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◇企業システム◇NRIが「経営戦略におけるITの実態調査」結果発表

2009-02-04 15:44:55 | システム開発

 【システム開発】野村総合研究所(NRI)は、「経営戦略におけるITの位置づけに関する実態調査」を行い、その調査結果を発表した。同調査は、日本の国内に本社を持つ売上高上位の企業2006社の経営企画部門の担当役員もしくは部室長に相当する人を対象として実施されたもので、有効回答は397社(回収率19.8%)。この調査結果によると、企業は経営管理の高度化や効率化目的においては、ITをある程度活用できているが、新商品・事業開発、海外進出、M&Aなど、事業拡大や経営改革につながる施策では、十分に活用できていないという課題が、鮮明に浮かび上がってきた。同社では、企業環境は厳しさを増しているが、将来の自社の変革や成長につながるIT活用を推進する手を休めるべきでないとしている。 (野村総合研究所:09年1月26日発表)

 【コメント】今回の調査目的は、これまでITは定常的な業務の効率化に使われてきたが、果たして企業の経営戦略のツールとして使われているのであろうか、ということにある。そして同調査の結果として次の3点が挙げられている。①企業経営における戦略的IT活用は途上段階。IT投資効果は必ずしも高くない②IT活用の目的は今なお管理・効率化が中心。自社の変革や成長にITの活用を③今後は、経営戦略と一体化したIT戦略の策定と実行に向かうべき。つまり、戦略的IT活用は多くのユーザーではなされていないという結論である。例えば「過去10年程度のIT投資の効果は?」という問いに対し、「あまり得られていない」と「どちらともいえない」を合わせると実に35.8%にも達している。この点は情報システム部門は大いに考えていい数字だ。経営企画部門から情報システム部門は高く評価されていないのだ。

 戦略的IT活用とはいったい何なのか、という議論が当然あがってこようが、ここではあまりこの議論をしても始まらない。今回の100年に一度の米国発世界恐慌は、米国があまりにも金融工学を信じたために引き起こされたという意見がある。つまり、戦略的にITを活用したからといって、そのことが必ずしもプラスに作用するわけではないのだ。今回の調査結果で注目されるには「ITを活用して、取引先や顧客を含めた形で横断的に業務が最適されている段階」と応えたのは4.3%に過ぎないことだ。この数年ネット社会だと騒がれていても、企業のIT利用の実態は、まだまだ自社内に踏みとどまっており、取引先などとの間でネット化され横断的に業務が最適化されているケースはまだまだ少ないということだ。ITの戦略的活用云々いう前に、まず社外とのネットワーク化の実現を拡大することが肝要であろう。

 今、百貨店業界の業績は最悪の状況となっている。今後回復するかというと明るくはない。その一つの要因として挙げられるのがITである。今スーパーは顧客がお店に出かけなくても“ネットスーパー”でパソコンで注文すれば家に届けてくれる時代だ。わざわざ百貨店まで行って買う商品というと自ずと限られてしまう。この不況時ネット通販だけは着実に伸びている。ひところ話題となった郵政問題も背景にはITがある。将来若い世代が社会の中枢を占めればメールだけあればほとんど用が済む。しかし現在はパソコンが使えない老人が多く存在するので、あまりはっきりと言うと差別になり、この結果郵政問題の話がややこしくなっているだけなの話だ。翻って企業を考えてみよう。今、パソコンを使った在宅勤務の話題を出すと、ほとんどの企業がそんなことできっこない、と答える。本当であろうか。ネット銀行がスタートしたとき、銀行員に聞いてみたところ「ネット銀行なんか一時の流行で、そのうちなくなるさ」という答えだった。ところが今やネット銀行は社会に根をおろしつつある。企業が戦略的IT活用を考える際、社会システムを考えなくてはならない時代に入りつつあるのではなかろうか。(ESN)