ガエル記

本・映画備忘録と「思うこと」の記録

「少年探偵団シリーズ」江戸川乱歩

2018-09-29 06:42:03 | 小説


先日NHK偉人たちの健康診断で「江戸川乱歩 なぜ人は怖いものを見たいのか」というのを放送していて、ちょっと驚いてしまいました。
というのは江戸川乱歩は好きで結構読んできたつもりだったのですが、「少年探偵団シリーズ」が乱歩さん作家歴の後期になって書かれたものだということに思い至らなかったのですね。
私自身子供時代には江戸川乱歩「少年探偵団シリーズ」を図書館で読破したはずだと思います。さすがに記憶がないですけど、図書館にずらりと並んでいて何度も読んだことは覚えていますし、中身の文章は大好きなのですが表紙が不気味で苦手でした。
そして自分が成長するにしたがって、大人向けの、というか本来の江戸川乱歩小説「孤島の鬼」「人間椅子」「屋根裏の散歩者」「陰獣」「芋虫」などを読みまくりました。

まさか、自分の読んだ順番で執筆されたと思いこんだわけではないでしょうが、ほら、マンガ家ってわりと少年少女向けを描いてから青年誌へ行く傾向があるじゃないですか。自分の中ではマンガ家の動向が一番わかりやすい基準だったので、乱歩さんも同じような過程を進んだと何とはなしに思っていたように思います。
というか、特別どちらが先に、と思ったりしたわけではないのでしょうが、TV番組の説明にびっくりさせられたことで自分がなんとなく思い込んでいたかも、と考えたのでした。

番組の説明を簡単に言うと、乱歩さんは数々の猟奇的異常性犯罪の物語を執筆してエログロ作家と評されるわけですが、実際に異常な犯罪が起きるたびに「犯人は江戸川乱歩のファンだった」「犯人は陰獣を愛読していた」と書き立てられたそうです。
この辺、現在犯罪が起きるたびに「犯人はオタクだった」「アニメ○○をよく見ていた」などと書かれるのと同じですね。しかしある事件の時「こんな異常な犯罪を犯したのは江戸川乱歩に違いない」と書かれたというのはさすがに現在ではあり得ないでしょう(と思うのですが…あり得るのか?オタクに違いない、というのはありうるのかも)
尚且つ「芋虫」が発禁になって乱歩さんへの依頼がなくなってしまったのでした。そんな時、声をかけてくれたのが雑誌「少年」の編集者で「ぜひ、うちで少年ものを書いてください」と言われ、まさかエログロ作家の私が?と戸惑いながらも書いた少年探偵団ものが人気を呼んだ、というものでした。

あんなエログロ作家に少年向け小説を依頼するなんて物凄い慧眼の編集者だ!とちょっと感動してネット検索で当時のことが上がってないかと探したのですが、乱歩先生の文章からしてもNHK番組の説明とはやや違うニュアンスのようでwつまり乱歩先生自身は「前々から少年ものを書きませんかと言われてて、僕の書くものは子供っぽいと思われたからだろうね、と思って書き始めてみたんだけど」というような感じのことを書かれているのがありました。
なのでTV視聴での感動はアレレと尻すぼみに終わってしまったのですが、どちらにしても好きだったくせに江戸川乱歩の経歴を全然見ていなかった(見たつもりになっていた)のが少しでも改善できてよかったと思います。

それにしても戦後の子供たちに乱歩さんの少年探偵団シリーズがあって本当によかったのではないでしょうか。主に男の子向けではありますが、男の子たちのやるせなさがあの探偵団ごっこで随分癒されたのではないかと思います。悲しいですけど。
私にしてもたくさん楽しませてもらいました。
無論のちにはエログロ作品にもはまりました。
乱歩の魅力は何と言っても昭和初期の魅力的な風俗の描写ですね。
よく「昭和」を振り返る、というので戦後の話が語られますが(まあ、それは時間的に当然なんですけども)私は昭和だったら戦前の昭和に惹かれます。良いところのイメージで、ってことですけどね。

乱歩さんは好きすぎて映画化されてもなかなか自分が描くイメージに映像が追い付かないで困ります。凄いほどの美男美女、異常性愛、今でも書かれていないほどの同性愛の描写、東京のイメージもとてもお洒落でまさに憧れの都会に思えます。


タイトルにした「少年探偵団シリーズ」から離れてしまいましたw

江戸川乱歩が「少年探偵団」を書いてくれたことは色々な意味で最高の贈り物でした。
様残な人間の闇を書いたのちに書かれた少年向けの物語。
それは大人向けの作品と全く違うものではないはずです。
上の方で大人向けを「本来の乱歩」と書きましたが、少年探偵団こそ本来の乱歩だったのかもしれませんね。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿