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警視庁第2機動捜査隊渋谷分駐所の名コンビ、高丸卓也(たかまる たくや)と縞長省一(しまなが しょういち)。彼等の機捜車のコール・サインは「235」だ。
衆議院解散に伴う総選挙が決まり、其の対応で忙しくなった警視庁を、騒然とさせる事件が発生。SNSに法務大臣・坂本玄(さかもと げん)の殺害予告が投稿されたのだ。或る事件で捜査1課特殊犯捜査第1係係長・葛城進(かつらぎ すすむ)に評価された機捜231の大久保実乃里(おおくぼ みのり)は、設置された特別捜査本部に呼ばれ、高丸、縞長と共に、坂本の選挙区・川越で、坂本の選挙事務所に潜入捜査に入る。
次々に浮かび上がる容疑者達を、懸命に捜査する3人だったが、更に事件は展開し・・・。
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警察小説を十八番とする作家・今野敏氏には人気シリーズが数多く在るが、今回読んだ「昇華 機捜235」は、「『機捜235』シリーズ」の第3弾。
「『機捜235』シリーズ」は、「捜査1課入りを目標している30代の高丸卓也が、自分よりも遥かに年上(定年間近)の縞長象一とコンビを組み、機動捜査隊として事件に当たる。」というストーリー。「嘗ては捜査1課に所属していたものの、手柄も立てられなかった事から、見当たり捜査班に"左遷"され、其処で必死に成って能力を高めた事で、断トツの検挙数を上げる様に成った。そして、『機動捜査隊の実績を上げたい。』と考える上層部の思惑により、定年間近という年齢で機動捜査隊へ異例の異動。捜査1課時代を知る者達からは"無能"と誹られ、本人も未だに其の過去を引き摺り続け、自分自身に全く自信が持てない。」という縞長。そんな彼のペア長(ペアを組んだ際、"上の立場"として指示を出す存在。)成るのが高丸で、要は「遥かに年上の部下と遥かに年下の上司」という"年齢と立場が逆転した構図"が在る訳だ。此れは警察組織に限らず、一般社会でも非常に遣り難い関係性だろう。
ペアを組まされた当初、「定年間近の草臥れた中年」と島長を侮っていた高丸。だが、遥かに年下の自分に対しても礼儀正しく、且つ真摯な態度を取り続け、そして何よりも"捜査員として非常に高い能力(特に「人の姿形を明瞭に記憶し、見分ける能力。」の高さ。)を思い知らされるに到って、彼に対して尊敬の念を持つ様に成る。
「"上の立場”に在り乍ら、"下の立場"の者達が自分をどう思ってるか等が気に成って、不必要な程に色々考えたり、悩んだりしてしまう。」というのが、今野作品の主人公には多い様に思う。特に、「上司と部下という関係性が、"年齢的に逆転"している場合。」だと、そういう状態に成ってしまう上司も少なく無い事だろう。ずっとサラリーマン生活を送って来た自分なので、「判るなあ。」という思いが。
今回の作品、犯行動機が考えられない程に"幼稚"だし、犯人当てという点でも"捻り"が無さ過ぎるので、ストーリーに全く感情移入出来無い。今野作品にしては、非常に凡庸な部類に入るだろう。
総合評価は、星2.5個とする。