ガエル記

本・映画備忘録と「思うこと」の記録

闇金ウシジマくん ザ・ファイナル

2019-03-27 05:33:39 | 映画


原作マンガもドラマもこれ以前の映画も見ずにいきなりのザ・ファイナル鑑賞なのだけど理由は「平成史」で佐藤優氏が「この映画で原発の清掃の話が出てくる。金になるが2年で身体がぼろぼろになる」というのを読んで見たくなったのでした。

以下ネタバレです。(上もネタバレかもだけど)




上の文章の答えを言うと、実は「原発で清掃」(メルトダウンした原発、福島原発ってことですよね)というのは借金を抱えたウシジマくんの友人が最後そこへ行かされる、というとこで終わっていて実際そこで働く場面はなかったのでした。少しがっかりですが映画自体は予想を超えた面白さで驚きました。
というより全然面白いとかを期待してなかったし、こんなに感動して涙さえこみ上げるような映画だとは微塵も考えていなかったのでした。
他の方のレビューを見ると「今までで一番つまらない」という感想が結構多いようなんですね。前のをチラリとも見ていないのでその点については何も言えないのですがたぶん以前の作品はウシジマくんの闇金業者らしい徹底した冷酷な活躍が楽しかったのに本作はかなり抒情的な雰囲気になって求めていたものがなかった、ということなのでしょうか。
そう思ってしまうようなセンチメンタルな男たちの青春映画、という趣がある作品でした。
あまりに面白かったので機会があれば1から見ていきたいと思います。
「平成史」を読んでからタイミングよくwowowで放送していたので録画して見たのでした。ほんと偶然なタイミング。

且つ、闇金映画、という想像するだにエログロ満載の下劣な代物だろうと思っていたら他にないほど上品な演出だったのでそこも驚きでした。おぞましいグロテスク暴力のインパクトシーンは外されているし女性が裸になる場面も下着姿だったり胸を隠すなどの配慮がなされているしウシジマくんは人望の厚い優しい男だし、義理人情が満載だったりします。
周囲の人間たちから強く信頼され愛されているウシジマですが、本作でグッとくるのは当然ですが中学時代の友人竹本との友情です。
この竹本という男、まじで不思議な存在です。皆が「ウシジマ」「社長」と呼ぶ中でひとり「かおるちゃん」という呼び方をする。キリスト教系の映画であればキリストのイメージだとかの意味付けがあるかもしれないけど、そんな風にも思えない。むしろお釈迦様のようですらあります。
彼を主人公にしても良いくらいの人間性を持っているのですが、今現在の風潮としてはこの人間性は逆に白々しくなってしまうのかもしれない。「闇金」という物語の中のひとつのキャラクターとして置かれるのが適切な人間性なのかもしれません。

ですから奇妙ですが表舞台にいる「闇金」という闇の存在の裏返しとして人を救う竹本という光明のキャラが存在する。表が闇で裏に光があるというカラクリで物語が成り立っている。
しかも闇がこの世を生き抜いていくのに光は地獄へ落ちようとしている。
そんな現世を描いているかのように思えます。

何も知らずに言いますがこの映画監督はこのファイナルこそが作りたかったものなのではないかと考えてしまったりします。以前の映画を観ずに言いますが。

「おまえのしていることは砂漠に水を撒くくらい無駄なことだ」
「甲本っちが僕を見捨てずにかばってくれた。それでじゅうぶんだよ」

結局、真の勇者は竹本なのです。
ウシジマはそれを理解しています。
私はそう思いました。


ウシジマの中学時代を演じた狩野見恭兵が魅力的でした。
ウシジマの山田孝之は特に好きな役者ではありませんが、本作はとても良かったと思います。

ところで本作を観るきっかけとなった「平成史」の佐藤氏の発言ですが、今日になってネット検索したらその仕事は漫画掲載時はまだ震災が起きてないのであり得ないという説が。
そして原発より死体洗いのほうがあり得るという説で「あららら」でした。
まあそれでも思いがけず良い映画が観られてよかったです。
それでもなければたぶんこのジャンル観なかったと思うので。
とはいえ、マンガはそうかもしれませんが映画制作時点では原発清掃のイメージはあったかも、とは思います。

とにかく竹本が気になる存在でした。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿