野球を食い物にする輩達

ライオンズの裏金問題発覚を機に、「球界浄化の為には、不正の温床となっている『希望入団枠制度』を即時撤廃すべし！」という強い要望がアマ側から上がっていた。しかし、一昨日開催された日本プロフェッショナル野球組織（ＮＰＢ）の代表者会議での結論は「来年から本格的な制度を策定する。」との事。「（今秋からの希望入団枠制度の撤廃に付いては）時間切れになるのではないか。もし間に合えば、今年から撤廃となる可能性もゼロでは無い。」という注釈は在るものの、今年は暫定的に現行制度を維持する方針となった。

プロ側のこの決定に対してアマ側は「中途半端な決定で残念。世論が許さないだろう。」（日本野球連盟・鈴木副会長）、「今年から撤廃されると思っていたので驚いているし、失望した。」（日本学生野球協会・内藤事務局長）、「今回の決定は断じて受け容れられない。開いた口が塞がらない。プロの新人獲得制度は、アマの協力無しでは出来ない事が判っていないのでは？大間違いですよ。」（日本高等学校野球連盟・田名部参事）」と一斉に猛反発している。特に田名部参事は、２００４年１月２８日に当時の川島廣守コミッショナーと交わした覚書に「ドラフト制度を変更する場合には、日本高等学校野球連盟の同意を求める。」という一文が盛り込まれている事から、今回の決定はそれにも抵触すると批判。

先ず言いたいのは、「然も自分達こそが野球ファンの味方だと言わんばかりに、一方的にプロ側の姿勢を詰っているアマ側のトップ達だが、プロ側から裏金を受け取るだけでは無く、公然と裏金を要求していたアマ側の人間が少なからず居たと言われている以上、偉そうな物言いをするな！」という事。確かに自分も今回の決定には失望した一人だし、世論も「希望入団枠制度の完全撤廃。」という流れになっているとは思う。だが、プロとズブズブの関係になっていたアマ側の連中が正義面をして、「世論」を錦の御旗に掲げて物を言うのはどうにも気持ちの悪さを感じてしまう。

今回の代表者会議には、ライオンズ以外の１１チームの”代表者”が出席。内８チームが希望入団枠制度の撤廃に賛成し、ホークス（「希望枠＝不正という短絡的な意見で決め付けるのはきついが、状況を踏まえ仕方が無い。」）＆カープ（「希望枠を除いたとしても、他の制度が絡んで来る。そうなると賛成出来る出来ないが出て来る。」）は消極的な賛成、そしてジャイアンツが「希望枠を廃止するなら、どうしてもＦＡ短縮は不可避。選手に希望を与える制度が必要。」と反対を主張したという。要はジャイアンツの強い反対が、暫定的とはいえ現行制度維持という方向に繋がった訳だ。

ジャイアンツの主張している事も判らないではない。所謂”逆指名制度”が導入する前には、「奴隷制度の様に、行きたいチームが選べないドラフト制度はおかしい。これでは指名される側の選手達が気の毒だ。」という意見が少なからず在りはしなかったか？「プロ野球という”会社”に入社すると考えれば、何処のチームから指名されようが入る可き。」という意見も確かに在ったが、「一般人の場合でも自分が行きたい会社を選択出来る（其処に入れるか否かは別にして。）のに、プロ野球選手の場合には指名を拒否する権利しかないというのはどんなものか。」という思いが自分には在った。問題は”逆指名制度”に在るのでは無く、プロ＆アマ双方に不正を介在させてしまう余地に在り、不正を徹底的に防ぐ為の厳罰が明文化されていなかった事だと思う。まあそれを今更どうこう言っても仕方ない事だが、”逆指名制度”を完全撤廃する以上は自分の本意では無いチームに入らざるを得ない選手も当然出て来る訳で、そういった選手達の為にも「他チームに移籍出来る迄の期間を短縮する」、即ちＦＡ短縮を考慮するというのは強ち間違っているとは言えない気が。

唯、此処迄球界に対する不信感が高まっている状況下では、希望入団枠制度の即時撤廃をプロ側として打ち出す可きだったろう。「旧来の悪弊と決別する！」という球界の意思を、これ程迄に明示出来る機会は無かったと思うのだ。それからＦＡ短縮に付いて詰めれば良い話。「ジャイアンツ・サイドが、プロ野球を食い物にしている。」と言われても仕方無いだろう。ジャイアンツ・ファンの一人として非常に残念だ。

野球を食い物にしていると言えば、「週刊文春（３月２９日号）」に載っていた記事にも怒りを覚えた。北京オリンピックの野球日本代表チーム監督に就任した星野仙一氏が、「星野ジャパン」という名称を商標登録申請していたというのだ。幅広い分野でこの名称の申請をしていたそうで、これに付いてスポーツジャーナリストの二宮清純氏は「日本を代表するチームの呼称を商標登録するというのはどんなものか。」といった趣旨の否定的な意見を寄せている。

唯、記事によるとこの申請は、既に星野氏サイドから取り下げられているそうだ。星野氏は「知人が勝手にやった事。」と”何時もの如く”言っている様だが、タイガース監督時にチームが優勝した際、ビール掛けの場に現れた選手達が揃って着込んでいたＴシャツの販売権を星野氏がガッチリと握っていた事が報じられた様に、金銭に纏わる話への嗅覚は相変わらず鋭い御仁だと感心するばかり。利権に噛んでいる事が公になる事を恐れ、慌てて申請を取り下げたというのが本当の所ではなかろうか。

とは言え商標登録自体が不正な訳でも無く、少しでも金銭を得たいというのを全面的に否定するつもりも無い。自分が不快なのは、私利私欲を充足させる為に野球を食い物にし、その一方でもっともらしい御為倒しを口にし続ける彼の姿勢に在る。石原慎太郎都知事に相通ずる二面性、究極のセコさがどうにも自分には受け容れ難い。彼が代表チーム監督に就任した際に覚えた不安が、案の定現実化して来たという感じがし、このままでは素直に代表チームを応援する気にはなれそうもない。

そもそもマスメディアが「長嶋ジャパン」だ「王ジャパン」だと、個人の名前をチームに冠するのが好きでは無い。あくまでも試合の主役は選手で在り、監督が前面に出てしまうのは妙なものと考えているからだ。「日本代表チーム」と呼ぶのは味気無いというのならば、「２００８ドリーム・チーム」等他の呼称を考えれば良いだけの話。

プロ野球人気の低落が言われる中、野球を食い物にしているとしか思えない様な輩はとっとと失せて貰いたいものだ。