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カントリー&フォーク決定盤 - ハート・オブ・アメリカ / 鈴木カツ

2006-12-29 09:33:51 | Books
 
先日「カントリー&ウエスタン大好き」という本の紹介記事を書いたが、本書の著者である鈴木カツ氏はその「カントリー&ウエスタン」という言葉に難色を示す人物である。「ウエスタン」という言葉は本来西部劇で使われる音楽を指すものであり、その紛らわしさゆえ「カントリー&ウエスタン」という言葉を使うのは慎むべきだという考えらしい。同じカントリー好きでも三者三様のこだわりがあるわけですな(笑)。その辺僕はというと「カントリー&ウエスタン」と聞けば 50年代、60年代にヒットした本国のカントリー、ジミー時田や小坂一也を始めとする日本人カントリー・ミュージシャン、日本語詞で唄われるカントリー・ソングなどを連想するくらいで、この言葉にカントリー・ミュージックを総称する意味合いは感じない。よってその対象範囲はあくまで限定される。そもそも言葉なんて、いつしか形骸的になることもあるわけで、個人がそれを嫌ったからといってどうなるものでもない。結局「ウエスタン」という言葉を使うか否かに関してはどっちでもいいというのが正直なところ。相変わらずいい加減な男である(笑)。

そろそろ本書の話に移ろう。「カントリー&フォーク決定盤 - ハート・オブ・アメリカ」はそのタイトルからもわかるとおり、カントリーやフォークを中心としたルーツ・ミュージックのガイドブックである。鈴木カツ氏が選定した総勢 180組のアーティストについて、それぞれ1ページないしは2ページを割き、簡単な経歴とお薦めの一枚が紹介されている。これだけのアーティストについて簡潔にまとめるのは大変な労力だったろう。遅筆な自分に置き換えると・・・う~ん、考えたくもない(笑)。アーティストはアルファベット順に並べられているのだが、それ自体にはあまり意味が無いように思える。探しやすさを考慮したにせよ、そんなのは巻末に索引を付ければ済むわけで、どうせなら年代順に並べるなり、ジャンルやスタイルごとに章を設けるなりしてほしかった。この手の音楽に精通している人ならともかく、これから開拓していこうという人にとってはその方が本当の意味で探しやすいといえるのではないだろうか。表紙には「180アーティスト&CDガイド」と書かれているが、これでは単なる人名事典である(苦笑)。そんな構成上の不満はともかく、内容は日本を代表するアメリカ音楽評論家が書いているだけに秀逸である。無駄のないスッキリとした文章は非常に読みやすく、焦点をぼかすことなく中庸にまとめていると思う。好奇心や探求心に満ちた人にとっては守備範囲を広げるキッカケとなるに違いない。新書サイズなので携帯に便利だし、本書の性格上、外出先での拾い読みにも向いているだろう。カントリー関連の書籍が極端に少ない国内においては是非揃えておきたい一冊である。


※何となく「である」体を使って書いてみました(笑)。



買う前に借りるのだ

2006-12-27 00:00:10 | Books
 
自分の聴きたいアルバムって、レンタル店に置いているわけでもなく、友人が持っているわけでもなく、そのほとんどが自分で買わないと聴けないヤツばかり・・・(笑)。ある程度の出費は覚悟していますが、やはり「財源」が有限であることを考えると、どこかで節約する必要性が出てきます。そんな僕の節約術は「図書館」。最近は出来るだけ本を所有することをやめました。読みたいという欲求は今も昔も変わりませんが、所有欲を極力抑えることで金銭面だけでなく部屋のスペースの節約にもなっています(笑)。確かに、何度も読み返したり、手元にあってこそ真価を発揮するような本は「自分で持っていたい」と思いますが、それ以外の本はまず借りてから購入するかどうかを決めています。詰まらない内容であれば買わずに済むわけですから、お金を払ってから「失敗だった・・・」と嘆くことも少なくなりました(笑)。

以前から本の購入にあたっては amazon.co.jp やビーケーワンなどのレヴューを参考にしていました。これは図書館を利用するようになってからも変わりません。違いといえば読みたい本が見つかったら、とりあえず図書館に所蔵されているかを検索するようになったことですね。ちなみに横浜市民である僕が利用するのは横浜市立図書館。市内に18存在する市立図書館にあるすべての蔵書をオンラインで検索及び予約することができます。また Jcross という図書館と本の情報サイトでは国内にある図書館の蔵書をオンライン検索できます。すべての図書館が対応しているわけではないですが、お近くの図書館がオンラインで利用できる環境にあるのなら、これを活用しない手はないですぞ!


横浜市立図書館 オンライン:
http://www.city.yokohama.jp/me/kyoiku/library/

Jcross:
http://www.jcross.com

遊ぶ日本語 不思議な日本語 / 飯間浩明

2006-12-26 00:13:11 | Books
 
誤字・脱字・誤用などを指摘して悦に入る行為は好きではないですが、個人的に正しい日本語、生きた日本語といったものには興味があり、この手の本はよく読みます。それに比例して日本語が上達しているわけではないのが甚だ残念ではありますが・・・(笑)。まあ文法や用法を意識する以上に大切なことってコミュニケーションにはたくさんありますからね、とは自分への慰めか(笑)。

著者の飯間浩明氏の名前を知ったのは今から半年ほど前のこと。とある日本語の言い回しを検索していて同氏のブログがヒットしたときでした(検索語は失念)。「きょうのことばメモ」と名付けられたそのブログはちょっと変わった角度からの日本語分析が面白く、その後もたびたび訪問しては記事を読んでいました。本書はブログからリンクされていた飯間氏のホームページ「飯間浩明のことばのページ」を拾い読みしているときに偶然見つけたものです。

本書での飯間氏は決して今の日本語を嘆いているわけではありません。本旨として、時代を生きる言葉がいつ生まれ、どのように変化してきたのか、その発生や過程、必然性について著者なりの考えを述べてはいますが、押し付けがましいところは一切なく、むしろ読者と共にその面白さを共有しようという姿勢が窺えます。言語研究家が主観丸出しで批判めいた持論を展開している著書が多い中、綿飴のような甘さと柔らかさを感じる文体は稀有な存在ですね。ただ本書の性格上、括弧や棒線が多く、スムースに読み進められないところが唯一の欠点かな(笑)。


きょうのことばメモ:
http://yeemar.seesaa.net

飯間浩明のことばのページ:
http://www.asahi-net.or.jp/~QM4H-IIM/




教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書

2006-12-24 00:27:22 | Books
 
最近、新譜を聴きこむ時間がほとんどなく、アルバム・レヴューがご無沙汰になっています。それなりに腰を落ち着けてじっくり聴かないと書けない性分なもので、毎日何かしらの音楽を聴いている割には記事として仕上がりません(笑)。ただ本であればそんなに気合いを入れずとも通勤時間や休み時間などを利用して読み続けられるので、ブログで取り上げても違和感の無さそうなものは書き留めておこうと思っている次第です(笑)。

本書は一昔前なら「アングラ本」の一言で片付けられていそうな内容ですが「2ちゃんねる」や「ウィニー」といった言葉が日常的に聞かれるこの時代、ちょっぴり裏側から見たインターネットの雑学本として興味深い情報が得られる一冊です。今のネット界に辿り着くまでの軌跡が細部にまでわたり触れられており、全500ページのヴォリュームはかなり読み応えがあります。「あやしいわーるど」、「あめぞう」、「ワレズ」といった言葉に惹かれる好奇心の塊のような方以外にはお薦めしませんが、最近読んだコンピュータ関連の本の中ではなかなか面白かったので取り上げてみました(笑)。



カントリー&ウエスタン大好き / 東理夫 編

2006-12-23 13:02:41 | Books
 
今日(こんにち)でいう「カントリー・ミュージック」がまだ「カントリー&ウエスタン」と呼ばれていた頃・・・そんな時代に青春を過ごした八人のカントリー愛好家が思い入れたっぷりに「カントリー&ウエスタン」を語ります。編者である東理夫氏の呼び掛けで集まった執筆者たちは職種もさまざまで、それぞれが自由な切り口で思い思いに書いているところがこの本の面白さです。どちらかというとエッセイ風であり、決してカントリーの解説本ではないのでお間違えなきよう(笑)。本書の性格については東氏があとがきにて的確な表現をされているので参考までに引用しておきます。

この本は、いわばカントリー・ファンの思いのたけを表出した本と言えるだろう。ファンだからこその思いを、それぞれがそれぞれに書きしるしたもので、カントリー音楽の入門案内でもなければ批評集でもなく、ましてやカントリー音楽を振興するための提言の書でもない。ようするに、カントリー&ウエスタン・ミュージックへのラヴレターというところだろうか。
本書をウンウンと頷きながら読めるのはやはり 50代、60代の方々ではないでしょうか。僕のような若輩者はどちらかというと近代カントリーを聴いてきたわけで、思い入れのある時代に多少のズレがあることは否めません。しかし飾らぬ文章からは先輩たちのカントリーに対する一途な愛情がひしひしと伝わってきます。なかでも大宅さんの書かれた章は昭和の空気に満ちた日本をノスタルジックに浮かび上がらせており、僕のお気に入りです(笑)。

なんか読み終わって、幸せのおすそわけをしてもらったような気持ちになれる、そんな一冊ですね。


本書の執筆者:
片岡義男 / 大宅映子 / 菅原千代志 / 本山賢司 / 小坂一也 / 伏見威蕃 / 東理夫 / 島田耕



感動をつくれますか? / 久石譲

2006-12-18 00:44:57 | Books
 
久石譲氏は宮崎駿監督や北野武監督の映画でお馴染みの作曲家。映画音楽だけでなく CM 音楽も数多く手掛け、誰しも一度は久石節を耳にしたことがあるのではないでしょうか。僕にとっては Ennio Morricone や Georges Delerue と並び、長年聴き続けている最愛の映画音楽家の一人です。本書はそんな久石氏が自らの心の内を語った一冊。それは彼の半生を綴ったバイオグラフィーでも、膨大なディスコグラフィーの解説でも、はたまた長いキャリアの苦労話や裏話でもありません。もちろん経験談としてその手の話もチラッと顔を出しますから、ファンとしては聞き逃せない話ではありますが、本書の趣旨である「創造力とは何だろう」、「感性とは何だろう」といった哲学的な命題に真っ向から挑み、彼が人生を通して学んだことを一人の人間として語ってくれます。『角川oneテーマ21』というシリーズの一冊であることは、本書を啓蒙的な内容であると思わせるかもしれませんが、押し付けがましいところは一切無く、「人はこうあるべきだ」ではなく「私はこう生きている」という久石氏の考えが述べられているに過ぎません。感性の近い人は共感するでしょうし、そうでない人はそういう考え方もあるのかという捉え方でいいのではないでしょうか(僕自身、賛同できる部分とそうでない部分の割合は9:1くらいでした)。文章は彼の音楽ほど完成されておらず、決して物書きとして優れているとは思いませんが、彼の生み出す音楽同様、人間臭くそして温かい語り口につい惹き込まれてしまいました。

読み終えて、彼の音楽だけでなく『久石譲』という一人の人間としてもますます興味を持ちましたね。また「今の自分の舵取りは決して間違っていない」という強い後押しともなりました。彼のファンだけでなくクリエイティブに生きる多くの人に読んでもらいたい一冊です。タイトルの「つくる」という動詞にあえて「作・造・創」という漢字を当てなかったのはクリエイティブな世界を限定的に捉えたくないという久石氏の気持ちの表れでしょうか。



アイリッシュ・ミュージック・ディスク・ガイド

2006-12-16 13:38:01 | Books
 
最近、プライベートで聴く音楽がすっかりケルト一色になってきました(・・・ってプライベート以外で音楽を聴くような職業に就いているわけではないんですが/笑)。例年、秋から冬にかけてトラッド系を聴くことが多くなるので自分にとっては自然な流れかもしれません(笑)。家にはまだ MP3 化していないケルト系のアルバムが結構あるので、気になるものから少しずつリッピング作業をしています。ふと買いそびれたアルバムを思い出したりして、財布の中身とご相談といったところです(笑)。・・・とまぁこのまま書いていくと単なる近況報告で終わってしまうので、先日取り上げたしたケルト・ミュージックのガイドブック「アイリッシュ&ケルティック・ミュージック」の姉妹書ともいうべき一冊を紹介したいと思います。

本書はタイトルが示すとおり、アイルランドのトラッド・ミュージックを中心としたディスク・ガイドです。200字程度でまとめられたわかりやすいレヴュー付きで多くのアルバムが紹介されています。「グループ編」、「シンガー編」は「アイリッシュ&ケルティック・ミュージック」に近いフォーマットですが、「プレーヤー編」では、フィドル、アコーディオン&コンサティーナ、イーリアン・パイプ、ハープ、フルート&ホイッスル、ギター&ブズーキ、バウロン&ピアノ&作曲ほか、と細かく分けられており、アイリッシュ・トラッド・ミュージックで使われている楽器に興味を持ち始めたリスナーにとってはこの上ないガイドになっていると思います。お気に入りのアルバムに出会える確率がグーンと上がるのではないでしょうか。「アイリッシュ&ケルティック・ミュージック」同様に良書ですので、どこかでお見かけの際は是非ご覧になってみてください。



ブログ&掲示板 攻撃・防衛マニュアル

2006-12-10 12:31:01 | Books
 
店頭で偶然目にしたネット関連の本。物騒なタイトルですが、どこかを『攻撃』しようなんて気はさらさらありません(って当たり前か・・・笑)。ただ何か起きる前の『防衛』策としてこういう本を読んでおくのは無駄にならないと思います。

購入者を煽るような「第一部 攻撃編」と名付けられた章ではブログや掲示板を攻撃する者が良く使うワザが紹介されています。ネットワークのアーキテクチャやプログラミングといった技術的な側面からの解説はされておらず、そのほとんどは心理戦で優位に立つ方法や既製ツールの使い方に終始しています。攻撃者の視線で書かれた内容は読んでいてかなり不快です。「追い詰めてやれ!」的ニュアンスに嫌悪感を覚える人も少なくないでしょう(著者はこれを得意げにやっていたのでしょうかね)。こういう中途半端な知識はやみくもにいたずら目的の攻撃者を増加させるだけという気もしますが、それを知らずして防御の側にも回れないということで、やはり攻撃者の心理や手法も知っておくべきなんでしょうね・・・。

本書でのメインである「第二部 防衛編」ではネット社会と言えど『人』対『人』であることを踏まえ、攻撃者に対してソーシャル的に心理的にどう対応すべきかが論じられています(といってもそんな堅い内容ではないですが)。ネットというものに見えない恐怖を感じている方は「何が本当で何がウソなのか」、「攻撃やいたずらの目的がどこにあるのか」、そういったものを知る手掛かりとなるのではないでしょうか。スパム・クローラーのような自動化されたプログラムによるコメントやトラックバックならまだしも、実際の人間が行う悪意に満ちた行為の場合、それを解決するのは一筋縄でいかない場合が多いですからね。幸い僕はそういう目にあったことはないですが、人間関係のトラブルで閉鎖されたサイトやブログはいくつか目にしてきました。すべてのネット住人が正しいマナーを身に着けていればそういった悲しい結末を迎えることはないのでしょうけれど、現実世界と同様、それは単なる理想に過ぎません。ネット世界に潜んでいる悪意から自分を守るのはやはり自分ですし、本書がどうこうは別にして、「被害を最小限にとどめる術」、「トラブル発生時の連絡先機関」はしっかりと把握しておいたほうが良さそうですね。



アイリッシュ&ケルティック・ミュージック

2006-12-02 17:09:28 | Books
 
ケルト音楽に興味を持たれた方に是非読んでいただきたいお薦めの一冊。総数400枚に及ぶディスク・レビューを始め、アーティストのバイオグラフィーやインタビュー、コラムなど非常にわかりやすく丁寧に書かれており、ケルト・ミュージックの入門書・手引書として入門者からコアなファンまで十分に楽しめる内容です。発刊が1997年なのでディスコグラフィーとしては若干古い部分もありますが、実用においてほとんど問題はないでしょう。正直これ一冊あれば僕がブログでケルト音楽を取り上げる必要はないですね(笑)。値段も2000円と手ごろです。

「アイルランド編」を中心にスコットランドやフランスのブルターニュからアメリカやカナダのような離散先のケルト圏のアーティストまで幅広く取り上げています。アーティスト単位での紹介としては、

Altan, The Chieftains, Clannad, Davy Spillane, De Dannan, Donal Lunny, Dolores Keane, Mary Black, Patrick Street, Paul Brady, Sharon Shannon, Arcady, Christy Moore, Deanta, Dervish, Frances Black, Maura O'Connell, Nightnoise, Capercaillie, Dick Gaughan, Alan Stivell, Dan Ar Braz, Milladoiro, Loreena McKennitt, Runrig, Sileas, Tannahill Weavers, Seamus Egan / Solas, etc...

といった面々! 大御所 CHIEFTAINS を押さえてのトップ紹介が Altan というあたり、彼らが名実ともにケルト・ミュージック界最高峰のバンドであることを伺わせますね。それぞれにミニ・バイオとお薦めアルバムのレビューが掲載されていてアーティスト・ガイドとしては最適です。ピックアップ・アーティスト以外は 300字ほどにまとめられたアルバム単位のレビューとなります。当時までの重要アルバムはほぼ網羅された充実度であり、発刊後ちょうど十年となる来年あたり、新たな十年分のアルバムを追加した補訂版が出ると嬉しいんだけどなぁ(笑)。

本書は複数名の執筆者による共同著書になっており、編者として山尾敦史氏がクレジットされています。あとがきで山尾氏は「本書の中で自分が聴いたことのあるアルバムは87枚だった」と明かしており、自分のことを「門前の小僧状態」と表現されています。僕もざっと数えたところ持っているのは三分の一くらいでしたから、そういう意味ではまだまだビギナーですね(笑)。まあディスコグラフィーの完全制覇が目的ではないですし、何でもかんでも聴けばいいというものではないですが、400枚というアルバムのレビューは聴きたいと思わせるアルバムの発見に事欠かないでしょう。今回、久しぶりに読み直してみて、また何十枚も聴きたいアルバムが出てきてしまいました(笑)。

わたくしごとになりますが、実はこの本に執筆者として参加されている茂木健氏、大島豊氏、白石和良氏のお三方には学生時代にお会いしたことがあるんです(人柄は異なると思いますがシーンへの貢献度を考えると HR/HM 界での伊藤正則氏や和田誠氏のような位置付けをされる方々だと思います)。またしても昔話になりますが、当時はまだインターネットなどは普及しておらず、ケルト・ミュージック関連のアルバムは主に「タムボリン」という通販ショップを利用していました。とある号のカタログに「トラッド新譜試聴会」なるものの開催が告知されていまして、これが僕の気を惹いたんですよね。当時住んでいた家から一時間半くらいで行ける距離だったこともあり、単身参加することを決意しました。どこか広い部屋でオーディオ・システムに囲まれ音楽を聴くようなスタイルを想像していた僕は八畳くらいの部屋にミニコンポ、エアコン無しのマイ団扇持参といったまるで友達の家に集まっているかのような光景にちょっぴり戸惑ってしまいました。しかも参加されている方は互いにお知り合いのようで、集まった十人くらいのうち、単独参戦していたのは僕を含めて二人だけでした。最初は慣れない環境の中「自分は場違いだったのか?」と不安にもなりましたが、会が進むに連れ、徐々にリラックスできるようになり、僕は流れる音楽とそれについて語られる会話に耳を傾けるようになりました。とにかく集まった方の知識の豊富さに感心しきりだったのですが、後から思えば参加者の顔触れが顔触れだけに当然ですよね(笑)。試聴会終了後は近くのファミレスで軽食を取って解散となり、実はそのときにお三方の素性も明らかになったというわけです。十年以上昔のことですし、三氏はもうこのことを覚えてらっしゃらないと思いますが、僕にとっては学生時代の忘れられない思い出の一つです(笑)。



ああ懐かしのゲームブック・・・

2006-08-20 00:05:07 | Books
 
夏休み中、段ボールの中を整理していたら、こんな本が出てきました。僕が子供の頃、ちょっとしたブームになったゲームブックというものです。時代の流れでしょうか、今ではほとんど見かけなくなりました。ご存じない方のために二三説明をしておきますね。

実はこのゲームブック、ひとたび本を開くと魔可不思議、あなたの魂は本の中へ吸い込まれ、気が付けばそこは見知らぬ世界・・・というのは冗談(笑)。確かにそういったファンタジーの世界を題材にしたストーリーが多いのは事実ですが、本自体はパラパラとめくってみても普通の小説と同様に文字が書かれているだけで、一見何の変哲もないように思えます。ただ一つ異なるのは、本文はパラグラフ(段落)ごとにランダムに並べ替えられ、番号が振られているという点です。それぞれのパラグラフの終わりにはストーリーの分岐が用意されていて、これらは次に読むべきパラグラフの番号を示しています。読み手は自身の意志でストーリーを選択し、読み進めていくことになります。言うなれば、アドベンチャー・ゲームの活字版といったところですね。

そんなゲームブックが流行った背景には、ほぼ同時期にヒットしたドラゴンクエストの存在が大きかったと思います。プレーヤー自身が主人公となりファンタジーの世界で活躍する・・・「本」と「ゲーム機」という違いこそあれ、同じように擬似体験ができる両者に共通点は多く、子供心にワクワクしたものです。今でこそ、ポータブル・ゲーム機が普及し、室内でのゲーム環境をほぼそっくりそのままアウトドアに持ち出せるようになりました。しかし当時はまずそんなことは考えられませんでしたから、いつでもどこでも手軽に楽しめるゲームブックは時代のニーズに合っていたのかも知れません。

ちなみにこの「魔法使いの丘」はゲームブックの生みの親 Steve Jackson が書いたソーサリーと呼ばれるシリーズの第一巻で、以降「城砦都市カーレ」、「七匹の大蛇」、「王たちの冠」と続く四部作となっています。

今ではゲームブックなんて、ほんの僅かな世代の想い出にだけ残る存在になってしまったのかも知れませんね。ちょっぴりグロテスクな John Blanche の挿し絵にドキドキしながら世界に浸っていたあの頃が懐かしいです(笑)。



牢屋でやせるダイエット / 中島らも

2006-07-19 22:27:08 | Books
 
中島らも氏って人が持つ心の弱さを包み隠さず、自分自身に対して正直に生きる人だったんでしょうね。読み物としては「今夜、すべてのバーで」の方が面白かったですが、留置所に拘束されてから自身の人生哲学が変化していく様をリアルに綴ったドキュメントは、らも氏独特の語り口も相まって、なかなか読み応えがありました(タイトルに騙されてはいけません! 決してダイエット本ではありませんよ/笑)。

らも氏の哲学はらも氏自身のものであり、僕にとっては客観的でしかありえませんが、それでも何かしら共感できる部分を見つけたり、そうでない部分を感じたりと、ある程度の距離感を保ちながらも、自分との比較を楽しみながら読み進めていったように思います。もう何年か前に出会っていたら、また違った感想を持ったかもしれません。もっと主観的に捉えていたような気もします。こういうのは読み手が置かれている心境にも拠るでしょうね。

「僕には僕の生き方が、らも氏にはらも氏の生き方が・・・」

らも氏の言わんとしていることは、今の自分にとっては既に答えが出ている部分でもあり、ことさらに何かが揺らいだりということはありませんでしたが、それでも他人の生き方を知ることは自分の生き方を振り返るいい機会になりますね。


P.S. 何か「らしくない」ことばかり書いちゃいましたが、僕の中に僅かに存在する真面目サイドも少しはね(笑)。

今夜、すべてのバ-で / 中島らも

2006-07-09 11:14:01 | Books
 
lynette さん、YUZI さん、お薦めの中島らも。今回は YUZI さんのコメントでタイトルの挙がった「今夜、すべてのバーで」を読んでみました。一言で言えばアル中患者の入院生活を描いた作品で、下戸の僕にとっては別世界のお話なんですが、これがなかなか面白かったです。おそらく本人の実体験を基にしているからなんでしょう。必要以上に恐怖を煽ることも無く、淡々と綴られる日常が逆にリアリティを感じさせます。以前に同氏の「僕に踏まれた町と僕が踏まれた町」というエッセイ集を読んだことがあるのですが、らも氏の自伝でもあるこの作品には「今夜、すべてのバ-で」に近い内容の話もいくつか取り上げられていました。そのせいでしょうか、本作はフィクションですが、僕自身は主人公の小島容を中島らも氏に置き換えて読んでいたように思います(笑)。


以下引用:


薄紫の香腺液の結晶を、澄んだ水に落とす。甘酸っぱく、すがすがしい香りがひろがり、それを一口ふくむと、口の中で冷たい玉がはじけるような‥‥‥。アルコールにとりつかれた男・小島容が往き来する、幻覚の世界と妙に覚めた日常そして周囲の個性的な人々を描いた傑作長篇小説。吉川英治文学新人賞受賞作。


もの言えぬ証人 / アガサ・クリスティ

2006-06-10 14:06:47 | Books
 
アガサ・クリスティ・フェア '94-95 の帯が付いているので、もう10年以上前に購入した一冊です。当時はかなりのペースで小説を読んでいたなぁ・・・。学生時代は自由な時間がたくさんありましたからね(笑)。

例によってダンボールの中から掘り出した一冊で、初読気分で楽しめました。クロフツの緻密な描写の作品が続いたので、この先はクリスティのポップな感覚に浸ろうかと思っています。クロフツはプログレ、クリスティはメロハーといったところでしょうか(笑)。


以下引用:


富豪の老嬢エミリイが死んで、巨額の遺産の全部が、一介の家政婦に贈られた。彼女の死から二カ月ほどたったある日、一通の手紙がポアロのもとに届けられた。差出人はエミリイ。そこには自分がやがて殺されることを予感するかのような内容が・・・・・・老嬢の死と手紙との不思議な暗合に興味を抱いたポアロは調査に乗り出すが、関係者は虚偽の証言しかしない。苦吟するポアロを見つめる、もの言えぬ証人、白いテリアの秘密とは?

ABC 殺人事件 / アガサ・クリスティ

2006-06-03 08:31:25 | Books
 
70年以上も昔の作品だというのに、今の時代を描いているかのような狂気に満ちた事件。映画「羊たちの沈黙」がヒットした頃、日本では「FBI 心理分析官」といった犯罪者の行動心理を分析した類の本が流行り、かくいう僕も読者の一人でした。予告どおりに発生する連続殺人事件は臨場感に溢れ、ふとそんな実在した犯罪のことを連想させます。

とはいっても、そこはやはり「ポワロもの」。狂気そのものに焦点が当てられているわけではなく、大衆的な要素がふんだんに盛り込まれたクリスティらしい作品に仕上がっています。リアルタイムで進行する事件の緊迫感や緻密な設定に裏付けされた驚愕のトリックは「さすが!」と思わせる彼女の名作です。


以下引用:


今月の21日、アンドーヴァを警戒されたし --- ポアロのもとに送られてきた挑戦状どおり殺人は起こった。A の頭文字の老婆が撲殺されたのだ。つづいて第二、第三の挑戦状が届き、べクスヒルで B の頭文字の娘が、チャーストンで C の頭文字の紳士が殺された。しかも現場には必ず ABC 鉄道案内が残されていた。アルファベット順に殺人を繰り返す犯人の意図をポアロは必死につかもうとするが・・・・・・ミステリの女王全盛期の代表作


クロイドン発12時30分 / F.W.クロフツ

2006-05-28 02:05:29 | Books
 
もう一冊、クロフツものを読んでみました。「クロイドン発12時30分」は倒叙型と呼ばれる手法を用いた推理小説の代表作で「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」のように犯人側からの視点で事件が描かれます。名作と呼ばれるだけあって、読み応えのある作品でしたが、実を言いますと、最近ダンボールの中から見つけた一冊で、内容はおろか持っていることすら忘れていたんですよね~、ハハハ(笑)。


以下引用:


クロイドン飛行場を飛びたったパリ行きの旅客機が着陸したとき、乗客の一人、金持のアンドリュウ老人は息をひきとっていた。作者クロフツは冒頭のこの死亡事件から、いきなりフラッシュ・バックの手法で読者をひきもどし、犯人の目をとおして犯行の計画と遂行の過程をまざまざと示してくれる。犯人が用意したアリバイと犯行の手段は、いささかも人工のあとをとどめない完璧なものであった。探偵のがわから描く従来の本格作品に対立して、犯人のがわから事件の展開を描くという新手法による倒叙推理小説の代表的傑作。