蕎麦彷徨

ひとりの素人が蕎麦について考えてきたことを書きしるすブログ

好みの蕎麦 (3)

2006-07-17 | つゆ 薬味 他
私が好きな蕎麦の3つ目は、「鴨せいろ」蕎麦である。通常のせいろに盛られた蕎麦を、かも汁につけて食べるものである。これだけでは、目新しいものでも何でもないが、美味しくする決定的なポイントがある。

これは、東京のある蕎麦店で食べ、後で自分で作るようになった蕎麦である。それゆえ、前回の蕎麦と同様に、オリジナルものと同じかどうか判らない。
まず、かも肉は脂が多いのでそれを取る。フライパンに半身の脂分が多い面を下にして焼き、適度なところまで脂分を取りさる。必要があれば切り落としてもよい。それから、小さく切る。

次に鴨肉によく合う長葱である。好きな長さでよいが、葱を短めに切る。この葱を、必ず先ほどのフライパンに残っている鴨の脂で焼く。この時、いい焦げ色をつけるのがコツである。この方が美味しいし、美味しくも見える。次に、小さめに切られた鴨肉と葱を蕎麦つゆに入れて一煮立ちさせる。これを温かいまま使ってもよいし、季節によっては冷やしてから使ってもよい。

ここまでならば、何の変哲もない普通のかも汁である。このかも汁を決定的に変えるのが、ブラックペッパーである。かも汁が一煮立ちしたところで、好みの量のブラックペッパーをいれるのである。好みの量としたが、意外にも多い方が美味い。これは本当に美味しいつけ汁になる。

次からは、日本の蕎麦界を私見に基づいて展望してみたい。


好みの蕎麦 (2)

2006-07-16 | つゆ 薬味 他
私の好みの蕎麦の2つめは、温かい「大根おろし葱蕎麦」とでもいうものである。

ある雑誌が、蕎麦店「ほそ川」の一つのメニューとして紹介していたものである。私は、その店で実際に食べたことはない。しかし、以下に述べるような作り方でつくり、今では我が家の定番メニューの1つであり、大晦日には「せいろ」とこの蕎麦を食べるのが、ここ数年の習わしである。

作り方は、特別なことは何もない。温かい蕎麦の上に、大根おろしと葱をたっぷりのせるだけである。「たっぷり」というよりも「大量に」と言ったほうがよいかも知れない。ポイントが2つある。1つは、蕎麦に使う大根だからといって、辛い大根だけを使うのではなく、辛くない普通の大根と合わせて使うことである。大根おろしをたくさん使うので、辛くしすぎないことがポイントだ。もう1つは、食べる時に、蕎麦とおろしと葱をよく混ぜることである。これは、まさに好みの問題であるが、私はよくからんでないとおいしいと感じない。

日本全国には、大根おろしを使った蕎麦は様々あるが、私はこうしてつくる「大根おろし葱蕎麦」が大好物である。大根おろしをたくさん使うので、消化にもすこぶるよい。

好みの蕎麦 (1)

2006-07-15 | つゆ 薬味 他
この章の最後に、私の好みの3つの蕎麦について書き記してみたい。

第1は、「せいろ」蕎麦である。実は、これは好みとかの問題を超えた蕎麦である。私がここに書いた全ての文章が、いかに美味い「せいろ」をつくるかを考えたものである。それゆえ、ここでは、私の「せいろ」蕎麦の楽しみ方について述べていこう。

私は、美味そうな「せいろ」であったら、まず蕎麦そのものだけを食べる。間違いなければ、そのまま食べ続け、蕎麦の香りとコシをじっくり楽しむ。「せいろ」が一枚に限定されている場合には、蕎麦そのものがどんなに食べたくても、半分程で止める。
つゆも楽しみたい。つゆは蕎麦と合わさってその本領が発揮されるのだが、つゆそのものがどんなものかも知りたい。その後で、そばにつゆをつけて食べてみる。
薬味はそれから使う。私は、薬味は大根、葱、わさびの3つが絶対にあってほしいのだが、その薬味1つ1つと蕎麦を合わせてみたい。蕎麦猪口が3つ用意されたなら嬉しいのである。蕎麦店では薬味を順番に使わざるをえないのだから、その順番に悩む。通常は、薬味を次第に強くして、様々に楽しむ。

一枚の「せいろ」蕎麦が、本当に幾つもの異なる顔を見せてくれる。

薬味

2006-07-14 | つゆ 薬味 他
薬味について触れておきたい。

薬味は何のためにあるのか。
一般に、薬効、毒消し、食欲増進効果などと共に、蕎麦の引き立て役としての役割が指摘される。私は蕎麦を楽しむために取り組んでいるのだから、蕎麦の引き立て役として薬味を考えている。

ところで、薬味の3点セットといえば、大根、葱、わさびである。
大根は、歴史的には使われない時期もあったようであるが、近年は嬉しいことに復権している。私が、蕎麦を始めた頃には辛い大根が手に入りにくかったので、秋口に辛みの強い「時無し大根」の種を蒔き、蕎麦が収穫できる頃、収穫して使った。今は、私の地方の大型マーケットでも「鼠大根」などの辛い大根が容易に手に入る。辛みのある大根おろしは本当にいい薬味になる。
葱については、品質の問題もあるが、私のような素人には加工が本当に難しい。水に薄く「落とし切り」された葱を、水切りしたものは、本当にいい。
わさびは、食べる直前にゆっくりと円をえがくようにすりおろすのがいい。

「せいろ」蕎麦を食べるときには、これら3つの薬味は絶対に欠かせない。1枚の蕎麦が、薬味があることによって、幾つもの味わいに変化する。

つゆ (5)

2006-07-13 | つゆ 薬味 他
次は、返しである。この返しも余分なものは使わない。醤油とみりんである。ほんの少しの塩を使うことはある。糖類は氷糖蜜であれ何であれ、基本的には使わない。

醤油の体積量に対して、みりんの量はそれよりも少し減らす。醤油とみりんの性質によってそれらの割合は調節する。それにしても、みりんの量が余りにも多いのに納得しない向きもあろう。
まず、みりんに火をかけアルコール分をとばす。以前には、上にも火を入れたがそれはやらない。鍋の縁に焦げつきができ、焦げ臭が残ることがあるからである。みりんを煮切ったら、醤油を加え、よく指摘されることであるが、沸騰させないうちに火を止める。

返しとだしは、使用する当日の朝合わせる。合わせる割合は、返し1に対してだしが3弱の割合である。
こうして、蕎麦つゆはできあがるが、いいつゆにする上で決定的に重要なのが、この後で、湯煎をするか否かである。じっくり湯煎すると実にいいつゆになる。ただし、湯煎をする場合には、返しに対してだしの量を少し多くしておくことである。忙しくて湯煎ができない場合には、返しとだしを合わせたつゆを、特に弱くした火にしばらくかけておく。こうすると湯煎したほどではないが、つゆは確実によくなる。

これで「つゆ」の項は終了である。日本料理から学んだ鰹節のだしのとり方と湯煎をすることの2点で、伝統的な蕎麦のつゆとは全く異なる蕎麦つゆができあがる。ここに、蕎麦とつゆの新しい出会いが可能となるのである。

つゆ (4)

2006-07-12 | つゆ 薬味 他
次は、鰹節の薄削りによるだしのとり方である。

まず、昆布が取り出されている昆布水を火にかけ、沸騰させる。沸騰したら火を止める。そのまま待つか、約10%の水を加えて、湯の温度を90度程まで下げる。そこに、水1リットル当たり50gの薄削りを投入する。薄削りは、まさに薄いので全てが沈むまで若干の時間を要する。全てが沈んだら即座に漉しとる。ここが大切で、鰹節は薄く削られていればいるほどよいので、間髪を入れずに漉しとるのだ。これで時間は十分である。長くする方が雑味などの問題が生じてしまう。私は、2番だしもとるのでもったいなくもない。それに、2番だしは驚くほどだしがでない。それほど1番だしの中にだしは出てしまっているのである。

私は、蕎麦を栽培しているが、家庭菜園ほどしか作付けしていない。1年に2,3回しか食べられない蕎麦を食べるのに、このくらいのだしのとり方をしなければ意味がない。

ちなみに、日本料理の野崎さんは90度に湯の温度を下げ、薄削りを投入する。ここまで同じだが、その後さらに水を入れ、80度ほどまで温度を下げる。それから漉しとる。この後半が、野崎さんと私との相違である。

つゆ (3)

2006-07-11 | つゆ 薬味 他
だしのもう一つは鰹節の薄削りからとる。

私は、蕎麦を始めた当初から、蕎麦のつゆはいい鰹節からとるのが決定的に重要なのではないかと考えている。
そこで、自分で削ることにした。あの鰹節の削り器を購入し、いい鰹節を揃えている築地の伏高商店で、雄節と雌節を求め自分で削ったのである。雄節と雌節の割合を様々に変え試みた。何てことはない、いくら自分で最高の割合だと考えようと、薄くきれいに削るのは、私には至難の技であった。
結局、自分で削るのは諦めてしまった。今は、削りたてで密封された本当にいいものを購入することにしている。

鰹節の薄削りは、どのくらい使えばいいかが問題である。私は、水1リットルあたり30gから70gまでいろいろな量で試してみた。現在は、50g使うことにしている。この量が、多いか少ないか判らないが、とっただしは翌日使うなど様々な条件から考慮して、適量なのではないかと考えている。

つゆ (2)

2006-07-10 | つゆ 薬味 他
次に、返しとだしについて考えていきたい。まずだしから始めたい。なお、私は、野崎さんのだしのとり方から出発したが全く同じではない。

私は、だしは前日にとる。当日では、だしの香りが強すぎる。使用するのは、昆布と薄削りの鰹節だけである。2つしか使はないのは、それだけでいいだしが得られるからであり、他のだしの材料の匂いが、私は好みではないからである。

昆布は良質のものを使い、1リットルの水につき約15cmのこんぶを使う。昆布は使いすぎるとぬめりが感じられるので、これで最大限とする。水に浸す時間は5,6時間で長くしない。火を入れる時には、昆布は引き上げてしまう。この短時間であることも、火にかけないこともぬめりをださないのが狙いであり、雑味を防ぐためである。

次回は、鰹節のだしについて述べたい。

つゆ (1)

2006-07-09 | つゆ 薬味 他
次に、つゆについて考えてみたい。つゆについても1つのエピソードから始めたい。

私は、長い間一般的な蕎麦店のつゆに、とりわけ、伝統的な東京の蕎麦店のつゆに違和感を感じていた。
ある時、日本料理店で蕎麦を食べた。蕎麦は平凡なものであったが、つゆは際立っていた。日本料理用に取っただしでつくったつゆであったのであろう、濃くも重くもなく、あっさりした上品なつゆであった。
私の考えは一変した。日本料理のつゆと蕎麦を合わせれば最高の蕎麦になると考えたのである。

まずは、日本料理のだしのとり方を学ぶことにした。「分とく山」の野崎洋光さんのだしのとり方を調べることから始めた。一般の蕎麦店と最も異なる点は、鰹節を厚削りを使わずに、薄削りを使う点である。蕎麦店は鰹節を厚削りにし、30分あるいはそれ以上煮出す。これではいくらアクを取ろうとも雑味がでてしまう。日本料理の世界では、普通、薄削りで短時間にだしをとる。後者のだしのとり方の方が、上質なだしがとれるのは明白である。
私は、野崎さんのだしのとり方を採用することに決めた。