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米国における大麻成分を利用した抗てんかん薬、エピディオレックス(Epidiolex)の開発状況について

2016年03月19日 | 治療・予防など

マリファナ(大麻)に含まれる化学物質のカンナビジオールを用いてドラベ症候群患者を治療する、新しい薬剤の開発が米国の臨床第三層試験(製造販売承認を得るために必要な試験の最後の段階の試験)まで進み、開発企業が治療の有効性を証明するデータが得られたことを公表したというニュースです。

米国では大麻に対する取り扱いが州によって異なり、大麻成分による治療を求めて移住する難治性てんかん患者の家族もいるとされます(米国ではスチリペントールは承認されていません)。 

難病の子供を救う「大麻薬品」企業 株価130%急伸(Forbes 2016/03/17)

大麻を利用した新薬開発に取り組むGW Pharmaceuticals社が2016年3月14日、重度のてんかんを患う子供たちの発作にカンナビノイド薬「エピディオレックス(Epidiolex)」が有効であることを、120人を対象とした臨床試験結果で明らかにした。これを受けて同社の株価は130%急騰。88ドル94セントの値をつけた。

アメリカでは嗜好品としての大麻も産業化しつつあるが、上場企業として大麻薬品の開発に取り組むGW社は突出した存在。同社はナスダックに上場し、多発性硬化症の治療用の大麻薬品「サティベックス(Sativex)」を商品化し、米国以外の28ヶ国で医薬品として承認を得ている。また、重度のてんかん治療に向けた4つの臨床試験が最終段階を迎えている。

今回の「エピディオレックス」は、ドラベ症候群という1歳未満の乳児が発症する難治性てんかんの治療を目的に開発された。この薬品を投与された患者は、発作を起こす回数が平均して39%少なくなった。

GW社によれば米食品医薬品局(FDA)の承認を得るにはまだいくつか段階を踏む必要があるが、エピディオレックスはアメリカで初めて大麻を使用した初の処方薬となる可能性もある。

GW Pharmaceuticals Announces Positive Phase 3 Pivotal Study Results for Epidiolex (cannabidiol)

臨床試験結果概要
試験は120名の患者を対象とした無作為化臨床第三層試験。
通常の治療薬にEpidiolex 20mg/kg/day投与を加えた群とプラセボ(偽薬)投与を加えた群を比較した。
平均して患者は3剤の抗てんかん薬を内服しており、4剤以上の抗てんかん薬を試し十分な効果が得られなかった。
患者の平均年齢は10歳で、3割は6歳未満だった。
1月あたりのけいれん発作頻度の中央値は13回だった。
治療効果判定指標はベースラインとしての4週間の観察期間と比較した、Epidiolex追加群とプラセボ追加群における治療開始後14週間の1月当たりのけいれん発作頻度の変化率とした。
この試験では、プラセボ群でけいれん発作が1月に13%減少したのに対して、Epidiolex投与群では有意差をもって39%(p=0.01)けいれん発作が減少した。
治療効果の違いは治療開始1月目から生じ、全研究期間維持された。
全般的にEpidiolexは認容性があり、プラセボと比較して10%以上の発生頻度が報告された有害事象は、眠気、下痢、食欲低下、疲労感、発熱、嘔吐、無気力、上気道感染症、けいれんだった。
Epidiolexを内服した患者で報告された有害事象の84%が軽度から中等度のものであった。
重篤な有害事象の報告は、プラセボを内服した患者群から3名に対して、Epideolexを内服した患者からは10名と多かった。
有害事象で治療を中断した患者数は、プラセボを内服した患者群から1名に対して、Epideolexを内服した患者からは8名と多かった。
更なる情報は医学論文や学会で提供される予定。
この最初の臨床第三層試験のほかに、GW社は150名のドラベ症候群患者に対して別の第三層試験を実施している。

私的コメント
米国でFDAによる製造販売承認が得られれば、国際標準薬剤として認知されるため、新薬の承認となればその影響は大きいだろう。
ただし、今回の発表は医学論文での発表ではなく、企業発表なので、最終的な評価は論文発表を待つ必要がある。
プラセボ内服群と比較した効果としては、研究デザインが異なるが、けいれん発作頻度を半数以上で50%未満にしたとするスチリペントール程のインパクトはないようにも思えるが、有効性を示す新たな薬剤のデータが報告されたことは非常に良いこと。
ただし、1:1の割合で無作為割り付けされたと仮定すると、60名のEpidiolex内服者のうち10名から重篤な有害事象が報告され、8名が治療を中断したという点は、他の薬剤の臨床治験と比較して有害事象の発症頻度が高い可能性もある。
更に詳しいデータと追加の試験結果に期待したい。

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