SMEI / ドラベ症候群 / 重症乳児ミオクロニーてんかん について

SMEIの診断を受けた長男に関連して調べたことたち

ドラベ症候群に関するレビュー記載のまとめ

2015年12月19日 | ドラベ症候群とは(まとめ)

ドラベ症候群に関するレビュー記載のまとめ

概要:
ドラベ症候群は最も重篤な小児の遺伝性てんかんのひとつであり、Charlotte Dravetが1978年に乳児におきる重症ミオクロニーてんかんを記述した(1)。
1歳未満に発症し、全身強直間代発作や半身性間代発作を繰り返し、発熱誘発痙攣、痙攣重積を伴いやすい(5)。
薬物治療に抵抗性であり、1歳過ぎると発達遅滞や運動失調が出現する(5)。
ミオクロニー発作や欠神発作を伴うこともある(5)。 
異型ドラベ症候群は境界型乳児重症ミオクロニーてんかんと呼ばれ、ミオクローヌスを伴わない類似した臨床所見、脳波所見をきたす(1)。
ドラベ症候群の発生頻度は、乳児のてんかん症例の約3-6%で、乳児全体の4万人に1人以下である(1)。
日本国内での患者数は約3000人と推計される(5)。
症例の多くはSCN1A mutationがあり、稀にGABARG2 や SCN1B 遺伝子等に変異を認めることがある(1)。
 

原因・病態:
先天的なナトリウムチャネル遺伝子SCN1A異常によるGABA作動性介在ニューロンの機能障害が原因と考えられている(2)。
SCN1A遺伝子のヘテロ変異を75%に、微小欠失を数%に認める他、稀にSCN1B、SCN2A、GABRG2 遺伝子変異の報告もある(5)。
遺伝子の変異はde novo(非遺伝性)のものが大半であるが、遺伝的変異もまた約5%に報告されており、兄弟や姉妹の発症の原因となる(3)。
繰り返す痙攣発作や抗てんかん薬の多剤併用が精神運動機能提帯・退行に関連すると考えられてきたが、 ナトリウムチャネル遺伝子SCN1A異常によるGABA作動性介在性ニューロンの機能障害自体により自閉性発達障害が引き起こされる可能性が本症動物モデルで示唆されている(2)。


発症・症状・経過:
乳児期に入浴や発熱等をきかっけに全般性もしくは片側性の(強直)間代発作で1歳未満に発症する(2)。
発熱,入浴で誘発されやすく、その際には長時間の発作を起こしやすい(2)。
初発の発作は基本的に1歳までに生じ、1歳以降に生じたとする報告が数例あるのみ(3)。
たいてい、患児は0歳では正常に発達するが、1-4歳で、難治性の多様なてんかん(強直発作は稀)や精神運動発達遅滞、運動失調、多動をきたす(1)。
脳波は単焦点または多焦点性のてんかん波を示し、光過敏性を示すことがよくある(1)。
睡眠障害が良く見られ、不眠20%、途中覚醒28%、夜間のけいれん50%、睡眠時無呼吸52%等を認める(1)。
 

治療:
ひとつの効果的な治療方法はない(1)。
発作の予防的な方法として、入浴は小さな子供では避けるべきであり、サングラス等の光やパターン刺激過敏を緩和する方法があれば、有用かもしれない(1)。
発熱疾患を積極的に解熱させることの有用性はよく分かっていない(1)。
一般的に、利用できる抗けいれん薬の効果に関する、対照臨床試験は行われていない(1)。
多くの抗けいれん薬は効果がなく、カルバマゼピンやビガバトリンはミオクロニーてんかんを誘発さえするかもしれず、特に若い患児でのラモトリギン等、誘発有害事象が生じるかもしれない(1)。
カルバマゼピン、ラモトリギン、フェニトインについては発作を悪化させる可能性が報告されている(2)。 
カルバマゼピン、ビガバトリン、ラモトリギンはミオクロニー発作を誘発、フェニトインは舞踏病アテトーゼを誘発する可能性(6)。
大きくなった患児には、複数の治療は避けるべきであり、それぞれの抗けいれん薬の特異的作用を考慮すべきである(1)。
ドラベ症候群に対して治療的価値があることを示している抗けいれん薬は、バルプロ酸、レベチラセタム、ゾニサミド、トピラマートであり、特にスティリペントール単剤での治療効果が十分でない患児に用いられる(1)。
スティリペントールは新しい抗けいれん薬であり、クロバザムとバルプロ酸の治療に難治性全般性強直間代性痙攣を示すドラベ症候群の患児に追加する方法で、2007年1月に欧州で承認された(4)。
スティリペントールのドラベ症候群に対する効果はプラセボと比較して70%程度までであり、これは期待できる結果に思われる(1)。
他のドラベ症候群に用いられる治療方法には、迷走神経刺激、ケトン食、臭化剤、免疫グロブリン、ステロイド等があるが、先行する報告のほとんどは、ケーススタディであったり非対称試験である(1)。
日本においては従来臭化Kを軸としてバルプロ酸、ゾニサマイド、クロナゼパム、クロバザム等を併用していたが、最近、新規抗てんかん薬の導入が進み、欧米で使用されているスチリペントールを軸としてバルプロ酸とクロバザムを併用する治療法が普及してきている他、トピラマートやレベチラセタムなどによる治療も試みられている(2)。

予後:
治療により痙攣重積の減少、各種てんかん発作の減少が期待できるが、完全に治癒することはない(5)。
極めて効率に知的障害、運動失調、発達障害を伴い、成人期に自立した生活を送ることは稀である(5)。
過去の報告では、致死率が3.7%、平均死亡年齢は4.6歳(10か月~17歳)と報告されてきた(1)。
最も多い死亡年齢は2歳であり、死亡原因は予期しないけいれんによる突然死が61%、てんかん重積が32%だった(1)。
稀にケトアシドーシス、けいれんによる事故でなくなることもある(1)。
性別、出生国等に死亡との有意な関連性はない(1)。
2009年における致命率は年間2.3-4.9%の範囲である(1)。
近年では、思春期までの死亡率が約10%、突然死や急性脳症による死亡率が高いとする報告がある(5)。 
 

引用:

  1. Dravet syndrome, what is new? Neurosciences (Riyadh). 2013 Jan;18(1):11-7.
  2. 日本小児神経学会 乳児重症ミオクロニーてんかん
  3. Textbook dravet syndrome (Charlotte Dravet et al)
  4. ディアコミット添付文書(スチリペントール / Stiripentol)
  5. ドラベ症候群(厚生労働省)
  6. SCN1A-Related Seizure Disorders. GeneReviews.
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 障害者差別解消法について | トップ | 臭化カリウム »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ドラベ症候群とは(まとめ)」カテゴリの最新記事