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社長・佃航平(つくだ こうへい)の閃きにより、トランスミッションの開発に乗り出した精密機械製造業の中小企業「佃製作所」。果たして、其の挑戦は上手く行くのか?
ヴェンチャー企業「ギアゴースト」や、ライヴァル企業「ダイダロス」との“闘い"の行方は?
帝国重工の財前道生(ざいぜん みちお)が立ち上げた新たなプロジェクトとは一体?
そして、実家の危機に直面した番頭・殿村直弘(とのむら なおひろ)の其の後は?
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池井戸潤氏の「下町ロケット・シリーズ」の第4弾「下町ロケット ヤタガラス」は、第3弾「下町ロケット ゴースト」の最後に待ち受けていたほろ苦い状況を受けての展開。
相手を信じて共に闘った佃航平が、其の信じた相手に手痛く裏切られてしまう。そして、窮地に追い込まれた時、其の相手は航平に侮蔑的な言葉を投げ掛ける。助けてくれた恩人への度重なる裏切り行為。フィクションとは判っていても、ついつい感情移入してしまい、何度も熱くなってしまった。
GPSを利用した自動運転車の開発が、世界中で進められている。5年前の記事「自動運転」内で書いた様に、自分は“完全自動運転化”には、安全面から懸念を持っている。でも、此の作品の中で取り上げられている“農業分野での自動運転車”、即ち「GPSとデータを駆使し、自動運転化されたトラクターやコンバイン。」というのは、「若し実現したら、作品内でも書かれている様に、高齢化が進む一方の日本の農業界に大きな革命を起こすかも。」という希望を感じた。農業に従事してる知り合いから、其の大変さを良く聞かされているからだ。
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「何が理念だ、財前。」。水原が揶揄したのは、藤間の前を辞去して廊下に出たときだ。「お前、霞を食って生きていけるのか。」。「理念と金儲けは、必ずしも一致しません。」。財前は落ち着き払ってこたえる。「ですが、理念がない金儲けは、ただの金儲けです。我が帝国重工のすべきことではありません。」。
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昔から本を読むスピードは、人と比べると速かった。今でも速い方だとは思うが、年齢も在ってか集中力が続かず、1冊の本を読み終えるのが、昔程速くは無くなった。でも、「下町ロケット ヤタガラス」は、余りに面白くて、1日で読み終えてしまった。ストーリー自体の面白さも在るが、登場人物達、特に“悪役”のキャラ立ちが半端無く、一気に読み進んでしまうのだ。
総合評価は、星4.5個とさせて貰う。