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レベチラセタム(イーケプラ)の有害事象予測モデル、精神症状による治療中止リスクを予想

2019年02月21日 | 治療・予防など

Prediction Tools for Psychiatric Adverse Effects After Levetiracetam Prescription

日経メディカル 海外論文ピックアップ JAMA誌より  

レベチラセタム(イーケプラ)は抗てんかん薬として広く処方されているが、最大で16%の患者に有害事象としての精神症状が見られ、治療を継続することができない。カナダCalgary大学のColin B. Josephson氏らは、英国のプライマリケアデータベースを利用したコホート研究を行い、精神症状のリスク予測モデルの構築を試みた。結果は、JAMA Neurology誌電子版に2019年1月28日に報告された。

 著者らはまず、MEDLINEとEmbaseから、レベチラセタムの有害事象を報告している論文を検索して、予測因子の候補になり得るものをピックアップした。136件の論文が、レベチラセタムの有害事象と関連がありそうだと報告していたのは、熱性痙攣の病歴、てんかん重積状態、てんかん病歴の長さ、精神や行動問題の併存疾患、認知機能障害、だった。このほかに、著者が予測因子になり得る可能性があると考えたものを追加し、36の変数候補について検討することにした。

 候補の絞り込みはデルファイ法を用いた。中央値で10.5年の経験を持つ12人の専門医に、変数候補を1(まったく重要ではない)から5(極めて重要)までの5段階でスコア評価してもらった。スコアの中央値が4~5の候補は予測モデルに組み入れることとし、3は再検討に回し、1~2は除外するという作業を繰り返し、12個の変数を予測モデルに組み込む候補にした。

 コホート研究の対象は、英国の一般開業医を受診した患者を代表する人々の電子的医療記録を登録しているThe Health Improvement Network(THIN)に、2000年1月1日から2012年5月31日までに登録されていた119万4182人だ。このうち最大12年間の追跡期間中に7400人がてんかんと診断され、うち1173人(16%)が初めてレベチラセタムの処方を受けていた。それらの患者の年齢の中央値は39歳(四分位範囲は25~56歳)で、50.3%が女性だった。

 レベチラセタムの処方開始から2年間に精神症状を経験したのは165人(14.1%)、精神症状がなかった対照群は1008人(85.9%)だった。処方開始から精神症状の診断を受けるまでの期間の中央値は5.7カ月(四分位範囲2~11カ月)だった。有害事象として多く報告されていたのは、うつと行動障害だった。精神的有害事象の発症率のピークは2004年の22.6%で、その後は8.0~18.2%の間で変動していた。

 12個の変数のうち、単変量解析で精神的有害事象と有意な関連があるとみなされた要因を、多変量解析に用いることにした。その結果、性別女性(オッズ比1.41、95%信頼区間0.99-2.01)、社会的剥奪レベルが高い(1.15、1.01-1.31)、抑うつ(2.20、1.49-3.24)、不安(1.74、1.11-2.72)、娯楽的な薬物の乱用(2.02、1.20-3.37)が精神症状の危険因子になり得ると判定した。

 タウンゼント指数を用いて社会的剥奪レベルを評価することは、日常診療の場では難しいことから、これを除いて、性別女性、うつ病歴、不安症歴、娯楽的な薬物の乱用からなる最終モデルを作製した。リスクスコア=-2.34+0.27×(性別女性)+0.82×(うつ病歴)+0.47×(不安症歴)+0.74×(娯楽的薬物の乱用)とし、危険因子を保有していれば1、なければ0とするとして算出した。たとえば、女性でうつ病歴を有する人の場合には-2.34+0.27+0.82=-1.25 で、レベチラセタムの有害事象としての精神症状が2年間に見られる可能性は、1/[1+exp(-1.25)]に基づいて22%となる。

 このモデルの予測能力は高く、Brierスコア(結果から予測値を引いた二乗の平均で、予測が全て外れると0、全て当たると1)は0.11だった。カットオフ値を0.10に設定し、モデルの精度をk=5分割交差検証により検討したところ、AUCは0.68(95%信頼区間0.58-0.79)になった。

 すべての患者を対象とした場合に、4つの危険因子を1つも持たない患者のリスクは8%で、1つ保有の場合には、どの因子を保有するかによって11~17%、2つ保有の場合には17~31%、3つ保有の場合には30~42%、4つ全ての保有する場合には49%だった。

 続いて、精神疾患の病歴がない人を対象にした精神症状の有害事象を予測するモデルも構築した。リスクスコア=-3.83+0.013×(年齢)+0.89×(性別女性)+1.16×(娯楽的な薬物乱用)+0.003×(レベチラセタムの1日用量)を用いると、Brierスコアは0.09になった。カットオフ値を0.14とし、k=5分割交差検証を行うと、すべての患者を対象とするモデルを用いた場合と同様の精度が見られた。AUCは0.72(0.54-0.90)だった。

 これらの結果から著者らは、この2種類のアルゴリズムは、日常診療においてレベチラセタムを処方するかどうかの判断や用量調整、患者に対するカウンセリングに役立つと期待されると結論している。

 

コメント:

この評価は、主に成人を対象に実施されていて、小児で発症するドラベ症候群の患者に適した評価方法ではありません。あくまで参考とされて下さい。

上記のアルゴリズムを計算するための「エクセルファイル」は、必要に応じて、Googleドライブでダウンロードして使用いただけるように公開します。
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