蕎麦彷徨

ひとりの素人が蕎麦について考えてきたことを書きしるすブログ

蕎麦界の展望 (3)

2006-07-21 | 蕎麦界の展望
新宿「一茶庵」の「師客」の一人に、作家・小林蹴月がいた。この小林を通して、片倉さんは、信州・川上村の海瀬館という旅館で、本物の「さらしな生一本」に出会ったという。これを契機に、さらに本格的に、このとてつもなく難しい蕎麦に取り組むことになる。

そして、おそらく、店を新宿から大森に移す頃には、すなわち、氏が30才前後の頃には「さらしな生一本」を打つ技術は相当なレベルまで達っしていたのではあるまいか。これを可能にしたのは、片倉さんの「さらしな生一本」に向かう志の高さであり、もって生まれた器用さなどであると思われるが、氏の道具への並みならぬ関心も忘れてはなるまい。この道具へのこだわりが、後に、「さらしな生一本」を切りべら60本の世界までもたらしたのではなかろうか。

この「さらしな生一本」の蕎麦打ちに立ち向かったからこそ、氏が希有の蕎麦打ち技術を獲得できたのである。そして、まさにそのことこそが、多くの人を引きつけ、後世に多大な影響をもたらしたのである。

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