エア・ドゥ 夢はなぜ破れたか

2008-03-03 00:13:20 | Books
「志と理念だけではビジネスは成り立たない」。すべてはこの一語に集約されるだろう。もちろん志や理念があってこそビジネスは産声を上げる。しかし一時の感動を味方に付けただけでは夢物語の域は脱しきれない。「エア・ドゥ 夢はなぜ破れたか」はそんな現実を痛感させられる一冊である。道民の希望の翼であったはずのエア・ドゥに何が起きたのか。本書は挫折と苦悩に満ちた波乱の歴史を関係者の証言、取材を元に整理、再構築したドキュメントである。

故浜田輝男氏の手記「AIR DO - ゼロから挑んだ航空会社 」はまさに映画のシナリオのようだった。たった一人の旅立ちに始まり、道中で出会う多くの同志たち。郷土の民の熱い思いに支えられ、小さな種火はいつしか大きな希望の炎へとその形を変えていく。とくに苦難の末に初フライトを成功させる顛末は読者に十分なカタルシスを感じさせるものであった。さながら冒険活劇の世界である。おそらく物語がそこで終わっていれば、読後の心地よさだけが残っただろう。しかし現実は映画やゲームと違う。物語がそこで終わることはない・・・。

本書で語られるのは主にその後の話である。こんな言い方は酷だが、僕らが見ていたのはエア・ドゥの真の姿ではなく、張りぼての外観だったのかもしれない。関係者の口によって語られる企業体質の脆弱さがそれを如実に物語っている。北海道国際航空は 2002年に民事再生法を適用、全日空との提携により翼を失うことだけは辛うじて免れた(再生は2005年に終了)。物語はまだ続くのである。かつての輝きは無くなりすっかり傷ついてしまったエア・ドゥだが、あの志と理念を高く掲げ、再び「道民の翼」として飛翔する日が来ることを願って止まない。

本書あるいは浜田氏の手記に興味を持たれた方、できればこの二冊は通読をお勧めしたい。志と理念の素晴らしさ、そしてそれを生かすことの難しさ、両著にはその光と影が余すことなく描かれている。




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