ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「俺たちの箱根駅伝」

2024年06月28日 | 書籍関連

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古豪・明誠学院大学陸上競技部。箱根駅伝連覇した事も在る名門の名も、今は昔。本選出場を2年連続で逃したチーム、そして卒業を控えた主将・青葉隼斗(あおば はやと)にとって、10月の予選会が箱根へのラスト・チャンスだ。故障を克服し、渾身の走りを見せる隼斗に襲い掛かるのは“箱根の魔物”。隼斗は、明誠学院大学は、箱根を走る事が出来るのか?

一方、「箱根駅伝」中継を担う大日テレビ・スポーツ局。プロデューサーの徳重亮(とくしげ りょう)は、編成局長の黒石武(くろいし たける)から降って来た難題頭を抱えていた。黒石は、「先人達が大事に守って来た中継スタイルを変更し、“ヴァラエティー化”しろ。」と言うのだ。

「不可能」と言われた箱根中継を成功させた伝説の男から、現代に伝わるTVマン達の苦悩奮闘を描く。
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池井戸潤氏の新作「俺たちの箱根駅伝」は、箱根駅伝に関わる人間達にスポットライトを当てた、上&下巻併せて700を超える長編小説

先日書いた記事「箱根駅伝」の中で詳しく書いたが、子供の頃の自分は箱根駅伝に全く興味が無かった。でも、色んな経験を積み、「世の中は、思い通りに成らない事が多い。」というのを知り、箱根駅伝の中に人生の縮図を感じる様になった事で、選手達の走りに“感情移入”して、毎年、見る様になったという経緯が在る。

又、「
箱根駅伝の生中継=日本テレビ系列」というイメージしか無いのだが、箱根駅伝が初めて“TV放送”されたのは「1979年1月3日」で、放送したのは日本テレビ系列では無く、東京12チャンネル(現テレビ東京)だったと言う。関東ローカルの東京12チャンネルが箱根駅伝を放送していたというのは驚きだが、更に驚いたのは生中継はゴールのタイミング“だけ”で、其処迄の展開は“録画ダイジェスト放送”だけだった。という事。

箱根駅伝は元々読売新聞社主催だったが、1987年に日本テレビが“特別後援”として参加した事で、同年より日本テレビが全国ネットで、本格的に生中継開始となったというのも、「もっと前より、日テレが生中継していたと思っていた。」という意味で、非常に意外だった。

「俺たちの箱根駅伝」、池井戸氏が徹底的に取材した上で書き上げた事が、緊々と伝わって来る。ディープな箱根駅伝ファンにとっては“常識”なのかも知れないが、自分にとっては初めて知る事実が多く、特に“日本テレビ系列が箱根駅伝を始めて生中継する前段階の次の出来事”は、「そうだったんだ。」という思いが。

箱根駅伝は主に山間部で行われる、電波の入りが非常に悪く、生中継は困難とされていたが、日本テレビが山中無線機地を設置した事で、上手く電波が飛ばせる様になり、生中継に踏み切れた。と言う。

又、箱根駅伝でスタート地点、ゴール地点、そして中継所以外で、唯一アナウンサーによる中継がされるのが箱根小涌園で、必ずアナウンサーが『箱根小涌園』とアナウンスする。事に以前から「何でだろ?」と不思議に感じていたのだが、其の謎も「俺たちの箱根駅伝」で解けた。

総勢千人近い放送スタッフ動員される箱根駅伝では、予想外のトラブルが発生する事も在り、1987年に日テレが初めて生中継に臨んだ際には、「前年の9月になって、箱根に詰める300人程のスタッフの宿泊場所が確保出来ていない。」事が判明し、大ピンチに陥った。正月の箱根という事で、宿泊先は既に予約済み許り散々手を尽くし挙句、「もう駄目か。」と諦め掛けた所、箱根小涌園から「食事は用意出来ませんが、大広間で良ければ使って下さい。」と有難い申し入れが在り、無事に放送出来る事に。其の時の強い恩義から、箱根小涌園前からの中継、そして「箱根小涌園」というアナウンスがされる様になったと。「プロジェクトX~挑戦者たち~」【動画】を思わせる、非常に良い話だ。

登場人物1人1人の個性際立つ所謂キャラ立ち”しているのが、池井戸作品の魅力の1つだ。表面的な描き方では無く、内面をも抉り出す様な、実に深みの在る描き方が、此の作品でも光っている。大好きだったTVドラマどてらい男」【動画】もそうだったが、憎々しさを感じてしまう程のキャラクターが存在する事で、ストーリーを追う側はどんどん“其の世界”に引き込まれて行く。「俺たちの箱根駅伝」にもそういうキャラクターが何人が登場するが、そんな内の1人の“隠された秘密”が終盤に明らかになる事で、其の人物への見方ががらりと変わり、一層ストーリーに引き込まれてしまった

箱根駅伝に関わる人達、選手側もそうだが、生中継するTVマン達が生々しく描かれており、丸で目の前で起こっている様な臨場感が在る。っている選手達の様子は特にそうで、彼等の一挙手一投足にドキドキ&ハラハラする一方で、選手の後ろを走る運営管理車からの監督声掛けに心を激しく揺さぶられた。不覚にも、何度も涙してしまった自分。

箱根駅伝では“脇役”的な扱いを受ける「関東学生連合チーム」の選手達が、“記録には残らない闘い”に悩み、そして奮闘する姿には、読んでいてついつい応援の気持ちが湧いて来た。

池井戸氏の最高傑作断言する。総合評価は星5つ


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2 コメント

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Unknown (悠々遊)
2024-06-28 11:14:01
こんにちは~
現代小説はあまり読まないほうですが、箱根駅伝を題材にした小説は「風が強く吹いている」を読んだことがあります。
こういう「戦い」を題材にした物語は構成次第で引き込まれてしまいますね。
giants-55さんが評価5とするぐらいだから興味が湧いてきました(笑)。
幸い地元の図書館にも入っているようなので予約しておこうかな。
人気作家の最新作だから、たぶん今からだと半年~1年以上の待ちになるだろうな。
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>悠々遊様 (giants-55)
2024-06-28 11:43:40
書き込み有難う御座いました。今回は、此方にレスを付けさせて貰います。

元々キャラ立ちした作品を著す事には定評の在る池井戸氏ですが、此の作品は其の最高潮と言える作品。“集団”としてのみならず、”個”としての争いも重要な箱根駅伝をテーマにしているからこそなのかも知れません。

記憶違いで無ければ、当ブログで"小説”に対して総合評価「星5つ」を付けるのは初めての事。其れだけ、"推しの作品”です。
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