなシリーズでは在るものの、近年の同シリーズには物足りなさを感じていたのも事実。不可思議な謎の裏に在る“科学トリック”を、天才物理学者の“ガリレオ”こと湯川学(ゆかわ・まなぶ)が解き明かすのだけれど、其の科学トリックが徐々に“小粒化”している様に感じているから。

 

第1章から第3章は、ハッキリ言ってピンと来なかった。科学トリックは相変わらず小粒だし、ストーリーも凡庸なので。しかし最後の第4章は、嘗ての同シリーズの“輝き”を取り戻した感が。短編小説で在り乍ら長編小説に劣らない程、個々のキャラクターが深く描かれている。

 

又、長い時間を掛け復讐に全てを犠牲にした或る人物の気持ちを思うと、堪らない気持ちになった。其れだけに“救いが感じられなかった結末”には、「もっと別の結末も在ったのではないかなあ?」という不満が。

 

「冷静沈着」という言葉を具現化した様な人物の湯川だが、第4章では意外な“顔”を見せているのが興味深い。「大事な人間を、何としても救いたい!」という思いが彼をそうさせたのだろうし、結果として「本当に救えたのだろうか?」という複雑な思いが湧いたからこそ、最後の最後に彼は“旅立つ”事にしたのだと思う。

 

第4章だけならば評価は星4つとしたいが、総合評価となると星3.5個妥当か。


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4 コメント

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第4章 (悠々遊)
2012-10-27 08:29:44
giants-55さんの第4章の解説を読んで、映画「容疑者Xの献身」を連想してしまいましたが、当然別物ですよね?

ガリレオシリーズは昔第1冊目を読んだ記憶があり、その後テレビドラマ化されて見ていました。今回もちょっと興味を惹かれましたね。
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>悠々遊様 (giants-55)
2012-10-27 14:24:27
書き込み有難う御座いました。今回は、此方にレスを付けさせて貰います。

「容疑者Xの献身」と今回の第4章は全く別物ですが、でも悠々遊様が「同じ物?」と思われたのも凄く判ります。と言うのも、「作品から漂って来る雰囲気が、『容疑者Xの献身』と凄く似ている。」と自分も感じたからです。

「容疑者Xの献身」は直木賞を受賞したし、世間の評判も非常に高い作品でした。東野ファンの自分としては「漸と東野作品が認められたか。」と嬉しい思いが在る一方で、此の作品で認められたという事には複雑な思いが在りました。「幾ら愛する者の為とはいえ、相手が自分に思いを寄せているかも全く判らない状態、否、思いを寄せている可能性が著しく低い状態で、其処迄自分を”犠牲”に出来るものだろうか?此れが本当に純愛と言えるのだろうか?」(http://blog.goo.ne.jp/giants-55/e/2537950a01db041f5d0b4fa1c7d33993)という思いが強かったのも、此の作品を其処迄高く評価出来なかった所以。

今回の第4章ではそういった“迷い”も感じられず、「容疑者Xの献身」よりはすっとストーリーに入り込めた次第。
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第4章は良かったですね。 (馬球管理人)
2012-10-31 20:02:12
こんばんは。
私も、恐らくこれが最後のガリレオになるのではと思いました。トリック解明の小粒化もそうなのですが、やはりシリーズ物にありがちな、「マンネリ感」がありますね。

ただ第4章は良かったと思います。悠々遊さんの書かれておられるように「容疑者Xの献身」を彷彿させました。
私は、物語の後半で涙が止まらなくなりました。これも「容疑者」以来の事でした。

短編ではありましたが、人物像をよく書けていたと思います。
海外に行ったというのも、最終を意味しているように感じました。
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>馬球管理人様 (giants-55)
2012-11-01 00:28:55
書き込み有難う御座いました。今回は、此方にレスを付けさせて貰います。

第4章と「容疑者Xの献身」をオーバーラップさせた方は、結構居られるでしょうね。第三者からすれば「どうして其処迄、“他人”の為に“我が身”を捨てられるのか?」という思いも当然出るでしょう。でも、そういった理不尽さが在るからこそ、読んでいる人がグッと来るとも言えますね。

東野氏は「今後ガリレオの短編を書く事は無いだろう。」と語っており、個人的には「長編なら書き続けて行く。」という意思表示の様にも感じています。長編だと“基本的には”「湯川にとって、1つの過去が出来上がる。」訳ですが、短編だと「其の数だけ、湯川の過去が出来上がる。」事になり、短編を書き続ける事で「過去の制約」が長編以上に出てしまう事を、東野氏は嫌ったのではないかと思うのです。もっと判り易く言えば、「過去の出来事が増えれば増える程、其の整合性を保つ為の面倒さが出てしまう。」訳で、其れがマンネリ感を増させているとも。ですので、「或る程度の期間を置いて、再びガリレオ・シリーズの長編は書き続けて行くのではないかなあ。」という気がしています。

今後とも、何卒宜しく御願い致します。
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