Moving Hearts / The Storm (1985)

2006-11-17 00:23:12 | Music > Celtic

Moving Hearts:
Davy Spillane - uilleann pipes, low whistle
Declan Masterson - uilleann pipes
Keith Donald - soprano and alto sax, bass clarinet
Noel Eccles - percussion
Matt Kelleghan - drums
Eoghan O'Neill - bass
Donal Lunny - bouzouki, synthesiser, bodhran
Greg Boland - guitar

ケルト・ミュージック界の重鎮 Donal Lunny 率いる Moving Hearts のラスト・アルバム。1981年のデビュー以来四作目となる本作では(ライヴ・アルバムを一枚含む)、従来のスタイルから大きく進化を遂げました。今までになくコンテンポラリーなサウンドにこだわった音作りで、大作志向の完全インストゥルメンタル化、シンコペーションを取り入れた複雑なリズム構成などプログレッシヴ・ロックへの接近をも匂わせる内容です。王道トラッドに抵抗がある方でもすんなりと入り込めるサウンドに仕上がっていると思います。

オープニングの "The Lark" から圧巻! 七つのチューンからなるセットなんですが、もう奇跡のカッコ良さです。Davy と Declan のダブル・パイプ、Donal のブズーキ、Eoghan と Matt のリズム・セクション、どれもこれもシビれます。サックスやエレクトリック・ギター、パーカッションまで加わり、息つく暇も無い展開に13分という長さもあっという間。高揚感でグイグイ押すサウンドではなく、緻密な構成やアレンジでクールに聞かせるあたり Donal の手腕によるところが大きいでしょうね。ラスト間近の怒涛の盛り上がり、心憎いくらいの演出です。目いっぱいヴォリュームを上げて聴き終えた後の爽快感は何ともいえませんなぁ(笑)。

"Tribute To Peadar O'Donnell" の冒頭、とにかくイリアン・パイプはよく泣きます。どちらかというと一本調子なバグパイプに比べ、硬軟自在のサウンドはイリアン・パイプが表現力豊かな楽器であることを物語っています。「静」と「動」の演じ分けに着目すれば "Tribute To Peadar O'Donnell" の「静」に対し、ブズーキの歯切れ良いカッティングをバックにイリアン・パイプが疾走する "The Storm" は「動」の代表格でしょう。最初のチューンでは Davy だけがパイプを演奏しているんですが、セット・チェンジとともに Declan も加わり、左右に分かれてダブル・パイプと来ました。これがたまらなくカッコいい!

憂いを帯びた異国情緒溢れるメロディの "The Titanic" や内省的なムードが漂う "Finore"、そしてラストはロウ・ホイッスルが荘厳な雰囲気を演出する "May Morning Dew"。脈打つ鼓動を整えるかのようにアルバムはしっとりと幕を下ろします。

大所帯がゆえ、バンドを維持できず解散してしまったのは何とも残念でなりませんが、後続のバンドにその見本を示した功績は大きいと思います。また Moving Hearts 亡き後も本作の音楽性は初期の Davy Spillane Band に引き継がれ、さらに多くの影響をシーンに与えることになりました。ケルト音楽に興味をお持ちのプログレ・ファンは勿論のこと、一般のロック・ファンにも是非聴いていただきたい一枚です。

※ Davy Spillane については以前の記事も参照してください(こちら)。

"The Storm" アルバム試聴(Tara Music Company)
http://www.taramusic.com/sleevenotes/cd3014.htm





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4 コメント

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Unknown (かない)
2006-11-18 00:24:19
このアルバムはアイルランドで買いました。
ダブルパイプがかっこいいですよね!
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>かないさん! (gw)
2006-11-18 21:24:24
こんばんは!

かないさんも聴かれていましたか! やはり只者ではないですね(笑)。

僕にとって Donal の歴史を追うことはケルト音楽のシーンを知ることだったように思います。とにかく何でも聴き漁っていた時期に出会った一枚です。
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きましたね。 (エルジ)
2006-11-19 00:10:11
アイルランド出身と聞くと、まず、Moving Heartsのような民族音楽を前面に出しているものを頭の中に浮かびます。
近年では、荒川選手が自分の演技でケルティックウーマンを使った事により、日本でも人気がでました。

エンヤ、エルビスコステロ、U2、シンリジー。

アイルランドは、音楽の宝庫ですね^^

Moving Hearts、私は、かなり好きです。

アイルランドでなくても、その国の民族音楽を取りいれたバンドがありましたら、是非、教えてください。

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>エルジさん! (gw)
2006-11-19 00:39:02
Celtic Woman がカヴァーした Secret Garden の曲ですよね。"You Raise Me Up" は僕も大好きな曲です。他にも色んなアーティストが取り上げていますよね。Josh Groban のヴァージョンもオペラティックで素晴らしいです。

トラッドに限らずアイルランドには偉大なアーティストが数多くいますよね。どんなスタイルにしろどこか祖国を感じさせる雰囲気が彼らの魅力のような気がします。

民族音楽を取り入れたバンド・・・僕はどちらかというとトラッド側からコンテンポラリーな方向性に歩み寄る音楽が好きなのですが、ノルウェー・トラッド界に Annbjorg Lien という女性フィドラー(ヴァイオリニスト)がいまして、彼女の作る音楽は大好きです。アルバムによってはかなりプログレッシヴなサウンドを作り上げていますね。彼女が在籍していた Bukken Bruse というバンドも面白いです。
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