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◇企業システム◇TISと日本HPがOSSのBPMシステム構築で協業

2008-08-08 16:22:51 | アプリケーション

 【アプリケーション】TISと日本HPは、オープンソースソフトウエア(OSS)によるビジネス・プロセス・マネジメント(BPM)分野で協業を開始した。これはレッドハットのOSSのBPMエンジン「JBossjBPM」をベースにしたTISのBPMソリューションであるワークフロー開発フレームワーク「e‐ProcessManager」とHPのサーバー「ProLiant」を組み合わせることによって、大幅なコスト削減でBPMシステムを構築することが可能にした。ユーザーでの利用も既に行われている。医療用検査機器・試薬などの開発・製造・販売を行う東証一部上場企業のシスメックスは、マイクロソフトのウインドウズサーバー環境の下、HP ProLiant上で稼働するJBossjBPMをベースにしたTISの「e-ProcessManager」を活用したBPMシステムの構築を07年7月にスタートさせ、08年2月経理システム、4月に総務システム、6月に勤怠システムをそれぞれ稼働させた。これにより、低コストで従来のシステムよりレスポンスが大幅に向上した。 (08年8月7日発表)

 【コメント】BPMシステムは、ビジネスプロセスの実行を管理し、経営を従来の勘に頼るのではなく、データに基づいて分析したり、変更できる機能を持っている。つまり、これからの企業システムにとってなくてはならないシステムになりつつある。ところが、これまでBPMシステムを構築しようとすると膨大なコストとなり、導入ユーザーは大手ユーザーに限定されていた。この高コストの対策としては、OSSを導入することでクリアーできることが徐々に明らかになってきており、今回の発表もその一つ。これまで、OSSの導入はコスト対策というよりは、むしろベンダーの囲い込み戦略を回避する手段などに使われてきた。しかし、今後はOSSの本来のメリットである、システム構築のコスト削減が第一の導入理由になってこよう。

 JBossはレッドハットが買収して獲得したOSSであり、今レッドハットはこのJBossを普及させるために躍起となっている。それはLinuxOSだけでは今後事業が行き詰ることは明らかだ。そうなるとOSSの開発ソフトを今後事業の柱の一つに育てていかねばならない。この意味で今回、TISと日本HPがJBossを中心として協業したことは、特にレッドハットにとって将来の事業基盤の拡大につながり、大きな意義がある。JBossjBPMは人/アプリケーション/サービスを柔軟に組み合わせ、ビジネス・プロセスの自動化を行うことができる。この機能がOSSにより低コストで提供可能となれば、導入ユーザーは急速に増えることが予想される。現在、企業ユーザーはOSSをアプリケーションとしては積極的には採用していない。これは馴染みがないことと、サポート体制に不安を感じているからだ。今回のように実績にある2社がOSSで協業することによって、ユーザーの不安は一挙に解消される。

 今回、BPMシステムを構築したユーザーのシスメックスでは、導入効果として①従来のシステムよりもアプリケーションのレスポンスが大幅に向上し、業務スピードが向上②OSS採用により、システム拡張時のライセンス費が発生しないなどのランニングコストが大幅に低減③自社の業務フローに合わせた自由度の高いシステムの構築の実現と高い拡張性④グローバル展開を見据えた将来の多言語利用にも対応可能―などを挙げている。これからの企業システムの構築には、OSや開発ツールだけでなくアプリケーション分野でもOSSを積極的に導入すれば、大幅なコスト削減を実現できることをユーザーはもっと認識すべきだろう。(ESN)