神さまのいない日曜日 (富士見ファンタジア文庫) 価格:¥ 609(税込) 発売日:2010-01-20 |
読了。
第21回ファンタジア大賞受賞作ということで気になったので購入。
あらすじ等はHPを見て頂くとして。一言で表すと「詰め込みすぎ」という感じの作品。
いやあ、さすがに、
・現代とは異なった特殊な世界観
・いわゆる"お約束"から少し外れた特殊な設定
・初登場(一冊目なので当たり前)のキャラクターたちのバックボーン
これら全てを過不足なく描ききるには、単純に尺が足りなすぎたんじゃないかなと。
ただ「さすが大賞なだけはある」的な印象も強くて、作者さんはこういった要素をかなりバランスのいい配分で書かれてるんで、全体通してサクサクとテンポよく読めるし分かりやすくはあったんですけど。
その反面、主人公アイの置かれた状況が急転していく展開と、世界観などの設定を次々と小出しにしていく説明が同時並行で進んでいくのでどうにもこうにも慌ただしくて、話を理解できるか否かというのとは別次元の問題として、腰を据えて物語を楽しむ、という感じにならなかったのが残念。
言うなれば、まとまっているけど、まとまりすぎている。富士見ファンタジアにはありがちなんですが、こういう極限まで無駄を省いた「アソビ」のない作品はちと退屈です。
他作品を持ち出した例えになっちゃいますけど、某『狼と香辛料』で、ロレンスとホロのかけ合いや食事シーンなどを全部取っ払って、メインストーリーだけを抽出したらこうなるのかな、という感じでした。や、村人たちにお菓子を押しつけられたりとか、夕食、朝食を食べるなどの日常描写はあったんですけど、なんか違うんだよな。コレジャナイ感というか、アレはどうにも状況説明としての意味合いのほうを強く感じてしまった。死臭を香水でごまかしてたというのはわかりやすい伏線でしたけど、食事シーンはアンナの料理が味気ない(逆にハンプニーの質素な料理がめちゃくちゃ美味しい=死者と生者の味覚の差)という伏線としての意味合いばかりが目立っていたからなあ。
ぶっちゃけ「この作品は世界観などの設定が全てだぜ!」というなら、こういう肉付けの少ない薄味のストーリーでも問題ないと思うんですが、ところどころにキャラ重視っぽいやり取りが挟まれてるので違和感があるんだよなあ。
このへん、奇しくも角川スニーカーで大賞を取った『シュガーダーク』も墓守の話だったせいか、やはり似たような感想を抱いたんですけど。物語自体が、やや重苦しい設定、雰囲気であるにも関わらず、普通の萌えラノベみたいなやり取りが展開されるせいで、読んでて戸惑ってしまうのですよ。
僕は、同じ「萌え」を狙ったキャラクター同士のやり取りを挿入するにせよ、ファンタジーの世界観であれば、その世界観の雰囲気や空気感を大切にしたやり取りを考えて盛り込んでいって欲しいんですよね。ところが、世界観は疑いようもなくファンタジーなのに、キャラクター同士のやり取りは学園ラブコメラノベのまま、みたいな作品はやはり読んでて拍子抜けしてしまいます。こうやって考えていくと、信者臭くなっちゃいますけど、『狼と香辛料』は実に秀逸な作品なんだよなあ……。
というわけで、ほっとんど内容に触れてないんですけど、触れるほどの中身がなかったんだからしょうがない。ちゅうか、たぶんこのラノベ、アイというキャラクターをどう感じるかで評価がわかれると思います。アイが気に入ったならすげー気に入るだろうし、そうでもないなら印象に残らないでしょう。
アイというキャラクターに関して、個人的には、ところどころ「おっ」と感じる箇所もあり、巷に溢れる様々な作品のヒロインたちとの差別化はしっかりできていたと思いますし、なかなかに興味を惹かれるキャラだったのではないかなと思うんですが。
最後の一押しが弱いというか、無いというか。なんていうか、他作品のキャラクターと差別化ができているかどうかと、魅力があるかどうかというのは別問題なんだなーと思ったりもしました。アイみたいなキャラをキチンと設定年齢相応に描けているのはスゴイけど、だからこそ萌えるのは無理。だって僕ロリコンじゃないし。ルッキーニ可愛い。
そんな感じで、一つ。