収穫してしばらく経つが、圃場Aのソバを、蕎麦の味についてはとりわけ鋭敏な舌をもつ方々と試食をした。(圃場Bのそばも合わせて食べた。)
栽培期間68日間、脱穀後の天日乾燥はせずハサ掛け天日乾燥のみ、脱酸素剤を入れたネルパックで約1カ月半保存、丸ヌキ、丸ヌキ後黒の果皮がとれていないものはすべて手で取り除き、種皮の酸化が著しいものはできるだけ除去した。その後石臼製粉、篩は24メッシュ使用、いつもの通り、そば粉+水のみで打つ。加水量は重量比で44%。
私の評価は、昨年と同じ5.2
種皮の色から緑がかったいい色をしていたが、蕎麦きりにしても緑色がきれいに出ていた。香りは、それほど強いという訳ではなかったが、香りの質が良かった。圃場Bのそばは香りが強いのだが、土の匂いがする感じであったのに対して、圃場Aのそばは混じりけのない済んだ印象がした。
圃場Aのそばは、ここ数年間同じような感じになっているが、もう十年以上もほぼ落葉しか圃場に投入していないからこうしたそばになってきたと思われる。しかし問題はここから先である。このレベルのそばを突破するには、どうするかである。
昨日、圃場Bで今年収穫したソバを食べた。香りは前回よりも良かった。
前回は、φ4.7~5.0mmの大きさの粒子を丸ヌキにしたソバを使い、今回は、φ4.1~4.3mmのものを利用した。前回は酸化して黄色みを帯びたものが少し見られたが、今回はそうしたものはほとんどなかった。ここがポイントだと思うのだが、粒子が大きい方が、割れが入りやすいと考えられる。それは、早く子実になった方が大きい子実になるだろうし、早く子実になったものほど割れも出てくるだろうから。丸ヌキの段階で蕎麦の色は、緑の色が濃かった。緑の色が濃ければ、香りが必ずしもあり、それが強いという訳ではないが、昨日の蕎麦は比例していた。もちろん、特別な感動を与える蕎麦と言える程ではなかったが・・・。
加水量は、48%であった。ハサ掛け期間が少し短かったので、脱穀後2日間、合計で2時間程の天日干しを行った。これが少し行き過ぎた。加水量は、45%以下で済む方が好ましいと思う。昨日の蕎麦打ちは、水の量が不足してしまいうまくいかなかった。蕎麦打ちは打つたびに反省、進歩しない。
昨日は10人ほどの人に食べていただいたのだが、各自に蕎麦きりをごく軽く一人前ほどだした後、テーブルの真ん中で鴨と葱を焼いて食べた。そして、小さく切った鴨と葱を最後に焼き、各自の蕎麦猪口にそれらを各自の好みの量を入れてもらい、さらに好みでブラックペッパーを入れてもらった。すなわち自分に合った鴨汁が出来上がったのである。さらに蕎麦を出し食べてもらった。鴨と葱は本当によく合うし、ブラックペッパー入りの鴨汁はいい味のつゆになる。いいスタイルの食べ方ができたとひとり悦に入っている。
昨日、圃場Bで今年収穫した新蕎麦を、蕎麦仲間の人達と試食をした。
私の評価基準(10を満点)で、5.0.
丸ヌキのソバの色は、全体的に黄緑色がかなり濃くよいのだが、酸化して黄色みを帯びたものが少し見られた。蕎麦の持つ独特の香りはがしたが、一般に感じられる蕎麦の香りの範囲内であり、特別感動するものではなかった。
つまり、これは私がここ数年栽培してきた最もいいソバとほぼ同程度なのだが、それを突き抜けた蕎麦ではなかった。毎年思うのだが、満足のいくソバなどそう簡単にできるものではないのだろう。
圃場の自然の力をみるために、肥料は一切入れない。種子も特段の選別はせず、8月15日に播種した。広さは100㎡。5kg/10aの割合で条播き。
半月近く経過しても雨が降らなかったので、発芽したものの茎が細く今にも折れそうなものや発芽していないところさえもあった。あまりにも状況が悪いので、散水を1回行なった。間もなく、台風8号が到来し、恵みの雨をもたらした。ここから順調に生育し始めた。ソバにとってはいわば「天敵」の台風を、ありがたく迎えたのはこの時が始めてであったかもしれない。
生育期間は、64と65日。刈り取りは、ソバの幹を一方に倒し、根元を草刈り機で切り取った。その後のハサ掛け天日干しは、8,9日間。少し短いがこれも天気との相談でやむを得なかった。脱穀はコンバイン。雨や夜露にかけないことが、蕎麦の味を保つ最大のポイントと考えているので、ハサ掛け後のコンバインによる脱穀は、最後の妥協点である。
収穫量は15kg。10a当たりにすれば、150kgであったので、私にとっては上々の収穫量であった。問題はその味である。
この圃場にソバを栽培しようとした2つ目の理由は、その地形と長期間無耕作地であったからである。
ここは、緩やかな西向きの斜面である。ソバは特に過剰な水分を嫌う。斜面なら雨が降っても素早く流れてしまう。さらに、播種と同時に上部に浅い溝を掘り、水が圃場に入らないようにした。しかし、生育前半は、猛暑で雨も降らないために溝を作った意味はなかった。後半には、役に立った。
また、ここには長い間、作物は栽培されていない。所有者に聞くと、「どの位の期間耕作していないか覚えていない。」と言っていた位である。「草が長くなると刈る。」ということを繰り返してきたそうである。長期間の無耕作によって、蕎麦を美味しくする「見えない」成分が少しずつ蓄積されてきたことを期待している。
播種から9月中旬まで異常に暑い日が続いた。ここは自宅の前で水が得易いので、こまめに散水をした。従って、比較的順調に生育した。
ヨトウムシとウドンコ病の被害は、軽微なもので済んだ。とりわけ、ヨトウムシは近くの畑でも大発生していたので、幸運なことであった。ウドンコ病も発性していたが、例年よりはるかに少ない。白くなった葉を見つけては焼却した。生育途中で防鳥網を張り、街路灯から漏れる光を遮るために、黒の寒冷しゃを張った。土寄せも行った。
今日、68日目で刈り取った。私は刈り取りの基準を、黒変率60%前後で、播種後約68日と考えている。しかし、今年の場合は、経過日数68日であるのに、黒変率が少し低かった。50%前後であった。天気予報によれば、台風14号が接近しそうなので、やむを得ず今日刈り取ってしまった。
収穫個体数488。そのうち、着粒数、草型を見て98個体を選抜しておいた。
毎年栽培している圃場Aの他に、今年は自宅から約1km離れたところに畑を借りてソバを栽培した。そこに借用したのは、言うまでもなく美味そうなソバができるのではないかと考えたからである。
美味そうなソバができるのではないかと、考えた理由は2つ。1つは、以前に100mほど離れた場所に栽培したソバが実に美味かったからである。私がこれまでに食べてきたそばのうち2番目に美味いソバを排出したのが、少し離れた畑のソバであった。その近くだから美味いに違いないと考えた。
しかし、以前に美味いソバを排出した畑のすぐ近くだとはいえ、必ずしも美味しいソバができると楽観しているわけではない。隣の畑でさえ味は随分と違うことがある。いや、むしろ違うことの方が多い。庭先で以前東区、西区とした圃場でできたソバは、1枚の畑の隣同士であるにもかかわらず、できたソバを同じように打っても、鋭利な舌をもつソバ喰いに食べてもらうと、まるで違う味がするという人さえいる。
以前にテレビの「ワンダー ワンダー」という番組で、1つの畑の隣同士からできたワインの味がまるで異なるという例を示していた。その番組で出演者たちは試飲した2種のワインがまるで異なると発言した。しかし、それは、同じ畑で海に面して平行にブドウ棚を作ったブドウと垂直にブドウ棚を作った、まさにそれの差でしかなかった。
というようなこともあるので、期待をしすぎずに、試食の時を迎えられるように栽培に向かった。
庭先のこの圃場は20㎡の広さである。昨年50㎡にソバを栽培したがその一部であり、以前に東区としてソバを栽培してきたところである。今年は、青大豆を30㎡分に栽培したので20㎡しかソバを栽培できなかった。
マグネシウムが不足していれば、昨年と同じように苦土を少し入れようと考えていたが、土壌分析の結果117mg/100g入っていたので入れないことにした。従って、冬に腐葉土を投入しただけであった。
播種は8月22日。 昨年より1日早く、何年もの間8月20日に播いていたのでそれより2日遅い。今年は開放体系で育てることにしていたので交雑は避けられないが、ひとまず次の基準で種子を選別した。① 一定の文様をもつ種子 ② φ3.6~4.1の小粒の種子 ③ 濃い褐色の種子 ④ 稜が角張ってなくよく膨らんでいる種子。こうして選んだ種子を8月22日に播種したので、今日が65日目であり、刈り取りまで間もなくである。
指標の1から4までは、昨年からすべてよい方向に向かっている。5のみがさらに過剰傾向を示している。 昨年からいわゆる肥料なるものは投入していないのにもかかわらず、この水溶性リン酸の値が悪化しているのは不可解である。
指標の1から4についてはそれが改善しているからと言って、喜べるような数値ではない。塩基飽和度と塩基バランスは、まだ目標値からあまりにも大きく逸脱している。時の流れを味方にするしかなかろうか。
ところで、塩基バランスが少し大きく改善した。それはカルシウムが昨年の883mg/100gから869mg/100gへと低下したからである。しかし、カルシウムのこの少しの低下だけでは説明できない。塩基置換容量の値が上昇したことにも起因している。その塩基置換容量の上昇は、腐葉土を例年の2倍ほどの量を投入したことによると考えられる。
ホウレン草をすべて取り除いた後、7月に、東京農大の土壌学研究室に土壌の分析を依頼した。今まで土壌中にカルシウムが余りにも多すぎるのが最大の問題であったが、それがどのように変化したか気がかりであった。矢印の順に、06年、08年、09年、10年の分析値であり、最後のカッコ内は私が定めた各指標の目標値である。なお、09年までの塩基バランスに誤りがあったので訂正した。
指標1 塩基置換容量(CEC): 35.7→29.3→31.2→33.3meq/100g (30台の高い値)
指標2 塩基飽和度: 120→122→121→115% (60%)
指標3 塩基バランス: Ca:Mg : K = 35:4:1 →33:3:1 →37:6:1 →21:4:1 (5:2:1)
指標4 電気伝導率(EC): 0.15→0.14→0.25→0.14 mS/cm (0.10)
指標5 水溶性リン酸: 19.6→18.9→17.2→20.85 mg/100g (10.0)