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サブカルとサッカーの話題っぽい

【雑記】真央すごい、ヨナ超すごい

2010-02-24 | 雑記

[<五輪フィギュア>真央「滑る前に集中」…ヨナと金争いへ]
http://<wbr></wbr>vancouv<wbr></wbr>er.yaho<wbr></wbr>o.co.jp<wbr></wbr>/news/n<wbr></wbr>detail/<wbr></wbr>2010022<wbr></wbr>4-00000<wbr></wbr>111-mai<wbr></wbr>-spo

 映像見ました。

 浅田真央:73.78
 キムヨナ:78.50

 双方ノーミスの演技。
 正直、素人目にはおよそ5点の差がどこにあるのか分からず。ジャンプの精度とか、スピード感とか、細かいところでこれだけ差がついてしまうあたりに採点競技の怖さを感じるなあ。
 これは例えば、書道とか絵画みたいな、そういった芸術作品の良し悪しほどには分かりにくくないんでしょうけど、僕はやっぱりもっと分かりやすいスポーツの方がいいや。

 ちゅうかぶっちゃけさ、演技が美しいか、美しくないかなんて話をするなら、いっそのことスタイルやルックスも考慮して点数つけるべきだ。そして、演技する前にエレーネ・ゲデバニシビリのメダルを確定させるべきだ。おっぱい。
 そうなってしまうと、天才真央ちゃんも女帝キム・ヨナもスケーティングで取り返せないくらいのハンデを負うことになるけど、それはしょうがないと思う。残念ながらアジア系の顔とスタイルは氷上でケバすぎてきつい。化粧負けと言った方が正しいんだろうけど、化粧しなきゃ映えないし、化粧したらケバいしでそれこそどうしようもない。 まあ、そしたら採点基準を「平安美人であること」みたいに変更して対応するのかもしれない。でもさすがにこの変更には全世界の男どもが怒り狂うと思うんだよ。おかしなルール変更を見逃しちゃダメだぜ。
 目覚めよオスの本能。起こせよムーヴメント。


 というわけで、是非ともエキシビションはエレーネ・ゲデバニシビリ選手にお願いします。
 エロ衣装で。

 キメ台詞は「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」で、ひとつ。


【SS】小ネタ・終わりの鐘を聞きながら

2010-02-24 | インポート

「……さむ」
 無意識のうちにもれたつぶやきが、鐘の響きに吸い込まれていく。
 年の暮れを告げる除夜の鐘は、すごく遠くで鳴っているようにも、すごく近くで鳴っているようにも聞こえた。
「貴明ー、もうはじまっちゃってるよー」
 数歩離れたところで振り返ったミルファが、待ちきれないといった様子で手を振っている。
 そんなに急がなくたって神社は逃げやしないし、除夜の鐘は全部で108回も鳴るのだ。
 まったく、ホントに最後の最後までテンションの落ちないやつだよ。
「ほら、はやくはやく」
 もたもたと歩く俺を見て、足を早める気がないと悟ったのか、ミルファがこちらに駆け寄ってくる。
「こんなに寒いってのに元気だなあ……」
「あたしには関係ないもん」
「そりゃそうだけどさ……」
 ここにきてようやくと言うべきか、よりによって2007年も終わろうというころになって、"暖冬"の二文字を吹き飛ばすような寒波が日本列島に押し寄せていた。
 冬なんだから寒いのは当たり前だし、そっちの方が風情があるのかもしれないが、さすがにこの時間に外を歩いていると、身を切るような冷気で頬が痛いし耳も痛い。
「貴明も瑠璃様も寒いの苦手だよね。珊瑚様はそんなことないのに」
「……子供は体温が高いから、大人より寒さに強いんだよ」
「ふーん?」
 俺の意図するところが伝わらなかったのか、ミルファはよくわからないといった表情で首をかしげる。
 自分で言っておいてあれだけど、意外と信憑性のある話だよな。子供は風の子。
「ま、いっか。どっちにしてもあたしの狙いどおりになったわけだし」
「狙いどおり?」
 今度はこちらが首をかしげる番だった。
 するとミルファは、ものすごく得意気な顔で口をむにむに動かしながら、俺の目の前に右手を差し出す。
「まず瑠璃様は寒がりだから絶対に外出なんてしないでしょ。姉さんは瑠璃様と一緒にいるに決まってるでしょ」
 ミルファは差し出した右手で指折り数えながら、
「珊瑚様はがんばってたけど寝ちゃったし、シルファは珊瑚様と一緒だし」
「――ああ」
 ようやくわかった。
 つまり、この寒い中いきなり「二年参りに行ってみたい」なんて言い出した理由は、
「これなら策を弄せずして、貴明とふたりきりになれるからね」
 弄してるじゃん、と心の中で突っ込む。
 いやまあ、この程度の悪巧みだったら、べつにどうってことないんだけど。
「ていうか、俺も行かないって言ったらどうするつもりだったんだよ」
 正直言えば、俺だって瑠璃ちゃんみたいにこたつに潜っていたい。ミルファに誘われなければ、好きこのんで外に出ようとは思わなかっただろう。
 それに特に面白いわけではないにせよ、こたつでミカンを食いながら例の歌番組を見るのは、日本人のステイタスみたいなもんだしなあ。
「一緒にきてるじゃない」
「いや、だからもしもの話」
「そんなの考える必要ないよ」
 ミルファはニカッといたずらっぽく笑い、
「だって貴明があたしのお願い聞いてくれないわけないもん」
 ……こいつは。
 ミルファの笑顔には油性マジックで「してやったり」と書いてあって、それ以上に無垢な信頼が色濃く浮かんでいて、呆れてしまうやら照れくさいやら。
「……こんなだからイルファさんに叱られるんだろうなあ」
 矛先がミルファに向いているうちはいいのだが、最終的にはこっちに戻ってくるから困るのだ。
 イルファさんの「ミルファちゃんは貴明さんにワガママを言いすぎです」が「貴明さんはミルファちゃんに甘すぎます」に変わるのは、そんなに珍しいことではない。
「ジェラシーってみっともないよね」
「イルファさんも、おまえには言われたくないと思うぞ」
「あたしはいいの。貴明の専属メイドロボだから」
 めちゃくちゃな理屈である。
 もはや突っ込む気すら沸いてこない。
「ひとつ屋根の下に暮らしてても、なかなかふたりきりになれないんだもん。数少ないチャンスは絶対モノにしなきゃね」
 それに、とミルファは身を屈めて俺の顔を覗き込みながら、
「一年の締めくくりを貴明と迎えられるのってすごく嬉しいし」
「はいはい、俺も嬉しいですよ」
 目をそらして、わざとぶっきらぼうに言い放つ。
 我ながらガキっぽくて嫌になるが、ここで歯の浮くような台詞を言えるほど俺の面の皮は厚くない。
「んふふー」
 しかしながら、こちらの思惑はすべてお見通しというように、ミルファは楽しげに笑っていた。
 いつもワガママでヤキモチ妬きで子供っぽいところばかり目立つくせに、こういうときばかり妙に鋭くなるのはずるいと思う。
 そのせいで完全に上手に立てるってことがないんだよな。口惜しや。
「それにしてもさ」
 俺は横でスキップしはじめたミルファを足下から頭のてっぺんまで眺め、
「どうにかならないのか、それ」
「それ?」
「その格好だよ。おまえは寒くないかもしれないけど、見てるとこっちが寒くなってくる」
 そうなのだ。
 コートにマフラーまで身につけた俺と違って、ミルファの格好は普段とまったく変わらない。
 ふとももが半分以上あらわになる丈のミニスカートと、決して暖かそうには見えないエプロンつきの上着。
 室内ならなんてことない格好ではあるが、この時期にこんな薄着で表を出歩くというのはありえない。
 今日は風が強いこともあってか、スカートの裾が揺れるのを見るたびに身震いしてしまう。
 せめて珊瑚ちゃんか瑠璃ちゃんのコートを借りてくればよかったのに。
「寒くないってのはわかるけど、もうちょっと厚着してもいいんじゃないか?」
「そんなこと言われてもなあ……」
「まあ、今日はもう仕方がないから、次から考えてみてくれよ」
「んー……どうしよっかなあ……」
 ミルファは人差し指を唇に当て、視線をあちこちに漂わせていたが、
「あ、じゃあこうすればいいんだよっ」
 いきなり俺のコートのボタンに手をかけ、危なげない指使いで、ひとつずつぷちぷちと外しはじめる。
「ちょ、なにするんだよ、寒いって」
「だーかーらー」
 必死でシャットアウトしていた冷気が脇の下に入り込んできたと思ったのも束の間、あっという間にすべてのボタンが外されてしまい、
「ほら、これでいいでしょ?」
 ミルファは、するりと俺のコートの中にすべり込んでくる。
 それから俺にぴったり背中を密着させ、自分の胸の前でコートを合わせた。
 いわゆる二人羽織みたいな状態だ。
「いいでしょ、ってなあ……」
 やりたいことはわかるが、いくらコートが大きめでミルファが華奢な体型とはいえ、これではボタンは止められない。
 というか、こんなふうにべったりくっつかれたら、歩きにくいことこのうえなかった。
 しかし、
「貴明が言い出したことなんだからね」
 ぴしゃりと言い放ったミルファの言葉は、つまりこの体勢をやめる意思はまったくないという意味を含んでいて、
「それとも、あたしがそっち向いた方がいい?」
「……それは本気で勘弁して欲しい」
 より高度な要求をちらつかせることによって、少なくとも今の方がマシな状態であると思わせるのは、こいつにとってお手のもので、
「……人が増えてきたら離れてくれよ?」
「りょうかーい」
 こうして嬉しそうな声を聞くと、反発しようなんてつもりはすっかりなくなってしまうのだった。
 嗅ぎ慣れたシャンプーの香りに鼻先をくすぐられながら、俺は思う。
 来年はもう少し強く出られるようにしよう。そうしよう。
「貴明」
「ん?」
 ミルファは密着したまま、横目でこちらを見上げ、
「えっと、今年一年お世話になりました」
 スペースが足りないせいで、おじぎは単なる身じろぎみたいになった。
 一瞬だけ呆気に取られ、
「……こっちこそ、色々とありがとな」
 ぽつりとつぶやくだけになってしまった声は、口が耳元に近かったおかげかキチンと届いたらしい。
 ミルファは幸せそうに微笑みながら、
「……じゃあ来年も――」

 そのとき、空気の密度が増した。

 時報を聞こえたわけではないし、どこかで歓声があがったわけでもない。
 それでも、その気配はしっかりと伝わってきた。
 沸き立つような気配が、冷たい空気を伝わってきたのだ。
 周りの家々から。
 道の先にある神社から。
 そして、今ここに繋がる、ありとあらゆる空間から。
 年が変わった。
 ほんの数秒前に古い年は終わったのだ。
 今はもう新しい年になっているのだ。
 いつの間にか足が止まっていた。
 俺も、ミルファも。
 やがて。
 途中で言葉を切ったミルファは、俺のコートから飛び出し、気を取り直すように大きく息を吸い込んでから、
「――貴明っ、今年もよろしくねっ」
 くるりとこちらを振り返って、どこまでも晴れがましい笑顔を浮かべ、きっぱりと"宣言"した。
 遠くて近い場所で、108回目の鐘の音が響く。
 それは、終わりの音で、始まりの音だ。
「ああ、今年もよろしく」
 耳に残る鐘の音に負けないよう、思いが実現するよう、力を込めて返事をする。
 ――楽しかった去年より、今年がもっともっといい年でありますように。


END


【SS】小ネタ・おおきくすれ違って

2010-02-24 | インポート

「あーあ、やっぱり降ってきちゃったよ」
 放課後を告げるチャイムのあと、郁乃の耳に届いたのはクラスメイトのやる気なさげな声だった。
 ふっと顔を横に向けると、なるほど、確かに鉛色の空からは細かな雨粒が降り注いでいる。
 先週から日本列島に居座り続ける梅雨前線のことを思えば、午前中に晴れ間がのぞいていたのは奇跡みたいなものだった。
 どんよりした空。
 真っ昼間なのに薄暗い風景。
 雨の軌道は、まるで窓ガラスについたひっかき傷のようで、見つめていると目が痛くなってくる。
 郁乃は手元に視線を戻すと、教科書とノートを詰め込むためにカバンの蓋を開け、弁当箱の脇に空いたスペースをじっとりと眺めながらため息をつく。
 ――お姉ちゃんのいうこと聞いておけばよかった。
 家を出るとき、姉に言われたのだ。
 傘を持っていくべきだ。せめて折りたたみを持っていった方がいい。今日は絶対に雨が降る。
 そのときの自分は、姉の言う〝絶対〟には天気予報のお姉さんの言葉と同じくらいの信憑性しかないと判断して、忠告を無視して家を出た。
 久しぶりの晴天は、一日くらい「もつ」と思っていたのだ。
 その結果が、この有り様。
 つまるところ、姉の言葉はどこまでも正しく、自分はどこまでも意地っ張りだった。
 もう一度ため息。
 どうやって帰ろう。
「いくの~ん、もう帰るの?」
 耳慣れた陽気な声に振り返ると、モップを抱えたこのみがいた。
 今週は、名簿の後ろの方が掃除当番なのである。
「帰れるもんなら帰りたいんだけどね」
「あ、ひょっとして傘持ってこなかったとか?」
 このみにしては珍しく察しがいいな、と郁乃が怪訝な顔をすると、
「えへ~、わたしも忘れちゃったと思ったんだけど、いつの間にかカバンの中に入ってたんだよね。なんかお母さんが入れといてくれたみたい」
 なるほど。そういうことか。
 過保護っぷりなら姉に勝る者はいないと思っていたが、女傑、柚原春夏といえども実の娘には甘いらしい。
 と、そこまで考えて郁乃は内心で首を横に振る。
 いやいや、よく考えてみれば、優しくも厳しい春夏が、そんなに浅慮であるはずがない。
 おそらく、傘を持っていなければ家まで走って帰ってくる可能性が高いと踏んで、「制服や靴をぐちょぐちょにされる」よりは「カバンの中に折りたたみ傘を突っ込んでおく」方が被害が少ないと判断したのだろう。
 もちろん、このみがいくら言っても傘を忘れるのは織り込み済みに決まっている。
 ということは、である。
 帰宅したら、このみはきっと傘を持っていかなかったことを咎められ、場合によっては強烈なおたまの一撃を喰らう羽目になるのであろう。
 数十分後の友人を思うと、少し悲しくなってきた。
 合掌。
「どうしたの? 急に両手を合わせたりして」
「ちょっとね。友達の無事を祈ってみたのよ」
「? よくわからないけど」
 このみは、ちょこんと首を傾げてから、
「傘持ってないなら一緒に帰ろうよ。わたしがおうちまで送ってってあげるから」
「ありがたい申し出だけど、そこまでしてもらうのも悪いわ。反対方向だし」
「でも、そしたらいくのん帰れないよ?」
「ま、職員室に行けば傘の一本くらい貸してもらえるでしょ。帰れないってことはないわよ」
 言って、郁乃が立ち上がると、
「あっ、郁乃ぉ」
 これまた耳慣れた声が、教室の入り口から聞こえた。
 確かめるまでもなく、姉の愛佳の声だ。
 郁乃は慌てて、
「――ちょっ、お姉ちゃん! 教室にはこないでって言ってるじゃない!」
 登校し始めのころはいつもべったりだったので、何を今更という感じではあったが、思春期の子というのはこんなもんなのである。
 そのへんは愛佳も心得ているのか、カバンも持たずに駆け寄ってきた郁乃をなだめるようにふんわりと微笑み、
「ふふ、教室で捕まえられてよかった。はい、これ」
「……なによこれ」
「折りたたみ傘。やっぱりあたしの言ったとおりになったでしょ?」
 愛佳は得意気に、オレンジ色の折りたたみ傘を差し出した。
「ひょっとして二本持ってきてたの?」
「ううん、これしか持ってきてないよ」
「じゃあお姉ちゃんの分がないじゃない」
 ふくれっ面のまま郁乃が言うと、どうしてか愛佳は急に焦りはじめ、
「あ、あたしはほら、ね? だいじょうぶだから、だいじょうぶだから」
 二回言った。
 あやしい。
「なによ。これをあたしに渡して、自分は職員室に借りにでも行くの? だったらあたしが借りに行っても同じじゃない」
「や、や、べつにそういうわけじゃなくて、でも、だいじょうぶだから」
 愛佳は無理矢理押しつけるようにして、郁乃に折りたたみ傘を握らせ、
「お姉ちゃんのことは心配しないで、郁乃はそれを使っちゃって? ね、ね? 遠慮なく」
 身体の前でぱたぱたと手を振る仕草は、後ろ暗いところがあるときに出る愛佳のクセだ。
「……ははあ」
 ピンときた。
「河野貴明ね」
「――はうっ!?」
 郁乃は、驚きで目を丸くする愛佳を冷めた視線で射抜き、
「大方、これをあたしに押しつけて、お姉ちゃんは『あのねたかあきくぅん、あたし今日傘持ってくるの忘れちゃったぁ』とか言って、あいつの傘に入れてもらうつもりなんでしょ」
「――はううっ!?」
 ずざざ、と後ずさる愛佳を見るに、どうやら郁乃の推測は大当たりだったらしい。
 というか、最近の愛佳が不審な行動を取るのは、あの男絡みであることが圧倒的に多いのでバレバレだった。
 まあ、ふたりは付き合っているわけだし、郁乃としてもあれこれ言うつもりはない。
 が、なんとなく腑に落ちないものはあるのも事実で、カップルがいちゃいちゃするダシに使われたら、誰だっていい気持ちはしない。
 これはちょっと釘を刺しておく必要があると思う。
 郁乃はわざとらしくため息をついてみせると、実にサディスティックな笑みを浮かべながら、
「お姉ちゃんってさ、天然っぽく見せてるけどけっこう計算高いよね」
「け、計算なんてしてないよぉ」
「まさか妹をダシにするとは思わなかったわ」
「し、してないっ、してないってばぁ~」
 これもまた姉妹愛のひとつの形ということなのか、郁乃と愛佳は不毛な問答を繰り返している。
 このみを初めとするクラスメイトたちにとっては珍しくもない光景なのか、当番の生徒たちは掃除を続け、それ以外の生徒たちはパラパラと帰途につきはじめた。
 やがて掃除も終わろうというころ、
「それじゃゴミ捨て行く人はじゃんけんで決める?」
「いいよいいよ、わたしがひとっ走りいってくるであります!」
 このみはぱんぱんになったゴミ袋を片手に掴み、もう片方の手で敬礼をしながら教室から出て行こうとする。
 と、
「おっ、このみ」
「あ、タカくん」
 教室の入り口に姿を現したのは、貴明だった。
「た、たかあきくん?」
「あれ? 愛佳もいたのか」
 貴明は、愛佳と、その隣にいる郁乃を目に留めると、
「なんだ、お互いに同じこと考えてたみたいだな」
「えっ、えっ、そ、それってひょっとして――」
「ああ」
 顔を真っ赤にする愛佳に向かって、貴明は大きくうなずき、

「俺、傘持ってこなかったからさ、このみに一緒に入れてもらおうと思って」

「……………………ふぇ?」
 間抜けな音を漏らして固まった愛佳を尻目に、貴明は郁乃に笑いかけると、
「はは、愛佳も傘忘れちゃって郁乃に入れてもらおうとしてたんだろ? なんだかあれだよなー。年下の方がしっかりしてると、年上の威厳がなくなるよなあ」
「……やっぱバカね、こいつ」
「ん? なにか言ったか?」
「べつに」
 郁乃は心底呆れきった目つきで貴明と愛佳を見比べ、こっそりと肩をすくめた。
 すれ違いバカップルという希少生物が誕生した瞬間だった。
「というわけで、一緒に帰らないか? もう掃除終わったんだろ? ゴミ捨てるの手伝ってやるよ」
「うん! ありがと、タカくん!」
 貴明は、このみの手からゴミ袋を受け取り、愛佳と郁乃に向かって、
「それじゃ、また明日な」
 肩を並べて遠ざかっていく貴明とこのみの背中から、「タカくんと~相合い傘~」「ばか、おかしなこと言うなよ」という仲よさげなやり取りが聞こえてくる。
 ふたりが廊下の角を曲がって見えなくなると、愛佳はがくりとその場に膝をつき、可愛らしくも怨嗟のこもった声で、
「……やけ食いしてやるぅ~」
「……あたしは付き合わないからね」
 郁乃はそれだけ返して、手元の折りたたみ傘を握り直すと、
「じゃ、これはありがたく受け取るから」
「まってぇ~、い"ぐの"ぉ~、おねえちゃんを捨てないでぇ~」
 がっしりと足にすがりつく姉の姿を見て、さすがに哀れになったのか、郁乃はため息まじりに、
「捨てやしないわよ。ほら、一緒に帰るんでしょ。下駄箱で待ってるから、お姉ちゃんも早くカバン取ってきなさいよ」
「……うん、ありがとぉ~」
 結局それから家に着くまで、郁乃は延々と愛佳の愚痴を聞かされた。
 その半分以上がのろけであったのは言うまでもなく、空模様以上に郁乃の心模様は曇っていた。
 ただ、まあ、それでも。
 郁乃の方に傘を傾け、制服の肩をびしょ濡れにしている姉には、妹として少しくらいは感謝してやってもいいかもしれないと思うのだ。
 直接言うのは恥ずかしいし、姉が感動して泣き出しそうなので、本当にさりげなく車道側を歩く姉に、視線は向けずに郁乃は心の中だけでつぶやいた。
 お姉ちゃん、ありがと。


END


【サッカー】開幕戦とか

2010-02-24 | サッカー・アルビレックス新潟

 3/6川崎行くことにしたぜー(^q^)ノ

 等々力ははじめて行くので楽しみ。
 ちなみに僕が開幕を見に行った2008年の大宮戦は、新潟の負けでした。
 さあ、喜べ。川崎サポ諸君。

 で、日曜日に清水とのPSMがテレビで見られることを知り歓喜したり、ACL初戦の鹿島戦でジウトンが出て爆笑したりしてたら、憲剛がアゴを骨折したと聞いて吃驚。
 おっかねえなあ。やっぱお隣の国おっかねえよ。
 憲剛は代表戦でコンディション上がってないなあと思ってましたが、今年は最初から踏んだり蹴ったりですね。


【ラノベ】RPG W(・∀・)RLD -ろーぷれ・わーるど-1

2010-02-23 | ライトノベル
RPG W(・∀・)RLD1  ―ろーぷれ・わーるど― (富士見ファンタジア文庫) RPG W(・∀・)RLD1 ―ろーぷれ・わーるど― (富士見ファンタジア文庫)
価格:¥ 651(税込)
発売日:2009-04-20

 読了。

 俺TUEE系ラノベスレで名前が挙がっていたので、内容にはそれほど期待せずに買ったんですが、コレは個人的に大当たり。一巻を読み終わって即続きを読んでみたいと思ったのは久しぶりすぎる。
 大ざっぱに導入を説明してしまうと、「ゲーム好きの主人公が、ハマってるRPGの世界の中に入ってしまった」という実によくある内容なんですけど、判る人にだけ通じる例えとしては簡略化した『ソードアートオンライン』という感じ。『スパロボ』でいうと『ソードアートオンライン』がリアル系で、この『RPG W(・∀・)RLD』はスーパー系ですね。ようするにファンタジー寄りの作品ということなんですが、比喩に比喩を重ねるって我ながらわっかりにくいなwwwww

 それはともかく、すげー楽しかったんですよ! このラノベ!
 文体や内容に、ちょっと古臭い感じが漂ってるのも良い方に転じたというか、なんかラノベを初めて読んだときの感覚を思い出したというか。そうそう、昔はこういうのが多かった。小難しい伏線とか張ってなくて、起承転結がハッキリしていて、読んでる途中はワクワクして読み終わるとスカッとする。で、すぐにでも続きが読みたくなる。
 もちろん、こういう単純な話ばかりだと業界が死にますし、僕がこうやって単純な話を殊更に持ち上げるのは、設定に凝った他のラノベがあるからなんでしょうけど、シンプルイズベストを貫く作品の娯楽性はホンットに高いと改めて感じました。

 これは常々感じていることなんですが、ぶっちゃけ一冊に「ラノベの要素」を全部ぶち込もうとしたら、これくらいシンプルにしないと追っつかないと思う。この『RPG W(・∀・)RLD』はベタな導入(設定)であるがゆえ、多くの説明を必要としないところに理があって、「RPGってこういうものだよね」とか「ゲームの中に入り込む話ってこういう感じだよね」とか、そういった読者の頭の中に根付いた"共通認識"をベースにできるのがすっごい強み。
 そして、設定自体がファンタジー寄りなお陰で、この手の物語にありがちな「どうせゲームなんだろ」というツッコミを封殺できるのもお得。上で挙げたのでまた引き合いに出しますが、『ソードアートオンライン』くらいディティールに凝った世界観になってしまうと、キャラクターが必死になればなるほどに「でもゲームの話っすよねえ」という思いが首をもたげてしまうんだよなあ(フェアリィダンス以降は特に)。よくある「ゲーム内での死=リアル死」という設定も、確定させてしまうと重くなりすぎる感じがしますし、個人的には『RPG W(・∀・)RLD』くらい曖昧にしてくれたほうがいいです。
 つけ加えると、章ごとに文章の主体(視点となるキャラクター)が変わるのも、とにかく分かりやすさを重視したこの作品においてはプラスに働いています。特定のシーン(終盤とか)でのみヒロイン視点になったりすると安易な印象を受けますけど、ここまで割り切ってくれると逆に清々しさすら。たまに「このシーンはこのキャラの視点で見たかったなあ」みたいなのはあったにせよ、展開のテンポがいいのでそれほど気になりませんでしたし。
 で、トドメとして、こんなふうに全体的にシンプルに仕上がった作品になっているのが、富士見ファンタジア系の「無駄を省く」作りにめっちゃくちゃ合ってるわけです。や、コレはホント富士見向きでした。他だったら微妙になってそうな気がするので、レーベルに恵まれたってことなのかもしれません。

 唯一気になるのは、 二人のヒロインがどちらも「萌え」に届かないところでしょーか。
 今作は話の流れといい、細かいところのさじ加減といい、ホントに全てが僕好みなんですけど。ヒロインが「物語の登場人物」としては問題なくても、こと「ラノベのヒロイン」として考えるとインパクトがなくて普通すぎるのがマズイかもしれません。今後新キャラでテコ入れしたり、この二人のヒロインで「萌え」られる展開になったりするんでしょーか。

 というわけで、感想は以上。
 めちゃ楽しめたので、近いうちに続きも読みますということで、ひとつ。
 久しぶりに続きを読むのが待ち遠しい作品に出会えたなあ。