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霧の中から現れる、怪しい灰色の紳士“カクイ”。呪われた、美しい首飾り。美しいヴァイオリニストの少女。そして、我等の少年探偵団。
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1894年10月21日、「少年探偵団シリーズ」を著した小説家・江戸川乱歩氏が生まれた。昨年の2014年は、「江戸川乱歩氏生誕120周年」に当たるという事で、「少年探偵団シリーズ」を刊行しているポプラ社から、オマージュ小説が次々に上梓され、此れ迄に第1弾の「みんなの少年探偵団」及び第3弾の「少年探偵」を読了。そして、今回手にしたのは、第2弾の「全員少年探偵団」(著者:藤谷治氏)。
惹句には「彼の時、“彼等”に憧れた全ての大人達に。懐かしくて新しい!立ち上がる空気、怪し気な匂い、全ての質感を其の儘に、藤谷治が『少年探偵団』を現代に甦らせる!」と在る。
幼少期、夢中になって読み漁った「少年探偵団シリーズ」は、戦前から昭和30年代辺りのレトロで怪し気な世界観、そして独特な言い回しが魅力だった。そんな雰囲気を上手く再現しつつ(ハンバーガーの大きさを「野球のグローブ位」と表現したり、「裾の折り返しの所には、濡れると臭い匂いが出る薬品が入っていて、又、腰の周りには燃やすと紫色の煙が出る、煙幕と同じ成分の粉が塗り込んで在る。」という特殊なズボンが出て来る等。)、「CG」や「インターネット」、「DVD」、「携帯電話」等が普通に登場する“現代”が舞台となっているのだから、実に面白い世界観。
名探偵・明智小五郎と彼が率いる少年探偵団の“敵”は、大怪盗・怪人二十面相。怪人二十面相と言えば、突拍子も無い変装(巨大甲虫やら宇宙怪人やら。)や大掛かりなトリックを駆使する事でも有名。「100万円の物を盗むのに、1千万円も掛けてしまう。」様な破茶滅茶さが在ったりもして、子供心に「意味判んないなあ。」と思ったりした事も。
「全員少年探偵団」では、少年探偵団の団長・小林芳雄が囚われの身になってしまうのだが、其の監禁場所が「打ち捨てられた様な古い銭湯の外壁に設けられた扉がエレヴェーターの入り口になっていて、其処からどんどん下に降りた地下26階。」というのが、何とも少年探偵団の世界!「潰れた様な古い、其れも“平屋”の銭湯の真下に、地下26階迄行くエレヴェーターが設置されている。」なんて、誰が思うだろうか?
地下26階に到る迄の全ての階に、怪人二十面相が此れ迄使用して来た大掛かりな道具や衣装(青銅色の巨大蟹、赤い目をした丸坊主の首、大船の観音様の肩に乗っかった一寸法師等。)が置かれている。“怪人二十面相の物置”という設定には笑ってしまうと共に、道具や衣装の内容には「懐かしいなあ。」という思いが。
ストーリー的には大した事が無いけれど、「少年探偵団シリーズ」が大好きだった“嘗ての子供達”には堪らない小説だろう。総合評価は、星3つとする。