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特集 抗てんかん薬Update (日経 Drug Information)

2017年03月08日 | 治療・予防など

医療従事者向けのサイトですが、日経のDrug Informationに抗てんかん薬Updateが特集されているので、要点を簡単に紹介します。

1.この10年で新薬が10剤承認 転換期を迎えたてんかん薬物療法

日本で承認のある抗てんかん薬は2006年以降の約10年間で10剤が増え、治療の選択肢が増えている。

単剤療法にも使える新規の抗てんかん薬もあることから、治療開始時の選択肢も増えた。

日本神経学会の『てんかん治療ガイドライン』は2010年に発表されたもので、追補版も発表されているものの、一部の新規抗てんかん薬に関する情報が限られている。

ガイドラインでの薬剤も複数の選択肢が提示され、医師によっても処方内容が異なる。

表1 承認されている主な経口抗てんかん薬

 

2.てんかん治療薬はどのように選ぶか

治療薬を選択する際の大切な要素はてんかんの病型、発作のタイプ、合併症、併用している薬剤、患者の年齢、性別、妊娠の可能性等

薬剤の作用機序

抗てんかん薬の主な機序としては、大きく分けて下記の3つ
(1)Na+チャネルやCa2+チャネルを阻害することでイオンの細胞内への流入が抑制され、神経細胞が過剰に興奮しないように作用する
(2)興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体を不活性化することで、興奮性神経伝達系を抑制する
(3)抑制性神経伝達物質であるGABAの受容体に作用し、抑制性神経伝達系を増強する

図1 主な抗てんかん薬の作用点

一般に抗てんかん薬は複数の作用機序を持つため、主要な作用機序が異なる薬剤を追加することで治療効果が得られる可能性が高くなると考えられる。

一方で、抗てんかん薬の作用機序は完全に解明されていないため、必ずしも理論通りにはならないこともあり、過去の知識や経験を踏まえて治療薬が選択される。

参照:ドラベ症候群の患者で使用を避けた方が良いとされる抗てんかん薬・抗てんかん薬の作用機序

妊娠の可能性

てんかんは治療で発作がコントロールされても、生涯にわたり服薬しなければならない患者が少なくない。

妊娠可能な年齢の女性に対してだけではなく、将来的に妊娠する可能性がある女児に対しても、いつ妊娠するか分からないことや、妊娠を希望して抗てんかん薬を変更する際の社会生活への支障を避けるため、胎児に影響のある抗てんかん薬を最初から避けておくとの考え方もある。

相互作用

抗てんかん薬の相互作用によって血中濃度が変化したり、てんかん以外の併存疾患への併用注意等

 

3.てんかんとはどんな疾患?

発作タイプと原因で4つに分類

発作の原因となる異常な放電が脳の一部分から起こっていれば部分発作、脳全体で一斉に起こっていれば全般発作。

脳内に何らかの障害が認められる症候性と、構造的な病変が認められずチャネル異常などが原因と推測される特発性。

 

 

4.薬剤抵抗性患者に期待される新機序薬

ビムパット(ラコサミド)
Na+チャネルにおいてNa+が通過できない状態にする(不活性化させる)ことで抗てんかん作用を発揮する。
その機序には作用時間によって、「急速な不活性化」(数ミリ秒のレベル)と「緩徐な不活性化」(数秒以上のレベル)の2つのタイプがあり、これまでの同効の抗てんかん薬は全て「急速な不活性化」を促進する薬剤であり、ラコサミドが「緩徐な不活性化」を促進する初の抗てんかん薬。
「緩徐な不活性化」はNa+チャネルが再び開くまで時間が掛かるため、神経細胞の興奮を抑制する作用が強いと考えられている。

フィコンパ(ペランパネル水和物)
ペランパネル(フィコンパ)は、シナプス後ニューロンに存在するAMPA型グルタミン酸受容体に対する選択的な拮抗薬で、グルタミン酸によるNa+の細胞内流入を抑制することで興奮を抑制する新しい機序の薬剤。
AMPA受容体はイオンチャネル共役型受容体の非NMDA受容体の1つだが、この非NMDA受容体にはAMPA受容体の他にカイニン酸受容体があり、そこに作用する抗てんかん薬としてトピラマート(トピナ)がある。

 

5.てんかん治療薬の使い方はここに注意!

イーケプラ(レベチラセタム)
レベチラセタム(イーケプラ)は、ニューロンのシナプス小胞蛋白2A(SV2A)における神経伝達物質の放出を調節する、他の抗てんかん薬とは異なる作用機序を持ち、肝での薬物代謝酵素の誘導がなく蛋白結合率が低いため、相互作用が少ない。
投与初期に眠気やいらいら感を訴えることがあり、眠気や精神症状が強く発現することがあるため、半量から開始する場合もあり。
初期用量で発作を抑制できることもある。

ラミクタール(ラモトリギン)
重症薬疹が起きないよう、ゆっくり増量することが重要。
また、皮膚粘膜眼症候群(SJS)や中毒性表皮壊死融解症(TEN)といった重篤な皮膚障害に注意が必要。
ラモトリギンによる皮疹は投与開始から8週以内に出ることが多い。
また、発疹に加え、38℃以上の発熱、眼の充血、まぶたの腫れ、口唇・陰部のびらん、咽頭痛といった症状が現れるなどの、重篤な皮膚障害になる恐れがあるため、症状を具体的に説明し、気付いたらすぐに医師か薬剤師に相談。

テグレトール他(カルバマゼピン)
ラモトリギンと同じく重篤な皮膚障害に注意が必要。
早期発見が重要であり、症状に気付いたらすぐに医師か薬剤師に相談。
特に低体重の患者では初期に血中濃度が高くなり、めまいや眠気などが出る場合があり、自己中断せずに、必ず医師と相談。
グレープフルーツとの相互作用により、カルバマゼピンの血中濃度が約40%上昇したとの報告があるので、グレープフルーツを食べないようにする。
オレンジには相互作用がないので、食べたり飲んで構わない。

セレニカ、デパケン他(バルプロ酸ナトリウム)
催奇形性や子どもの知能低下などのリスクが指摘されているため、女児や妊娠可能な女性には使用を控える医師もいる。
カルバペネム系抗菌薬と併用禁忌。
徐放製剤のデパケンRは便に薬剤が溶け出した後の抜け殻(ゴーストピル)が排泄されるが、効果に影響はない。

 


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