蕎麦彷徨

ひとりの素人が蕎麦について考えてきたことを書きしるすブログ

栽培 (50)

2006-11-30 | 栽培
②  落葉(腐葉土)について

落葉(腐葉土)は、いいソバを作るのには極めて有効であると思われる。

今まで用いてきたのは、ナラ・クヌギなどの広葉樹、カシの木、イチョウの木などの落葉である。カシの木の落ち葉は、庭師の友人に頼んでおいて入手した。これは、菊作りにカシの木の葉を使う人がいると聞いたからである。イチョウの木の落葉も、それに含まれる薬効成分の話を聞いて使用した。しかし、今までに最も多く使用してきたのは、広葉樹の落ち葉である。

広葉樹の落葉は、色々な集め方をした。若いナラやクヌギの木がいいのではないかと考えて、そうした木々の林で集めたこともあった。若い木の林は、下草や小さな雑木が多くて落葉を集めるのに難渋する。異なる微生物が繁殖しているのではないかと考え、山の高、中、低地や東西南北で、よくできた腐葉土を採取してきたことがある。落葉も山の至る所から集めてきて混合して使ったこともある。落葉が積もっている地表の違いにも注目したことがある。分厚いふかふかの腐葉土の上の落ち葉や石だらけの上の落葉も集めてきたことがある。

落ち葉の種類や集め方が異なれば、ソバの味を微妙に変化させると思われるが、残念ながら、私にはその違いを認識することは出来なかった。

結局、最近は兄が山中で運営しているキャンプ場の落葉を集めている。約8割がナラやクヌギの木の落葉で、残りがクリや「カシワ」の木などの落葉である。

栽培 (49)

2006-11-29 | 栽培
炭焼きの原理が、窯内の温度を上昇させ、目的の材料の水分を追い払い炭にするというのに、材料密度が絶対的に不足するならば、いい炭など焼けるはずがない。それゆえ、窯内の温度上昇はいかにすれば可能なのかを考えてきた。

では、釜内の温度上昇をどのように確認しながら、実際の炭焼きを進めるのか。
先人は、「煙の色を見ろ」と教えている。しかし、私達のような素人には、あいまいすぎて、色では判断がつかない。だから、煙突部で温度を測る。これを方眼紙に記録していく。

固くていい炭を焼くコツは、最後に送風口を少し大きく開け、釜内の温度を急激に上昇させる「練らし」という工程を行うことであるとされている。確かにそうなのだが、私が重要であると考えるのは、「練らし」開始時までに、いかに温度を高く上げられるかだと思う。私は、煙突部で温度を計測し、「練らし」開始時の高い設定温度に至るように、送風口を調節することが大切だと考えている。「練らし」の間に温度を大きく上昇させることになれば、焼けすぎてしまう。「練らし」はある意味では危険な工程なのである。

最後には、仲間2人で炭を焼いたのだが、その頃までには窯が相当劣化し、ひび割れも多くなった。丸竹を固く、ツヤがあり、割れもなく焼くには、完璧な窯と優れた技術が必要である。理屈が判り少しずつ技術も向上するのに反比例して、窯の傷みがひどくなった。こうなると、急速に竹を焼くことへの意欲が萎えてしまった。

結局、満足のいく丸竹の炭はできなかった。しかし、丸竹を焼くことの難しさは、知的好奇心を十分かき立てるものがあり、真摯に取り組んだ時の爽快感を味うことができた。

仲間との係わりは、さらに楽しいものであった。そして、ありがたいことに彼らの好意により、「炭の破片」や竹灰・木灰を頂くことができた。それをソバの栽培に使用した。
炭がソバの栽培にどのような効果をもたらすかは判らなかったが、いわば副産物である竹灰はカリ肥料として間違いなくソバ栽培には効果的であるように思われる。





栽培 (48)

2006-11-28 | 栽培
私達は、竹炭を焼きたかった。丸い竹を割ること無しにそのまま炭にしたかった。しかし、それは至難の「技」であることが次第に判明してきた。

竹炭を焼きながら木も焼いてみた。首尾よく焼けた。割った竹も焼いてみた。これも丸竹よりは容易であった。木炭も自慢出来るようなものではなかったが、割った竹よりは遙かに上手くいった。さらに、割った竹は、丸竹よりはましであった。丸竹を炭にすることはとてつもなく難しいことであった。

何がこの違いをもたらすのか。
それは炭焼き窯の中の温度である。木が窯の中の温度を最も上昇させやすかった。それは、窯の中の材料の密度を木が最も高くし、丸竹が、空間を多くしてしまうことにより最も密度を低くしたからである。窯内の材料そのものが温度上昇に寄与していくことによる炭焼きで、窯内の材料密度が低いことは、決定的に不利である。ここが丸竹を炭にすることの難しさの根本原因であった。

そこで、考えた対応策は3つである。
①  炭焼きは、窯の中に火がつくまで、入口で火を焚く。窯内に火が回ったことが確認出来ると、適切な小さな送風口のみにする。この焚き口で燃やす火を、窯内の材料を燃やしてしまわないように焚き口を遠いくするなど工夫し、通常よりも長く多く燃やしたのである。こうすることにより、窯内の温度上昇不足を補うことにしたのである。

②  次には、窯の中の温度を上げればよいのだから、色々な材料を混合して入れてみることも試みた。生木も入れてみた。ヒバの木の木片も入れてみた。

ヒバの木片を入れたのは次のような経緯からである。私の友人に、秋田杉と青森ヒバで家を建てることを仕事にしているものがいる。彼が、ヒバは油分を多く含んでいると言っているのを聞いて、火力が強いと考えて使ってみたのである。ちなみに、彼の作るヒバの家は、時が経てば柱が輝きを増し、ヒバの臭いで虫も寄りつかず、床などぬくもりがあり床暖房もスリッパも必要ないという。しかも、高価な秋田杉とヒバの家が、現地で直接業者から材木を買い入れるために、驚くほど格安でできるという。このシステムができるまでには10年かかったという彼の生き方には、学ぶことが多い。

私達は、丸竹が上手く焼ければよかったのだから、すでに書いた、窯内の一番よく焼ける位置に太い丸竹を置き、回りに割った竹や木を配置して焼くことも試みた。

③  さらには、次のようなことも試みた。放熱が最も激しいのは、屋根である。これをなんとかできないかとも考えた。そこで、シート販売店に行って、防燃性の高いシートを買い求めてきた。このシートの間に、建材用の断熱材を挟み込んだ。それで屋根を覆い放熱を防いだのである。ただこのシートは高温には耐えられず、温度上昇の途中で取り除かなければならなかった。

栽培 (47)

2006-11-27 | 栽培
炭焼き窯の形について

炭焼き窯の形は、考えてみれば奇妙な形をしている。入口(焚き口)から入ったところが狭く、次第に広がり、奧が瓢箪の「おしり」のような形で急激に萎んでいる。あるいは、全体が「らっきょう」のような形をしていると言っていいかもしれない。始めはなぜそのような形をしているか判らなかった。しかし、炭焼きを進めるに従って理由が判明してきた。それは、火の回り方から、炭の出来具合が一様ではないからである。いい炭が出来るところは広くなっているのである。おそらく、高さも含めて、ベストな炭焼き窯の形は、途方もなく思考を巡らさなければなるまい。


竹炭焼きの実際について

炭焼き窯が出来れば、竹または木などをいよいよ実際に焼いていくことになる。まず、炭にするとは、どのようなことなのか理論的側面から考えてみよう。もちろん、当初、私はほとんどこうした発想はなかった。しかし、炭焼きの本質を考えるようになって少しずつ進歩するようになった。

周知のように、生物のつくりとはたらきの基本単位は細胞である。この細胞は、核と細胞質からなり、その外側は細胞膜に包まれている。動物細胞とは異なり植物細胞にはさらに葉緑体、液胞、細胞壁がある。細胞質は、核のまわりのドロドロとした液状の部分であり、液胞は、排出系が不十分な植物細胞が不要物をためておく一種の袋である。植物細胞には、細胞膜の外側を固い細胞壁が包んでいるために、植物体をしっかりと支えることができる。
炭にするということは、炭焼き釜の中の温度を次第に上昇させることによって、水分の多い細胞質や液胞などから水分を追い出し、固い細胞壁を残していくことなのである。

これが、炭焼きの原理であるならば、一体どのようにすれば、いい炭が焼けるのか。

栽培 (46)

2006-11-25 | 栽培
炭焼き窯の屋根・天井について

炭焼き窯を造る時には、窯の屋根・天井が落下しないようにするのが大切であると考えていた。確かに、それは重要なのだが窯の屋根には、実に重大なことが含まれていた。それは屋根の厚さである。これは、竹炭焼きを止めてしまう頃になって気づいたことである。

炭焼き窯の屋根は、相反する2つの役割を果たしている。放熱の防止と促進である。窯に火を入れ温度を上げている時には、屋根は放熱を極力防がなければならない。一方、窯の火を止めてからは、窯の温度を急激に下げなければならない。放熱は、壁が分厚い横などからはままならない。唯一屋根のみ、放熱の促進が可能である。なぜ、放熱を促進する必要があるのか。窯の温度を急激に下降させることによって、引き締まった固い炭ができるからである。固い炭はいい炭の絶対的条件である。この放熱の防止と促進に最適な屋根の厚さがあるはずである。私には、この厚さが一搬的に言われている10cm(頂上部)が、最もよいのかどうか判らない。竹炭用の窯の屋根は、木炭用のそれより薄くする必要があるだろう。

当初、炭焼き窯を造る時には、上記のようなことは微塵も考えもせず、単に屋根が落ちない窯を造ることしか頭になかった。屋根の厚さは、端からドームの天井に向かって七五三の割合にするのがよいと聞いていた。しかし、どのような角度で中央まで上昇させていけば堅牢になるかは判らなかった。しばらく考えていたある日、自動車でアーチ型の橋を渡った。その時、このアーチの角度が最も強度が大きくなる角度ではないかと考えた。すぐに写真を撮り、引き延ばした写真を計測し、角度を決めた。

実は、この後、県の「農林振興センター」で炭焼き窯造りの小冊子を入手した。これは、窯の形状の決定などに大いに参考になった。この小冊子で示されている天井の角度は、橋のアーチの角度と全く同一であった。



栽培 (45)

2006-11-24 | 栽培
炭焼き窯を造るにも、竹を焼くことについても仲間とよく議論した。酒を飲んでの議論には、激昂し大きな声で怒鳴り合うこともあった。しかし、不思議なことに、遺恨が残ることはなかった。たかが炭焼きと人は言うかも知れないが、その難しさ故に議論はつきなかったのである。

これから書くことは、私自身の考えばかりでなく、仲間の人たちの考えも含まれている。それは、今では誰の意見か議論の中でどう採用されていったかなど、峻別つかないからである。まず、この点について仲間の人たちにお許しを願っておきたい。

竹炭を作るには、当然のことながら、炭焼き窯が必要である。窯を造るには幾つかのポイントがある。それは窯を造る土、窯の入口と出口(煙突)、窯の下側と屋根、窯の形である。いずれも重要なのだが、長くなるので、窯の下側、屋根、形の3点についてのみ触れてみる。

まず、炭焼き窯の下側について。

窯全体が湿気を持つのは、絶対に避けなければならない。しかし、窯は2重の意味で湿気にさらされる運命にある。1つは、窯自体が土中に造られているので、周りから水が差し込み易い。雨など降れば、特にそうである。2つには、炭にするいうことは竹であれ木であれそこから水分を蒸発させることなので、窯や煙突部分が水蒸気で満杯となってしまう。

これを避けるために窯の下側に工夫を凝らすのである。窯を造る時には、少し深く掘る。そして、奧から入口に下降する傾斜をつけて、最下段に丸木や細い枝を敷く。その上に土を盛り窯の床とする。すなわち窯の下には空間が出来ることになる。さらに、煙突の真下には小さな石などを並べ、落ちてくる水滴(竹・木酢液)は窯の中には入らないようにし、その水滴は下の空間に流れ込むようにする。床の上面にも傾斜をつけておく。こうして、一目見ただけでは判らないが、窯の下側には工夫を凝らし、窯は出来るだけ、乾燥し易くしておくことが重要なのである。

栽培 (44)

2006-11-22 | 栽培
1998年以降、幾つかの農業資材を試みてきたが、竹炭と落葉についてのみ書き記すことにする。そして、締め括りとして現在の私の考えについて述べたい。次の ① 竹炭について ② 落葉について ③ 現在考える土づくりについて ④ 育種について の4つのテーマで進めたい。

① 竹炭について

私は、ソバに生かせる農業資材はないかと気にかけるのが習性となっているが、竹炭の効用がマスコミ界等で静かに語られるようになった時、ソバ栽培にそれを利用してみたらどうだろうと考えた。そんな矢先、あるJAの直売所で竹炭が販売されているのが目にとまった。幾ばくかを購入し、教えてもらった生産者を訪ねた。それを機会に数回訪問し、炭焼きの始めから終わりまでを見せていただいた。

この先達の教えをもとに、「現代農業」の記事などを参考に、ドラム缶で竹を焼いてみた。数回試みたがうまくはいかなかった。今考えれば温度不足であったが、ドラム缶ではうまくいかないと諦めてしまった。

それからどのくらい時が経過したがわからないが、ある時数人の友人と酒を飲んでいるとき、竹を焼いてみようということになった。仲間5人で炭焼き窯を造ることになった。

栽培 (43)

2006-11-21 | 栽培
1998年以降、私のソバ栽培への問題意識の変遷について触れる前に、少し長くなったが前回まで6つの視点からソバについて述べてきた。これらは、蕎麦の味を直接的に変えるものではない。それゆえ、私の問題関心からすれば、2次的な問題である。私にとって最大の目的は、香りの高いうまいソバを作り出すことである。栽培の最終章として、この問題にもう1度立ち返って、この論考を進めたい。

まずは、ソバ栽培を開始して以来使用した肥料等の一覧表である。
リン酸肥料:骨粉 バッドグアノ 熔成リン肥 
カリ肥料:木灰 竹灰 ヤシ殻灰 スギの皮灰
中量要素:硫酸苦土
微量要素:「メりット」 「グリーンセーフS」 ニガリ
穀物(類)粉:米糠 大豆油カス 菜種油カス ふすま(麦糠) 蕎麦粉
堆肥:乾燥鶏糞 乾燥牛糞
落葉(腐葉土):広葉樹(ナラ、クヌギ等)の葉 樫の木の葉 イチョウの木の葉
海産物類:昆布 カキ殻 カニ殻 
微生物関係:EMボカシ EM培養液 光合成細菌培養液 乳酸菌 酵母菌 VA菌根菌
その他:竹炭 木炭 「合点ペーハー」 ピートモス

いずれも使用する際には大きな期待をしながら、そのほとんどが失望に終わってしまった資材である。すでにこれらの幾つかにについては述べてきた。次回からは1998年以降、特に期待し使用してきた落葉、竹炭などの幾つかの点について述べていきたい。さらには、うまいソバはどう栽培すればよいのか、その可能性を探っていきたい。




栽培 (42)

2006-11-20 | 栽培
私が、試行した収穫量の多い播き幅、畝幅は次通りである。

井上氏らの調査を参考に、幾つかの栽培実験を行った。その中で、播き幅:30cm、作間:60cm、畝幅:90cmの場合の収量が最も多く、1回は10a当たりに換算して210kgであり、もう1回は185kgであった。ちなみに、この時の播種量は10a当たり約2.7kgである。
この他に試みた中では、播き幅20cm、畝幅80cmが比較的よい結果が出ている。しかし、前者の方法には及ばなかった。

播き幅が広いほうが収量が多いのだが、次の点も興味深い。それは、両方とも作間が60cmであることである。おそらく、ソバの生育中は通路の部分に大きな空間があり空気がよく移動する。そして、ソバの木が最大となる頃に作の両方からソバの上部が接近してくる。こうして、ソバは太陽の光を最大限に享受する。このあたりに、収穫量が多くなる秘密があるかもしれない。

播き幅30cmのケースは収量が多いが、作業に困難が伴う。播き幅が広すぎるために、播種後土をかけるのが困難である。
私は現在、比較的いい収量を示している播き幅20cm程を目安に栽培している。 (もっとも、播種量が約1kg/10aと極度に減らしているので、収量は少ないが・・・。)

栽培 (41)

2006-11-18 | 栽培
私は、農学の分野でトレーニングを受けていないので、時折用語の使用法が判らなくなるときがある。次の用語も適切かどうか判らないので、ひとまず決めてからスタートしたい。
播き幅:種子が播かれる床内の広さ  作間:種子が播かれていない部分、いわば通路部分  畝幅:2作の播き幅の中央間の距離

井上氏らの調査による収量上位2農家に共通する点は、この播き幅、作間、畝幅がいずれも、私のそれまでの経験からすれば、とてつもなく広いことであった。最も収量の多い農家は、播き幅:30cm、畝幅:85cmであり、次の農家は、それぞれ20cm、80cmであった。そして、計算すれば両農家共、作間は約60cmとなる。これだけ作間があれば、畑の中を風がよく通る。あるいは空気がよく移動する。私はここに収量が多くなる最大の鍵があると考えた。

そこで、そのころ栽培していた「丘の上の畑」で次のことを調べてみた。畑の端と中央寄りの1㎡の2区画を決め、収穫量の差を計測した。すると畑の端の区画の方が、10a当たりに換算すると30kgも多かった。畑の端は、風もよくあたるし、太陽の光もよく受ける。
作間を広くとることによって、畑の中央寄りでもこの畑の端と同じ状況をつくってやればよいと考えた。

また、私の家から少し離れたところには水田が広がっている。休耕田が少しずつ増えてはいるが、まだまだ、季節毎に稲作のいい光景がみられる。犬の散歩をしながら、田んぼを眺めるのが私は好きだ。その田んぼの中に、作間も株間も「異様に」広くとっている水田がある。その農家の人に話を伺うと、以前、慣行農法で栽培していたときの約2倍の収穫量があるとのことであった。

井上氏らの調査や以上のような話から、播き幅、作間、畝幅を広く取ることによって収穫量は多くなるかを試してみることにした。