【SI企業】SAPジャパンとインドの大手ソフト企業・ウィプロ社はサービス指向アーキテクチャー(SOA)ソリューションの導入サービス支援での協業体制を強化し、その具体的な活動の一環として日本において協同でSOA導入支援キャンペーンを展開する。これは①既存のビジネスアプリケーションの統廃合②マスターデータ管理③システム基盤統合―の3つのソリューション領域に対する製品並びにサービスを共同で提供していくもの。 (08年12月16日発表)
【コメント】日本のソフトウエア産業は長い間、日本語および日本化の障壁に守られて発展を遂げてきた。これは他産業から見ると誠に羨ましい状況であったことは間違いないことである。多くの日本の産業は外国勢の激しい攻勢の中で、苦労をして現在の国際競争力を身に付けてきたわけである。ソフトウエア産業だけが外国勢の攻勢を受けないなどというのは単なる神話に過ぎず、そのうち不落と思われていた障壁を乗り越え、外国ソフトウエア企業が日本市場で、日本のソフトウエア企業から仕事を奪うことだってありうる、と繰り返し述べてきた。今回のSAPジャパンとインド・ウィプロ社の協業は、このことを具体的形として実現した典型的な事例の一つといえよう。いよいよ、日本のソフトウエア産業の前に“黒船”が現れたのである。
ウィプロは、既に07年5月にアクチュエイトジャパンと日本でのBIビジネスで提携している。これは米アクチュエイトとインド・ウィプロが06年からグローバルなパートナーシップを組んだことをベースに、日本市場での展開を開始したもの。事業内容は金融機関向け市場を中心に、コンサルティングとシステム構築分野である。サービス内容がなかなか迫力がある。それらは「現状から5倍のリソーススケーラビリティ」「グローバルナレッジを融合し、新たなソリューションを創出」「バイリンガルリソースを積極的に展開」「オフショワ開発モデルを適用しコスト削減」など。何しろウィプロは従業員7万人を超えるインド3大手の一社なのである。その潜在能力は計り知れない。東芝の中堅社員研修先の一つがインドのソフト会社であることを見ても、その実力の程が分かろう。
インドのソフト会社のレベルが高いのはソフトウエア管理が徹底して行われていることが、度々指摘されている。つまりインドのソフトウエア会社は世界で通用する技術を身に付けているから強いのである。翻って日本のソフト会社の強みを考えてみると、「日本語と日本の商習慣を熟知している」といったことが多い。これでは日本国内で通用しても、世界では通用しない。これから日本のソフトウエア産業が国際競争力を身に付けようとするなら、LinuxなどのOSS(オープン・ソース・ソフトウエア)に特化するとか、世界共通のある特定の業種に特化するなど、従来の発想を飛び超えた思い切った新戦略を打ち出すしかない。これにはまずソフト会社のトップの意識改革から始めないとならない。昔、「ヨットを持ちたいからソフト会社の社長になった」と豪語していた社長さんがいたし、現にソフト会社の社長の間ではヨット所有がステータスになっていた。これは障壁があったからこそできたことで、障壁が崩れた今、もうそんな甘いことでは、外国のソフト企業に踏み潰されてしまうであろう。(ESN)