実業之日本社といえば「MyBirthday」の復刊で個人的に盛り上がっていましたが、荒川さん情報を受け「ジェイ・ノベル」を探すことに…。発売日から一週間、なかなか見つかりませんでしたがついに発見。
新鋭と昭和の大家が競演!
愛と官能の誘惑
新鋭はともに女流のうかみ綾乃、蛭田亜紗子。
“昭和の大家”は宇能鴻一郎とわれらが富島健夫!
今号の特集は官能小説。昭和四〇年代から五〇年代にかけて、多くの男性読者を獲得、小誌前身の「週刊小説」誌でも健筆を振るった名手・宇能鴻一郎氏(「女あぐら」)と富島健夫氏(「可愛いおとこ」)の官能短編を再録します。この大家二人に新進女性作家が新感覚の官能小説で挑みます。うかみ綾乃さんの「お松明」、そして蛭田亜紗子さんの「シルバー925の失望」です。(出版社サイトより)
うーん…
中原修の挿絵も再録
「可愛いおとこ」の初出は、「週刊小説」昭和51年4月26日号。版を変え二度単行本に収録されていますが我が家にはありませんでした。
いつもの「女から誘ってきて複数プレイ」…という展開ではなかったので、まあそれなりに面白く読めました。官能小説としてはどこで興奮するのだろうという感じなんですけどね。
せっかくブログに挙げるので、新鋭ふたりの作品も読んでみたのだけど…どうも鼻につく。書いているときの「計算」と、「胸の高鳴り」が予想できてしまうのだ。「胸の高鳴り」っていうのはいやらしい意味ではなく、「文章としてかっこがついてきたぞ」という意味。
「可愛いおとこ」も実につまらない話なのだが、媚びたり立派にみせようとする様子がまるで感じられない(まあ、適当に書いたのだろうが)。それでも流れるような文章で一つの作品を完成させているのが富島健夫の筆力なのだと思う。
つまらない話でもちょっとだけひねくり、過激に性交を描き、ちょっとだけ“闇”を加えることでそれらしくなる。けれども読了後に一息つけばやっぱりつまらないなと思う。(松浦理英子の『ナチュラル・ウーマン』はただひねくった話ではないということだ!)
文章を書くときはナルシシズムは必要。でも俯瞰してみることも必要。『新左翼とロスジェネ』を読んだ時と似たような気分になった。自分も注意しなければいけない。
ぱらぱら眺めるだけでも、“昭和の大家”のほうが文章がすっきりしているのがわかる。
特に富島は擬音を使わない。「ぐちゃぐちゃ」言わない。「いっちゃう」とも言わない。で官能小説になってるところがすごい。
宇能先生は特別。さすが“大家”ですよ。擬音ひとつでも生きてるもんね。
ツイッターで「どうせなら『初夜の海』に挑め」とつぶやいたけど、『女人追憶』に挑んだ神崎くんにだって酷評するんだから、まあ同じか。
富島びいきですみません。
プロフィールはこんな感じ。
“官能小説”以外の作品を紹介してくれる雑誌はないのかなあ。