古賀政男氏と言えば、日本を代表する大作曲家の1人。彼が生み出した名曲は余りにも多く、自分が一番好きな“古賀メロディー”は「影を慕いて」。先日、古賀政男氏を取り上げたTV番組を見ていた所、大ヒット曲「影を慕いて」【動画】に関する意外な事実が紹介されていた。
其の意外な事実とは、何なのか?答えを記す前に、次の4つの歌に“共通する要素”を、考えて貰いたい。
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「影を慕いて」
「また逢う日まで」【動画】
「矢切の渡し」【動画】
「涙そうそう」【動画】
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4曲とも、多くが知るヒット曲だ。恐らくは、知らない人の方が少数派だろう。「此れ等の歌を、歌っていたのは誰か?」という事を思い浮かべると、共通する要素が判るかも知れない。4曲に共通する要素とは・・・。
「最初に発表された際には別の歌手が歌い、ヒットする事は無かったが、後に別の歌手が歌った事で大ヒットを記録した。」というのが、4曲に共通する要素。
「『影を慕いて』は藤山一郎氏、『また逢う日まで』は尾崎紀世彦氏、『矢切の渡し』は細川たかし氏、そして『涙そうそう』は夏川りみさんが歌っていた曲。」というイメージを持つ人が一般的と思うけれど、実は此れ等の4曲を最初に歌ったのは「佐藤千夜子さん(『影を慕いて』[1931年])、槇みちるさん(『また逢う日まで』[1969年])、ちあきなおみさん(『矢切の渡し』[1976年])、森山良子さん(『涙そうそう』[1998年])」となっている。「4曲とも名曲なので、誰が歌っても大ヒットしそう。」な感じもするが、「どんな名曲でも、発表された時代や歌った歌手等がピタリと合わないと、大ヒットしない事も在る。」という事なのだろう。
「最初に発表された時にはヒットしなかったけれど、同じ歌手(グループ)が歌い続けた事で大ヒットを記録した歌。」というのも在る。米米CLUBの「浪漫飛行」【動画】も、そんな1曲だ。此の曲が最初に発表されたのは1987年で、米米CLUBのアルバム「KOMEGUNY」の3曲目に収録された物だったが、大ヒットを記録する事になったのは、3年後の1990年にJALのCMのイメージ・ソングに使われたのが切っ掛けだった。
古い歌が大好きなもので、佐藤千夜子さんの「影を慕いて」、ちあきなおみさんの「矢切の渡し」、森山良子さんの「涙そうそう」、いずれもCDで保存しており、時々聴いています。
ただ、「また逢う日まで」に関しては、私の記憶では以下のような経緯があったと承知しております。
この曲を最初に歌ったのは、「白いサンゴ礁」のヒットで知られるフォーク・グループ、ズー・ニー・ブーで、タイトルも「ひとりの悲しみ」、歌詞もまったく違うもの(作詞は同じ阿久悠)でした。これがあまりヒットしなかったので、筒美京平の曲を管理している日音の村上さんという方が、「いいメロディなのに埋もれさせるのは惜しい」と考え、阿久悠さんに歌詞を書き直してもらって尾崎紀世彦に歌わせ、大ヒットになった。…という事です。「ひとりの悲しみ」のCDも持っています。
ですので、槙みちるが最初に歌った、という話は初耳でした。それで調べましたら、次の事が判りました。giants-55さんももしかしたらご存じかも知れませんが。
一番最初は、三洋電機のエアコンのCMソングとして筒美さんが作曲し、やなせたかしさんが詞をつけて槙みちるが歌う曲が完成したものの、スポンサーの意向でボツになってしまい、陽の目を見ませんでした。それで前述の村上さんが阿久悠さんに別の歌詞を付けてもらい、「ひとりの悲しみ」としてレコード化された…という流れだったという事です。なんと3度目の正直だったわけですね。不思議な運命を感じます。槙みちる版はレコードにもなっていないようですが、聴いてみたいですね。やなせさんの詞もどんな歌詞なのか知りたいです。
ついでですが「最初に発表された際には別の歌手が歌い、ヒットする事は無かったが、後に別の歌手が歌った事で大ヒットを記録した。」曲をもう1曲知ってます。
敏いとうとハッピー&ブルーが歌い、大ヒットした「私祈ってます」。これ、最初は1972年に「幸せになってね」のタイトルで、元マヒナ・スターズの松平直樹が結成した、松平直樹とブルーロマンがレコードを出しましたがヒットせず、1973年には園まりが同じタイトルで発表しましたがこれもあまりヒットせず、1974年、「私祈ってます」とタイトルを変えて敏いとうとハッピー&ブルーが歌って、やっと大ヒット、と、こちらも3度目の正直です。こういうの、他にもまだまだあるかも知れませんね。
「また逢う日まで」がヒットする迄の経緯、そんな感じだったのですね。以前、筒美京平氏の追悼番組で紹介された話を元に記事にしたのですが、槇みちる氏のレコード盤は存在しないんですね。どんな感じなのか、確かに聞いてみたいです。
「私祈ってます」は好きなムード音楽の1つですが、過去に2度レコード化されていたのは初めて知りました。松平直樹氏の甘い声質でもヒットしなかったというのは、凄く意外ですね。