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米国での医療用大麻合法化と違法使用・障害の関係性

2017年05月31日 | 治療・予防など

米国では医療用大麻を合法化する州が増え、ドラベ症候群に大麻成分であるカンナビジオールが有効との報告もある昨今ですが、大麻の合法化が与える社会全体での悪い影響に関する報告も出ているので紹介します。

US Adult Illicit Cannabis Use, Cannabis Use Disorder, and Medical Marijuana Laws 1991-1992 to 2012-2013

背景:
2016年11月までに、米国の28の州で医療用大麻を合法化する法案が議会を通過、成立しているが、米国の成人では過去25年間に、大麻の違法使用と大麻使用による障害が増加している。大麻使用は、機能障害、自動車事故、救急部門受診、精神疾患、依存などのリスクを上昇させるが、医療用大麻の合法化が、大麻の危険性に対する警戒心を薄れさせている可能性がある。著者らは、医療用大麻の合法化が、大麻の違法使用や使用による障害の有病率を増加させているかどうかについて検討することにした。


方法:
米国の18歳以上の人々を対象とする3回の横断的調査に参加した、それぞれ4万1764人、4万1184人、11万8497人のデータを用いて、大麻が合法化された州に住む人々とそれ以外に住む人々の、違法使用と使用による障害の有病率の経時的変化を比較。
なお、合法化州のうち、カリフォルニア州とコロラド州は、他の州と条件が異なるために、別個の分析も実施。
カリフォルニア州の場合は、1996年に合法化法案を通過させたが、その時点で同州の大麻使用率は他の州を大きく上回っていたため、合法化の影響は小さかった可能性があった。また、コロラド州は2000年に合法化したが、2009-2010年に方針を変化し、医療用大麻の処方を容易にしたため、医療用の大麻の使用申請は月に500件から1万件にまで増加していた。
主要評価項目は、過去1年間の大麻の違法使用と大麻使用による障害とし、3回の調査で用いた質問票に対する個々の参加者の回答に基づいて、有無を判断。
大麻違法使用者は、処方箋なしでの使用が12回以上あった人とし、DSM-IVの大麻使用による障害は、濫用と依存性を併せた場合とした。
共変数として、性別、年齢、学歴、人種、配偶者の有無、居住地域、貧困度などに関する情報も得た。違法使用と障害は、差分の差分分析(Difference-in-differences test)を行った。


結果:
調査期間全体となる1991-1992年から2012-2013年までの間に、違法使用の割合は、合法化した15州では3.6%、非合法化24州では2.2%増加しており、合法化州の方が有意に増加していた(P=0.004)。大麻使用による障害も合法化州は1.6%、非合法化州では1.0%増加しており、合法化州の方が有意に増加していた(P=0.03)。

前半期については、合法化州とカリフォルニア州をまとめて分析すると、違法使用の有病率に有意な変化は見られなかった。
また、非合法化州では1.7ポイント低下していたが、差は有意ではなかった。この間の使用による障害の有病率には変化はなかった。

カリフォルニア州を分離すると、1991~1992年時点の違法使用と使用による障害の有病率は、他の前半期合法化州が4.49%、カリフォルニア州は7.59%で、後者で有意に高く(P=0.001)、使用による障害もそれぞれ1.15%と2.08%で差は有意だった(P=0.02)。カリフォルニア州では前半期に、違法使用と使用による障害の両方が減少していた(それぞれ1.7ポイントと2.0ポイント低下)が、この変化は有意ではなかった。

カリフォルニア州以外の5つの前半期合法化州では、違法使用と使用による障害の有病率は有意に増加していた。前半期合法化州と非合法化州の間で、違法使用(2.5%、P=0.004)と使用による障害(1.1%、P=0.02)の変化幅の差は有意だった。

後半期には、全体として、違法使用と使用による障害は増加していた。非合法化州でそれぞれ3.5ポイントと1.0ポイント、カリフォルニア州では5.3ポイントと2.0ポイント、コロラド州で7.0ポイントと2.7ポイント、その他の前半期合法化州は2.6ポイントと0.1ポイント、後半期合法化州は5.1ポイントと1.7ポイントだった。非合法化州の違法使用をリファレンスとすると、後期合法化州(P=0.01)、カリフォルニア州(P=0.04)、コロラド州(P=0.03)で有意に増加していた。同様に非合法化州の障害有病率をリファレンスにすると、カリフォルニア州(P=0.06)、コロラド州(P=0.04)で有意に増加していた。

違法使用と使用による障害の有病率の増加幅は合法化州で大きかった。1991~2012年の間に人口やその分布が変化しなかったとすると、合法化により違法使用者110万人と使用による障害者50万人の増加に寄与したと推定され、それらの人々の健康転帰を予想すると、公衆衛生上深刻な問題であると考えられた。


結論:
医療用大麻の合法化は、違法使用者と大麻使用による障害患者の有病率の増加に寄与しており、治療として一部の患者に利益をもたらすものの、州法を変更する場合は医療従事者と一般市民の両方が影響を考慮すべき。

 

私的コメント
大麻の合法化は良い面もありますが、多くの場合は、てんかんの治療薬としてではなくて、鎮痛薬として用いられるので、不適切な使用による悪影響も指摘されているように思います。難治性てんかんの患者とその家族には、有効な治療の選択肢が増えることは歓迎されるべきことであると思いますが。

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