ガエル記

本・映画備忘録と「思うこと」の記録

「空海」佐藤純彌

2019-03-24 07:03:52 | 映画


wowowにて鑑賞。

「空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎」の放送関連でおまけ的に放送されたのかもしれないですが、見ることができてよかったです。
wikiを見ると佐藤純彌「空海」は当時(1984年・昭和59年)破格の製作費12億円が投じられ、弘法大師空海入定1150年を記念して全真言宗青年連盟映画製作本部が東映と提携して製作されています。
そういう大掛かりな映画というのは上映時には余計な雑音を感じてしまうものですが時間を経ると率直に見ることができるのではないかと思えます。

空海・弘法大師のほぼ一生を描いた物語なのでさすがに大味な感は否めませんがそれでも見ごたえのある作品でした。空海のキャスティングは最初、勝新太郎だったと書かれていてそちらの空海だったらどんな無茶苦茶な空海になっただろうかと想像してしまいます。
北大路欣也空海は癖のない本当に清らかな空海という印象ですが、小川真由美が演じる薬子を中心とした乱れた朝廷との対比になりとても良かったと思います。

富士山の噴火の際に怯えた男女が交わることで生き延びるさまを見た空海はそこに曼荼羅図を見る、という映像表現がなんともシュールで面白かったです。

空海、というと対照的に物語られるのが最澄になるのですがこの映画の中では相容れることはなくとも互いに尊敬し合う仲という関係で描かれていました。
政府から認められ身分の高い最澄が密教を極めた空海に礼をして師事を仰ぐ場面、そして最澄が亡くなった時に空海が思わずつぶやく「美しい星がなくなりました」という言葉が心に響きます。

空海が命がけで唐に渡り、20年かかるという密教を3か月で学びとるという過程が手際よく映像化されていました。3か月で梵語を学ぶといって字を書かれた紙を食べてしまうなどという表現です。

毎年氾濫する讃岐国の満濃池の堤防工事を「自分たちには作れない」としり込みする人々を鼓舞するために空海が不眠で祈りを捧げるのですが「昼夜働けば50日が100日になる」と言って説き伏せます。
病で「もう死なせて欲しい」という女性に「生きて極楽を見てこその人生ぞ」と励まします。

薬子を軸に乱れた朝廷に対し空海は「跡継ぎを我が子ではなく弟の子供にすると言ってください」と申し出ます。その為朝廷に絶えなかった争いがなくなり以後30年間穏やかな治世が続くのです。

最期、空海は弟子たちに見守られ「私は旅をしている 宇宙の根源に向かって旅をしている」と言い、入滅しました。

キリスト教を描いた作品が多い欧米に比べ日本は宗教作品が極端に少ないですね。
先日「日本人の幸福度がどんどん後退している」ことの理由に宗教をあげている人がいましたがこうした宗教映画で心が救われるえあれば制作すべきではないかとも思えます。
宗教、というとどうしてもすぐにオウム真理教などの怖ろしいイメージが湧いてしまうようですが、本来は心の拠り所となるものです。
良い方向を目指して宗教の作品が現れることもあっていいのではないでしょうか。

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